今年も赤穂浪士討ち入りの季節がやってきました。
毎年この頃になると「忠臣蔵」として盛んに赤穂浪士関係の映画やドラマがTVで放映されています。今や季節の風物詩ともいへ、多くの日本人が楽しんでいることが伺える現象なのです。
しかしながら現代における「忠臣蔵」は、そもそも江戸時代の「仮名手本忠臣蔵」が史実として現代に伝えられているもので、これが本当の史実であるかどうかの論説も存在しているのです。
忠臣蔵
つまり「仮名手本忠臣蔵」は現在でゆうところの歌舞伎・人形浄瑠璃の台本であり、少しでも人気や評判が上がるような内容に書き換えられている可能性が大きいと言うことなのです。逆に言えば赤穂事件に関しては、正式な史実としての一級資料がないということが由来しており、手っ取り早く言ってしまえば「吉良上野介は本当に悪い奴(ヒール)だったの?」ということになるのです。

このような説を地で行くような小説こちら、2011年4月に出版された田中啓文著の「チュウは忠臣蔵のチュウ」です。
チュウは忠臣蔵のチュウ
オフィシャルな説明ではこのように記載されています。

赤穂浪士の討ち入りは本当に義挙だったのか?
じつは謎が多い「忠臣蔵」。
そのエピソードの大半が講談「赤穂義士伝」からきていて、史実といりまじっていることは意外と知られていない。
本当は討ち入り事件の背後に、幕府を揺るがす陰謀が存在したかもしれない…。
斬新な視点で「忠臣蔵」を読み替えたユーモア時代小説。
切腹したはずの浅野内匠頭が水戸のご老公に救われ生きていた。そんなこととは露知らず、討ち入りをを決行した四十七士の運命は?

といったところで忠臣蔵新説といったものではなく、現在の「忠臣蔵」が全くの史実ではないことを揶揄した忠臣蔵のパロディといったほうがわかり易いでしょう。したがって「こんなのも有り」とばかりにハチャメチャにはじけているのです。
特に非常に秀逸だと感じたのは、浅野(内匠頭)長矩と大石(内蔵助)良雄を始めとする家臣たちとの関係が、まさに“赤穂浪士”ならぬ“赤穂労使”といった全編を貫く空気感が痛快なのです。
死ぬほど忠臣蔵が好き、って人は読まないほうが無難でしょうね。間違いなく血圧が上がること請け合いです。
まあ、師も目一杯走る年の瀬ながら、「暇でやることが無いぞ」といっている、あなたにお勧めする一品です。

プロフィール

田中啓文
1962年大阪生まれ。1986年神戸大学経済学部卒業。
93年「凶の剣士」で第2回ファンタジーロマン大賞(集英社)に佳作入賞、同年、ジャズミステリ短篇「落下する緑」で「鮎川哲也の本格推理」に入選。2002年「銀河帝国の弘法も筆の誤り」で第33回星雲賞日本短編部門を受賞。2009年「淡い夢」で第62回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。
上方落語の愛好者。地口(駄洒落)を作品構成の主要部分とし、グロテスクな描写を執拗に繰り返す点に特徴がある。規定枚数以上に原稿を書いてしまい、後から削ることが多いという。
また、テナーサックス奏者でTHE UNITED JAZZ ORCHESTRAのバンドマスターを務める。
関西在住作家の小林泰三、牧野修、田中哲弥と合わせて「まんがカルテット」と呼ばれる。ミステリー作家の我孫子武丸を加えて「まんがクインテット」と呼ばれることもある。これは、いわゆるクリエーターユニットではなく、京都SFフェスティバルでなんとなく盛り上がったメンバーだっただけのグループ。
宇宙作家クラブ会員だったが、現在は退会している(1999年9月5日の宇宙作家クラブ大阪例会に出席した記録がある)。
日本SF作家クラブ会員、日本推理作家協会会員

個人的には「落下する緑」、そしてその第2弾である「辛い飴」の2冊だけ読んだだけですが、はっきり言ってJAZZを知らなければ全く面白くない本格ミステリーで、いわば「策士、策に溺れた」ような作品です。
落下する緑 辛い飴
個人的には好きなのですがねえ。。。
マルチな才能を持った人が描くとこうなるのかなあ、という見本みたいな作品です。

2012.12.13記
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