2015年1月24日土曜日、好天に恵まれたひと時、東秩父村「和紙の里」を訪ねた
埼玉県西部に位置する東秩父村は、埼玉県唯一の村で、長閑な風景と昔ながらの和紙が県内では著名
それが全国的に知られるようになったのが、昨年2014年11月に、隣接する小川町とともにユネスコ無形文化遺産登録されたからである
ユネスコは日本政府が推薦した「和紙・日本の手漉和紙技術」を登録することを決定し、これにより島根県浜田市の「石州半紙」、岐阜県美濃市「本美濃紙」、そして埼玉県小川町、東秩父村の「細川紙」の3つの和紙が登録されたのだ。

細川紙とは、和歌山県高野山麓の細川村で漉かれた“細川奉書”を、より江戸に近い武州で、清流を利用した農閑期の副業として漉いたものである
勿論、突如現れたわけではなく、もともと奈良・平安時代から埼玉県でも和紙作りが行われており、特に江戸時代には比企・秩父・男衾の三郡が和紙の一大生産地であったことがその所縁
こうして一大発展した「細川紙」製紙業であったが、戦後においては洋紙などに押されて衰退し、細川紙の先行きは不透明となった
こうした事態から、なんとか細川紙と東秩父村の活性化を図るために着手されたのが「和紙の里」事業で、 「和紙の里」は、歴史ある木造建築技術によって造られた8棟の和風建造物で構成された、どこか牧歌的な施設である。

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和紙製造所

エントランスやロビーで目につくのは、やはりユネスコ登録のアピールだ
取材などで芸能人なども訪れたようだ
この貴重なる資源を有効活用するのはもっともなことで、マスコットキャラクターどこか誇らしげである。

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メイン施設である「和紙製造所」では、和紙の製造工程が見学でき、更に和紙の製造体験もできる
まさに工場ではあるが、そこはかとなく癒されるのは木の温もりを感じるからであろう
また、和紙の造作も、その温もりに彩りを添えている。

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外には沢山の“楮”が干されている
“楮”の黒皮(樹皮)を取るために一端蒸されはがされ、それを乾燥させて保存するのだそうだ
まさに農村の原風景的な佇まいを感じさせる光景である。

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この“楮”が今回のユネスコ登録の主役の一人である
一般的な和紙の原料には、楮、三椏、雁皮などがあり、原料によって紙の風合いが違うそうだ
そのうち、“楮”には光沢があり、繊維が長いことから、他の原料に比べてより美しい和紙が漉ける
このことから日本全国で“楮”だけを原料としている「石州半紙」「本美濃紙」「細川紙」が登録されたのである
“楮”様さまと言ったところであろうか。。。
ただし、漉きやすくするために“トロアオイ”を混ぜてはいるようである
これはルール違反にはならないようだ。

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この後、“楮”はぐつぐつと煮込まれ、あく抜き、ごみ取りなどをして原料の素材となる
このあたりは料理と同じ手順と云えよう
そして昔は手でやっていたそうだが、現代では機械で叩かれて繊維に分解され、更に細かくされて原料が出来上がるのである

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ここからが和紙製造の真骨頂である、漉き工程である
この漉き工程も、前述の原料同様、ユネスコ登録のもう一人の主役である
それは古代中国で紙が発明された頃の「溜め漉き」とは異なり、紙の料液を漉槽(すきふね)に入れ、全体を揺り動かす日本固有の技法「流し漉き」の手法が使われていることである
揺り動かすことにより、紙の繊維を絡め易くし、より強く破れにくい和紙を作ることが可能になるからである。

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こうして出来た細川紙は、美しくありながら、強いという、趣味と実用性を兼ねそろえた和紙となる

この後は水分を絞られ、乾燥されるのであるが、現在は鉄板で乾燥されるのだそうだ
一枚一枚、ここでも手作業である。

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こうして無形文化遺産の「細川紙」が出来上がる
まさに歴史と伝統を感じさせられる技である

