箱根湯本茶屋「湯さか荘」

箱根馬子唄で「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」と謳われ、この“箱根八里”を唱歌にしたのが「箱根の山は、天下の嶮。。。」と謳われる『箱根八里』
昔から地理的に、そして戦略的に越すのが大変であった箱根の山も、現代は自動車などでいとも簡単に越えてしまう時代となった
便利になった分だけ風情がなくなると言われるのだが、便利になっても風情を探そうというのが旅の楽しみである。

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箱根湯本茶屋には、ちょっとした江戸時代の温泉宿風情を感じる空気が漂っている
江戸のメインストリート旧東海道である“湯坂路”と呼ばれた現在の早雲通りは、旧石畳街道に繋がる箱根路の入り口であろうか。

その湯坂路の途中に温泉宿「湯さか荘」がある
約50年前に先々代が温泉を掘り当てたことから、この地に温泉宿を開き、当時、箱根湯本では珍しい“庭園露天風呂”を持ち、大層賑わったようである
現在の温泉ブームにより、歴史ある老舗旅館・ホテルやファッショナブルなリゾートホテルなどがもてはやされ、昔ながらの温泉旅館が生き残るのは非常に難しい時代となった
そのような背景のなか、この「湯さか荘」も数年前にリニューアルを行い、コンセプトも新たに生き残りをかけている。

外観からは、そのリニューアルを見てとることはできない
昔ながらの佇まいの温泉宿という風情で、現代の感覚からすれば「だっさ~~い」というところであろうか
一方では鄙びた雰囲気が良い、という奇特な御仁もいるかもしれないが。。。

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エントランス、、、というよりは玄関を入ると落ち着いたロビーが迎えてくれる
ここは昔ながらの間取り佇まいであるが、流石にリニューアルされていることから、清楚な雰囲気が漂っている
心が落ち着くのは、やはり和風旅館のよさであろう
右側の階段だけは、あえて創業当時の木造むき出しのままにされているそうだ
重厚感のある素敵な階段である。

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ロビーの佇まいでこの宿のコンセプトが見えてくる
まさに「シンプル イズ ベスト!!」で、余計なものは足さずに、必要なものだけを手厚く用意する、そんな手法が見えてくる
ロビーでの仰々しいお出迎えなどはない
その代わり、通りを隔てた駐車場まで荷物を取りに来てくれる、これがこの宿のホスピタリティなのであろう。

必要なものだけとは、「最低限用意されたチェア」「セルフコーヒー付の談話室」、そして「キッズコーナーにシンボルの卓球台」だけだ。

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その分、小物で箱根らしさを演出しているのは心憎い

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流行りの旅館やホテルにはない心のゆとりであろうか、客が気負うことがないのが実にゆったり出来る由縁である
我が家に帰ってきたような、やはりここは「家族」で過ごすための温泉である。

客室はリニューアルされているので、綺麗で清潔感溢れる客室である
基本は8~10畳のタイプで、このほかに10畳の広縁付、10+6畳の二間、露天風呂付の4タイプとシンプル。 予算や家族構成、ライフスタイルでチョイスするわけだ
ウェルカムドリンクなどといいったコジャレたサービスはないが、緑茶と和菓子は何と言っても温泉宿の定番である。

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場所柄眺望は良くないが、すべてを望むのならここはお勧めできないのはご理解いただけるであろう

一息ついた後の楽しみは、何と言っても温泉
概ねゴロっとするタイプと、すぐ入浴に行くタイプに分かれるような気がするが、特にこの宿は温泉を楽しまなければ価値はない、に等しい。。。

温泉は当然男女の入り口に分かれている
それぞれに内湯が付いているが、女性用は沸かし湯とかけ流しの2槽あるそうだ

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それぞれの内湯でざっくり汗を流したら、外の「庭園露天風呂」である
この宿の創業来の売りである「庭園露天風呂」は、そこそこの広さと庭園風の造りが往時の人気ぶりを偲ばせる
確かに現代では珍しさないが、そこはかとない風情は感じることができる。

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この珍しくない庭園露天風呂が今、箱根温泉で珍しいのは“混浴”であることだ
一般的に“混浴”というと興味本位で捉えがちであるが、そこはやはりターゲットの「家族」を意識したものであるのは明白
旅の宿で、家族全員が庭園露天風呂で語らうことができることは珍しいと言える。。。 そういった意味では貴重な宿かもしれない
因みに女性だけは湯あみ用のタオルがある。それでも露天は嫌だ、という方もいるであろう
そういった女性には、毎日20~21時だけ露天風呂は女性専用になるので、その時に庭園露天風呂が味わえる、なかなかなホスピタリティである。

温泉を味わった後は食事。
温泉とともにグルメは重要なエレメントである。上を見ればきりがないが、まあ、非日常的な光景が見られれば、十分満足できるのが、旅の真骨頂。

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この宿にはレストランや食事処などはない。すべて部屋で食事するスタイルで、昔ながらの“上げ膳据え膳”である
こんな非日常的な贅沢はないのだが、現代は宿内のお洒落なレストランなどに移動するのが一般的
何か本末転倒の気がするのは私だけであろうか。。。

