はじめに

2012年6月30日~9月17日まで東京都美術館で開催される「マウリッツハイス美術館展」では、あのフェルメールの名画「真珠の耳飾りの少女」が来日するということで開催前から話題になり、スポンサーである第一生命のCMをご覧になった方も多いことでしょう。
フェルメールCM
フェルメールは、2008年8月の東京都美術館【フェルメール展】、2012年3月のBunkamura“ザ・ミュージアム”【フェルメールからのラブレター展】に行きましたから、これは仕上の意味も含めて「行かなければならん」とまるで義務的に、会期終了間際の2012年9月12日に訪れたのでした。
この様子はなかなか記事にできなくて、放置プレイ状態で約半年が経過したのですが、今年の汚れは今年の内にという大掃除の意味も込めて急遽掲載することにしたものです。

フェルメール2012

以前の記事でも記載したのですが、この「真珠の耳飾りの少女」は、今後よほどの理由がなければ貸し出されることは無いだろうと聞いていました。が、その作品が日本にやってくるのですから驚きの一言です。
実際にこの作品が日本にやってきたのは、1984年「マウリッツハイス王立美術館展」、2000年「日蘭交流400周年記念特別展覧会 フェルメールとその時代」についで3度目となります。
2000年の出展の経緯は日蘭交流400周年記念という大義名分があったことから、当時の首相・小渕恵三からオランダの首相宛に手紙を出して貸し出しを得られたという経緯があったのですが、今回はどのような手法を駆使したのか興味のわくところです。
そこでまずはその理由を探ることからはじめたのですが、その理由は意外と簡単で、要するにマウリッツハイス美術館と東京都美術館の利害が一致したからなのです。
それは今回の展覧会の主旨からその様子が窺うことができます。
パンフレット

フェルメール、レンブラント、ルーベンスーめくるめく巨匠たちの競演
オランダ・ハーグのマウリッツハイス美術館は、西洋美術史に大きを影響を及ぼした17世紀オランダ・フランドル絵画の世界的コレクションで知られています。2012年に同館が改修工事で一時休館するのに伴い、名品約50点を選りすぐった展覧会が実現します。最大の注目は、世界的なフェルメール・ブームのシンボル的存在「真珠の耳飾りの少女」です。最初期作「ディアナとニンフたち」とあわせて2点のフェルメールが出品されます。さらには、最晩年の「自画像」をはじめ一挙に6点が並ぶレンブラントは壮観です。そのほか、ハルス、ライスダール、ルーベンス、ヤン・ブリューゲル(父)ら、巨匠たちの傑作の数々を堪能する格好の機会です。なお、本展は、2010年から改修のため休館していた東京都美術館の、リニューアルオーブン後第一弾の特別展です。作品鑑賞の環境やレストランをどの設備面が充実し、ますますフレンドリーさを備えた「新しい都美」に、ぜか足をお運びください。
(パンフレットより)

という事で、リニューアルして休館するのであれば、その間貸し出しして幾許かの費用を捻出しようと考えるのは最も至極なことです。一方、東京都美術館側としてもリニューアルオープンを飾るに相応しいオープニングをと渡りに船といったところと思われます。
勝手なれど以前聞いた舞台裏から推測すると、単なる貸し出し費用以外にもプラスアルファのインセンティブを付加したのではないかとも考えられるのです。
いづれにしてもこのような理由で貸し出しがいとも簡単に得られるなら、大義名分も何もあったものでは無いということになるわけです。
一見アカデミックな美術館の展覧会とは、裏を返せば結局ビジネスだということが判る好例と言っても良いでしょう。まあ、だから何が悪いということではなく、一つの名画には多くのビジネスチャンスがあるということと理解しておきましょう。

