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2015年10月31日~11月3まで「宝物風入れ」と云われる行事が行われました。
平たく言えば虫干しのようなもので、この機会にしか円覚寺の文化財はみられません。また常時見られる国宝の梵鐘はともかくとして、もう一つの国宝である『円覚寺舎利殿』も近くで見られるとあって訪れました。
11月1日日曜日、天気にも恵まれて円覚寺散策です。

円覚寺散策

円覚寺の参道口ですが、途中にJR横須賀線が横切っています。
これは、明治期に軍港横須賀への鉄道の建設で無理やり円覚寺境内に線路を通したことが原因。

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ここには開山無学祖元が鎌倉入りした際に、鶴岡八幡宮の神の使いが白鷺に身を変えて案内したという故事に因む『白鷺池』があり、円覚寺庭園として史跡・名勝となっています。

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ここ円覚寺は、夏目漱石とのゆかりが深い。
かつて漱石が精神を病んだ時に、この円覚寺に禅の教えを乞うために参禅した経緯があり、結果として漱石は落第生となったのですが、その時の円覚寺を様々な作品にいれている。

「円覚寺の前に汽車の踏切りがあるだろう、あの踏切り内へ飛び込んでレールの上で座禅をするんだね。それで向うから来る汽車をとめて見せると云う大気焔さ。」
これは《吾輩は猫である》の一説で、そのまんま横須賀線のことが書かれているのです。

横須賀線を渡った先の山号標。
紅葉までもう一息と云ったところでしょう。

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石段から見た白鷺池方向に横須賀線が通過している。

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石段の上が『総門』
意外と小さいのが返って驚き。

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総門の先に見える立派な紋が『山門』

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三門とも呼ばれ、いわゆる三解脱を象徴する門です。

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現在のものは1785年に再建されたもので、扁額は北条貞時の時代に伏見上皇から賜った由緒あるもの。

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この山門も漱石小説に描かれている文字通り小説《門》である。
「山門を入ると、左右には大きな杉があって、高く空を遮っているために、路が急に暗くなった。その陰気な空気に触れた時、宗助は世の中と寺の中との区別を急に覚った。」 主人公が親友の内縁の女性を奪ったことに罪悪感を覚え、その罪悪感に耐えられず救いを求めたのが円覚寺なのです。

山門の右手奥にあるのが『帰源院』

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「石段の上で思い出す。昔し鎌倉へ遊びに行って、いわゆる五山なるものを、ぐるぐる尋ねて廻った時、たしか円覚寺の塔頭であったろう、やはりこんな風に石段をのそりのそりと登って行くと、門内から、黄な法衣を着た、頭の鉢の開いた坊主が出て来た。」

漱石の《草枕》の一説で、漱石が参禅した時に宿泊したのが、ここ帰源院でした。 非公開なので山門から先には入れませんが、左手に漱石がいたであろう堂宇が僅かに見えます。

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帰源院の先にある石段は、国宝の梵鐘『洪鐘』に続いている。

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鳥居が往時を偲ばせるが、更なる石段は結構つらい。

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頂上に到達すると気持ちの良い眺望が開ける。
見える堂宇は『東慶寺』である。

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江ノ島弁財天の加護によって洪鐘の鋳造が完成したと伝えられ、その弁財天を祀るお堂です。
北条貞時が洪鐘とあわせて弁天堂を建立し、当山の鎮守としたそうです。

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その国宝の『洪鐘』がこちら。
そこはかとなく歴史と気品を感じる、といったら嘘になるかもしれない。

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山門に戻って、その先が『仏殿』
本尊を祀っており、昭和に再建されたものですが、扁額は後光厳上皇から賜ったもの。

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仏殿の左手が『選仏場』
選仏場とは、仏を選び出す場所という意味で、修行僧の坐禅道場のことだそうです。
茅葺の屋根と梅の木が中世の趣を感じさせます。

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その隣が『居士林』
居士とは在家の禅の修行者を指し、居士林は禅を志す在家のための専門道場。つまり初心者でも参加できる座禅ができる場所と云うことです。