和紙の製造工程を実際に体験するのは製造所の奥にある。

ここで体験できるのはユネスコ遺産の流し漉きではなく、比較的誰でもできる溜め漉きだ
しかし溜め漉きは、和紙がムラになりやすい欠点があるため、厚紙を作るのに適しているのだそうだ
したがってここでは、はがきを作る体験ができるのである。

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こうして着色された料液を使用する
鮮やかなグリーンが、季節外れ的に目に眩しい。

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これに花弁などを散らしてオリジナルのはがきができる。乾燥後、自宅に送付してくれる
一度やってみると楽しいものである。

ふるさと文化伝習館

隣には文化財などを展示する「ふるさと文化伝習館」がある
蔵の形をした何とも重厚感のある建造物で、受付には素敵な逸品、見事な和紙の造形美が見られる

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展示物には、細川紙の他、「国宝 長船影光・影政合作太刀写」や、細川紙の文献などが展示されており、東秩父村の宝とも言うべきものを目の当たりにできる。

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特筆すべきは、この場には不釣り合いながら、強烈な存在感のある人形
昭和2年、アメリカより贈られた珍しい「青い目の人形」で、「マーガレット・フォックス」という名前まであり、ご丁寧にパスポートまであるとは微笑ましい限り。

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二階の展示は東秩父村の産業・生活用具の展示
細川紙の製造用の農具一式は、文化財に指定されていることから別の蔵にあり見学はできないが、こちらの展示でその輪郭はおぼろげながら想像できる。

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庭園施設

敷地の中央にある庭園を取り囲むのが様々な施設

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江戸末期の紙漉農家を移築復元した「細川紙紙漉家屋」
茅葺の見事な農家で、当時であれば名家の類ではないだろうか。その趣は、細川紙の歴史そのものと言っても過言ではない
後ろの竹林も良い味を出している。

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時代は明治から大正のイメージあろうか、研修や宿泊ができる建物が「研修会館」
見栄えのする堂々とした建物である。

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更に「ギャラリー」や「文化財収蔵庫」など上手に配置されている

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和紙製造には真冬が適しているのだが、散策はもう少し暖かくなり、新緑の季節になれば、より楽しいものとなるであろう
そんな季節に思いを馳せるのも、この時期ならではかもしれない。

すきふね

研修会館の一角には食事どころがある
流し漉きをするための漉槽から名をとった「すきふね」
店内も中々趣のある作りだ。

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秩父地方の名産品に蕎麦があるが、ここではその蕎麦・うどんが食べられる
手打ち太麺でコシのある逸品で、こういった施設にある名前だけ名産品とは違い本物だ。

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リーズナブルなのも嬉しいが、意外なことに“うどん”もいける
埼玉県西部の名物ゴリゴリの食感の本格的な“武蔵野うどん”が食べられるとは思わなかった
そして最後にデザートの秩父・飯能地方の伝統スイーツ「あずきすくい」も美味である。

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身も心も温かくなる店である

特産品直売所

直売所には、主とした細川紙関係と東秩父の特産品が取りそろえられている

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見るだけでも楽しくなるような和紙の魅力を再認識させられる

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加工品もなかなな色彩豊かで、見ていて飽きない

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実際に購入した和紙をランチョンマット風にしてみたが、煤けた食卓も誇らしげに見えてくるのは和紙のもつ趣であろう

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最後は展望台に上がって終わりとしよう
まるで黒沢映画の隠し砦のようである

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展望台までは階段を上がるが、ところどころに彫刻が展示されている
名付けて「彫刻の森」
箱根の本家の爪の垢程度だが、それでも好感がもてる

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タイトルに思わず笑ってしまう

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最後は、絶景、、、とはかなりかけ離れてはいるが、和紙の里全景を見て思い出を残すのもよいだろう

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ユネスコ無形文化遺産登録に湧く東秩父村であるが、本当の村興しはこれからが正念場かもしれない。。。

2015.02.07記
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