マウリッツハイス美術館展

それでは早速、東京都美術館に向かいます。
上野公園にはこのような柱巻があったり、号外もどき(朝日新聞主催ですから)もあり人気の高さをうかがわせます。
柱巻き 号外もどき
暑い中を歩いていくと美術館に到着です。
東京都美術館 東京都美術館
平日ながら既に60分待ちの状況ですが、まずはチケットを購入します。
チケット売り場 チケット
そして仕方なく行列の最後尾に着きます。
行列 行列
しばらくはじっと我慢の子ですが、以前見たオブジェも健在でまさに「Shane、Comeback!」は古いので、「I'll be back」です。
オブジェ オブジェ オブジェ
行列は館内に入れたのでかなり涼しいのですが、行列状態は変わりません。
行列 行列 行列
そしてまさに待つこと1時間、やっと会場に入ることができました。
入館
当然、ここからは撮影禁止ですから雰囲気だけです。
今回の展覧会の目玉は勿論「真珠の耳飾りの少女」ですが、他にはマウリッツハイス美術館の所蔵する作品約800点のうちから48点の作品が第1章から第6章に別れて展示されています。
会場図

第1章 美術館の歴史
1.ヨーハン・マウリッツ胸像、2.フレデリック・ヘンドリックの肖像、3.オラニエ公ヴィレム5世の肖像、4.ソフィア・ヴィルヘルミナ妃の肖像、5.マウリッツハイスの景観、6.マウリッツハイスの「レンブラントの間」1884年
マウリッツハイスの景観 《マウリッツハイスの景観(アウグストウス・ウェイナンツ)》

第2章 風景画
7.ホーホエルテン近郊のライン川の眺望、8.帆船の浮かぷ湖、9.漂白場のあるハールレムの風景、10.農家のある森、11.牧場の牛、12.べントハイム城の眺望、13.イタリア風の風景、14.狩りに向かう貴族たちのいる、ホフフェイフェル池のほとり
漂白場のあるハールレムの風景 《漂白場のあるハールレムの風景(ヤーコプ・ファン・ライスグール)》

第3章 歴史画(物語画)
15.四季の精から贈り物を受け取るケレスと、それを取り巻く果実の花輪、16.聖母被昇天<下絵>、17.スザンナ、18.シメオンの賛歌(レンブラント)、19.シメオンの賛歌(ヘルデル)、20.ディアナとニンフたち(ヨハネス・フェルメール)
ここにはフェルメールのもう一つの作品が展示されているのですが、何となくその他大勢といった感じで、やはり「真珠の耳飾りの少女」に気も漫ろといった感じです。
ディアナとニンフたち 《ディアナとニンフたち(ヨハネス・フェルメール)》

第4章 肖像画と「トローニー」
21.真珠の耳触りの少女(ヨハネス・フェルメール)、22.アンナ・ウェイクの肖像、23.ペーテル・ステーフェンスの肖像、24.笑う少年、25.ヤーコプ・オリーカンの肖像、26.アレッタ・ハ-ネマンスの肖像、27.ミハエル・オフオヴィウスの肖像、28.椅子の傍らの少女、29.首あてをつけたレンブラントの自画像、30.笑う男、31.自画像、32.老人の肖像、33.羽根飾りのある帽子をかぶる男のトローニー、
笑う少年 《笑う少年(フランス・ハルス)》
自画像 《自画像(レンブラント・ファン・レイン)》

ここでいよいよ「真珠の耳触りの少女」とご対面となるのですが、そのための選択肢が2つあります。
1つはこの名画の前に人が一人分通れるスロープがあり、このスロープを進むと約2メートルほど前の「真珠の耳触りの少女」を独り占めして見ることができるという再び行列必至の鑑賞方法で、但し立ち止まってはいけないという条件付ですから、牛歩戦術(懐かしい)でも5秒程度が良いところでしょう。
もう一つは行列もなくすぐ見られるのですが、スロープの後ろ側からなので、必ず人越しにやや遠目で名画を鑑賞するという方法なのです。まあ、折角ですから名画を独り占めコースを選び、約15分ほど待ってやっとご対面です。
真珠の耳触りの少女 《真珠の耳触りの少女(ヨハネス・フェルメール)》
ライティングの効果もあるのでしょうか、思っていたよりラピスラズリの“ブルー”は鮮やかで、かなり感動的でした。
また、意外に耳飾の真珠が結構輝いているのにも驚きました。