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おそらく紅葉の季節は見ごたえのある画像がとれるのではないかと。。。

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円覚寺・宝物風入

居士林の前の参道を進むと左手に『方丈』がある。
本来は住職が居住する建物ですが、現在は法要や座禅会など多目的に使用されています。
中庭もきれいに整備されています。

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この日はここで『宝物風入』が行われました。写真はNGなのでパンフレットだけ。

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方丈の裏には、心字池のある美しい庭園が広がっています

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方丈の先には『妙香池』と呼ばれる庭園があり、ここも『白鷺池』同様、円覚寺庭園として史跡・名勝となっています。
8月に訪れた時とだいぶ様子がかわります。

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鮮やかさは無くなりましたが、紅葉が色づくのが見て取れます。

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妙香池を進んで、突き当りを左へ曲がった先が、今回のメインである『正続院』 通常はこの山門までしか入れず、僅かに仏舎利殿が見える程度なのだが、今回はあの「仏舎利殿」まで行けるのである。

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山門が開いていること自体、ちょっと感動

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山門を潜ると左側に鐘楼がある。
由緒も何もわからないのだが、すべてが重々しく見える。

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右側が本堂である。
特別に色々揃えられている。特別な御朱印もあったのだが、今一つ興味がわかない。

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更に進んで中門に近づく。これだけでも気分は浮かれ気味。
よく見ると左手の崖は“やぐら”のようである。これは実に興味深い発見である。

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そしていよいよ「国宝仏舎利殿」との対面である。

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舎利殿には、源実朝が宋の能仁寺から請来した「佛牙舎利」というお釈迦様の歯が祀られており、鎌倉時代に中国から伝えられた様式を代表する、最も美しい建物として国宝に指定されているのです。

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屋根の勾配や軒の反りの美しさが特徴で、特に屋根の軒下から出ている上の段の垂木たるきは、扇子の骨のように広がっており、「扇垂木」とよばれているのだそうです。

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江戸時代の花頭窓は下部が広がっていくのに対し、この外枠は縦の線が真っ直ぐで、その質素な形は鎌倉時代後期の花頭窓の特徴なのです。

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とにかくじっくり見てしまいたい衝動に駆られるのは、国宝の持つ魅力であろうか。

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仏舎利殿の隣にあるのが禅堂である。
ある意味、仏舎利殿よりも個人的にはお宝で、何といっても、ここは漱石が参禅した際に禅問答を行った場所である。

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漱石に出された公案(問題)は、この『父母未生以前本来の面目は何だか』で、“自分の父や母が生まれる前、あなたはどこにいたの”とう、禅問答では入試試験の問題のようなものだそうです。 これに対して漱石は、「物を離れて心なく心を離れて物なし 他に云ふべきことあるを見ず。」、つまり「自分の両親が生まれる前には、心が無いのですから、自分の元々の顔という、物も無いないのです」と答えたのです。
すると老師は、「そのようなことは少し大学を出て勉強をすれば云える、もう少し本当のところを見つけてきなさい」と軽く漱石をあしらったのです。
これにより漱石は、自分には入門する資格はないと考え、見捨てられた犬のように円覚寺を去ったのです。

このように漱石も訪れた円覚寺は様々な魅力に溢れているのです。
次回は紅葉の時期に訪れたいものです。

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2015.11.10記
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コメント

  1. pecopeco | pbrAj28k

    こんにちは。
    円覚寺はいいですよね~。
    なんだか自分の写真の腕前が良くなったかと思っちゃうくらい、フォトジェニックなお寺だと思います。
    境内を横切る横須賀線を含めて。
    どの季節に行っても見所のあるお寺ですよね。

    ( 23:42 [Edit] )

  2. 薄荷脳70 | -

    pecopecoさん、ありがとうございます。

    pecopecoさん、コメントありがとうございます。
    おっしゃる通り素敵な寺院ですね。
    次は紅葉の時期に行ってみたいと思っています。
    今後とも、宜しくお願い致します。

    ( 05:17 )

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