1部屋では収まらない大人数の場合は、別に個室を用意してくれる
ここもまた「家族」は一緒のコンセプトで、別れ別れにあえて食事することもないという配慮であろう。。。

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いづれにしても板長心尽くしの逸品といったところである。

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こうした「家族」をテーマとした宿ながら、もう一つ他には類を見ないサービスがある
赤ちゃんがいる家庭では、なかなか温泉に気軽にはいけない。 何と言っても云う事を聞かない、、、聞けない赤ちゃんでありながら、何をしても最優先であるからだ。そして愚図り、夜泣きなどなど、周りの客への心配りで、かえって親が疲れてしまう
そこで生まれたのが「赤ちゃんプラン」だ
ベビー用オムツ・ベビー用いすの貸出、ミルク・離乳食の過熱、紙オムツ専用ゴミ箱など赤ちゃんにもやさしい配慮がある
これも「家族」の一員を手厚くもてなす心尽くしであろう。

宿のスタッフ曰く。。。
「夜泣きしても、騒いでも恐らく隣には聞こえない造りになって居ますが、もし聞こえても文句は言いませんよ。皆さんがそう思って宿泊されているのですから」
言い得て妙。。。 That's so COOL!! 座布団10枚あげたいくらいである。。。

そして醍醐味はやはり温泉である
露天風呂は混浴なので、一家で入れないことはないが、やはり泣き出してしまった時などは迷惑をかける
そこで考えられたのが「貸切風呂」
無料で各部屋ごとに30分づつ利用できるシステムだ
これならパパ・ママ・赤ちゃんの3人で気兼ねすることなく温泉を利用できる。

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勿論、赤ちゃんがいなくても利用できるので、露天とは違う楽しみかたもありそうだ。

「家族」をテーマにし、“みんな一緒”を打ち出した旅の宿
日常空間と非日常空間の間の「亜日常空間」とでも呼びたい、ユニークな温泉宿である
今回の親子4代に亘る久しぶりの家族旅行も良い思いでになった。

箱根「正眼寺」

朝風呂と朝食で温泉気分を満喫したところで、ちょっとばかり散策でも。

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凛とした冷たいっ空気の中で、湯さか荘からかつての“湯坂路”である早雲通りを5分ほど進めば古刹「正眼寺」がある。

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正眼寺の創建は古く鎌倉時代までさかのぼる。湯坂路は旧東海道に繋がる道で、当時の箱根路は、山道は険しく、山賊なども出没し、決して現代のように安全でスムーズな道ではなかった
そこで旅人たちは安全祈願の地蔵を信仰し、この地に地蔵堂が建てられ、これが後の正眼寺となった由来を持つ
現在でも境内には大きな地蔵が祀られ、箱根湯本の温泉街の旅行客の安全を見守っているのかもしれない。

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一時期荒廃した正眼寺は、寛永3年に再興されたにも関わらず、幕末の戊辰戦争の戦禍に巻き込まれ、その殆どを焼失したのである
そして明治37年に建てられた実業家・今村繁三氏の別荘を昭和7年に移築したのが現在の本堂で、庫裏と共に国登録有形文化財だ。

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このほかにも、地蔵菩薩立像や本堂襖絵等の文化財が寺宝となっている
境内には古刹らしい風情が見られるのも一見の価値がありそうだ。

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この正眼寺を更に著名にしているのが“日本三大仇討ち”の一つである「曾我兄弟の仇討ち」の曾我兄弟の地蔵尊を祀っていることだ。

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曾我兄弟の兄の名は幼名・一萬、のちの十郎祐成、弟の名は幼名・筥王、のちの五郎時致
鎌倉時代に実在した兄弟で、兄弟がまだ幼かった頃、親族同士の所領争いで父・河津三郎祐泰が争いの相手である工藤祐経の家臣に討たれ、母・満江は、相模国曾我城主・曾我太郎祐信と再婚し、兄弟は曾我姓を名乗ることになる
五郎は、父の菩提を弔うために箱根権現(箱根神社)の別当・行實僧正のもとに稚児として預けられていただが、父の無念を晴らしたいという気持ちは消すことができず、十郎と力を合わせて建久4年(1193)5月に源頼朝のお供で富士の裾野に狩りに来ていた祐経を襲って本懐を遂げた。

現在の「曾我堂」には、文化財である曾我兄弟化粧の地蔵像二体が安置されており、春・秋の彼岸には内部が公開され地蔵像が見られる。

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正眼寺の裏山にある「曾我堂」一帯は、古い地蔵や石塔などが多く建立されている
室町時代に物語『曾我兄弟』が生まれ、長く語り継がれ、人々に親しまれた証であろうか。。。

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この美談といわれる「曾我兄弟の仇討ち」にも様々な考察が存在する
この仇討ちに関連して、頼朝の弟範頼、有力御家人の大庭景義・岡崎義実などが失脚・殺害・出家したからで、北条時政の頼朝暗殺説や大庭・岡崎のクーデター説がそれだ
真実はわからないが、境内にある足湯でホッコリしながら、歴史浪漫でも味わうにはうってつけかもしれない。

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因みに、正月に見る縁起良い夢は「一富士、二鷹、三なすび」であるが、「曾我兄弟の仇討ち」(仇討ち場所が“富士”富士の裾野)、「赤穂浪士の討ち入り」(浅野家の家紋が「丸に違い“鷹”の羽」)、「伊賀越えの仇討ち」(伊賀国は“なすび”の産地)の三大仇討ちを由来しているという珍説もある
まあ、確かに仇討ちは縁起のよいことではあるが。。。

また、いつか箱根に来てみよう。。。

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2015.01.24記
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