ここでこの「真珠の耳触りの少女」の魅力を探ってみます。
マウリッツハイス美術館でこの作品を「ガール(少女)」という愛称で呼んでいて、この「ガール」の正体は誰にもわかっていません。したがって、この絵は特定の誰かを忠実に表現した肖像画ではなく、想像で人物の上半身を描いた「トローニー」とされているのです。
それは「ガール」の身に付けている異国情緒あふれるトルコ風のターバンが、同時代のオランダには無い服装であることが第一の理由で、そのほかにも背景の闇や左側からの光、そして振り返るポーズと視線など、空間的な造作や人物配置の一切無い謎めいた雰囲気から「トローニー」と考えられているのです。
そして特徴的なポイントを挙げてみます。

青 青:「フェルメール・ブルー」として有名で、これは中東から輸入されたラピスラズリを原料とした「ウルトラマリンブルー(海を越える青)」が使用され、大変高価な顔料で、鉱石ゆえに退色が少ないのです。

真珠 真珠:白い絵具を数回乗せただけだそうで、光だけで表現された真珠は、顔との比率で凡そ直径3センチを越す大きさのものです。したがってあまりの多きさ故に何かのレプリカを見たのか、それとも想像で描いたものなのかと推測されるのです。

唇 唇:わずかに開いた艶やかな口元が、何を語りかけようとしているのかが想像力をかき立てます。一番右側の白い点は、過去の修復際に誤って一度塗り消されたのだそうですが、1994年の修復時に再発見されたのです。

光と影 光と影:左側からの光だけでは影に隠れるはずのターバンのすそを、あえて浮き上がらせた技法は「光の画家」とよばれるフェルメールの面目躍如たるものがあります。
人工的な照明をあてたかのような演出で、フェルメールが好んで使った黄色の明るさが活きているのです。

来歴 来歴:画家の財産目録に記載があることから、この絵は生涯売らずにいたようです。死後約220年たった1881年の競売時には保存状態が悪いため、僅か2ギルダー30セント(現在の1万円にも満たない)金額で落札されたのです。

このような謎めいた特徴が、世界中に名声を広げ、その価値を高めているのでしょう。

第5章 静物画
34.万歴染付の花瓶に生けた花、35.豪華な食卓、36.燃えるろうそくのある静物、37.ヴァニタスの静物、38.ワイングラスと懐中時計のある静物、39.5つのアンズのある静物、40.ごしきひわ、
万歴染付の花瓶に生けた花 《万歴染付の花瓶に生けた花(ヤン・ブリューゲル(父)》

第6章 風俗画
41.ヴァイオリン弾き、42.恋わずらい、43.手紙を書く女、44.ヴァイオリン弾き、45.牡蠣を食べる娘、46.レースを編む老女、47.デルフトの中庭、48.親に倣って子も歌う
親に倣って子も歌う 《親に倣って子も歌う(ヤン・ステーン)》

最後はお約束のオリジナルグッズの販売ですが、今回はお土産はなしです。
オリジナルグッズ
流石に世界の名画だけあって感動は間違いないところで、この一枚でだけでも充分満足できる展覧会でした。
来年(2013年)1月6日まで、神戸市立博物館で開催中ですから、どうしても見たい方は神戸まで行かれたらいかがでしょうか。
帰り際、東京都美術館の近くの国立西洋美術館では“ベルリン国立美術館展”が開催されていて、フェリメールの「真珠の首飾りの少女」が展示されています。
真珠の首飾りの少女
こちらも初来日ですが、流石に暑さと時間もないことから、今回は断念しましたが、それにしてもややこしいタイトルです。
まあ、同転んでもフェルメールは永遠ですね。

2012.12.31記
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