鑁阿寺 #2

あまり「太平記」には強くないので、個人的には目から鱗的な史実でしたが、一般的な話なのでしょうね。
それでも私的に面白かったので良しとしましょう。
「多宝塔」を後にして、斜め前にある「本堂」で参拝します。

鑁阿寺本堂(大御堂)

本堂 本堂 参道の正面に本堂が鎮座しています。

第一印象は荘厳、それでいて屋根部分が大きい(広い)ところが実に優美です。バランスの妙とでもいいましょうかね。
そして何といっても歴史的建造物の香りに包まれているところがそそられます。
兎にも角にも参拝を済ませます。

重要文化財 鑁阿寺本堂(大御堂)
鎌倉時代初期、建久7年(1196年)足利義兼の建立。
本尊は源氏相伝の守本尊、大日如来。
建築は構造雄大、手法剛健、本瓦葺 唐様と和様を加味した折衷の代表的な建物で堂内の柱、天井、厨子等の価値は高い。
明治41年、国宝に指定され昭和8年より2年間、解体修理を文部省の指導の下、実施した。
戦後、法令の改正により重要文化財の指定を受く。
境内に山門、鐘楼、不動堂、一切経堂、多宝塔、御霊殿等の七堂伽藍を備えた東国の、密教の代表的な寺である。
創建以来、幸い火災にあわず多数の重要文化財を蔵している。
開基、義兼7世の孫は足利尊氏にして京都室町に幕府を構え、幕府は15代230年つづいた。
大祭は5月3、4、5日、11月3、4日
初詣、節分鎧年越等 厄除・開運の祈願寺として参拝者が多い。
真言宗大本山 金剛山 鑁阿寺
(現地案内板説明文より)

今まで結構多くの寺院を見てきましたが、意外とこの大日如来を祀った寺院にはあまり巡りあわなかった気がします。
宗教的なことはあまり紐解いても、すぐ理解できるわけではないのでさわりだけです。

簡単に言えば大日如来は密教(真言宗)にのみ登場する特殊な如来で宇宙の中の中心仏であり、宇宙そのものなのだそうです。全ての仏は大日如来が時と場所を超えて変化したものと考えられている、ブッダオブブッダ、仏の中の仏というところでしょう。
従って真言宗の寺院であるにも関わらず本尊が大日如来ではなく、釈迦如来や薬師如来であっても真の姿は大日如来となるから構いませんという考えなのです。

この大日如来が宇宙の中心であることを指し示しているのが有名な曼荼羅です。曼荼羅には2種あるそうで、胎蔵曼荼羅・金剛界曼荼羅で、いずれにも大日如来は中心におかれています。両者の違い、あるいは意味と言われてもおいそれと理解できるものではないようで、民主党代表と内閣総理大臣が同一人物の菅直人であっても意味合いが違うのと似ているという説明もあるのですが、判ったような判らないような・・・。
「それじゃダメじゃん・・・」という事で、更に調べてみると最も大きな違いは結んでいる印(手の組み方)なのだそうです。
つまり、胎蔵曼荼羅では、禅定印という一般的に座禅の時に組む形で、瞑想状態を表している印です。一方、金剛界曼荼羅では、智拳印という組み方で、宇宙全てのものに光を投げかけている行動状態なのだそうです。映画やTVで見る忍者の念じる手の組み方といえば判りやすいでしょう。忍者も術をかけるために手を組むのですが、これは術を投げかける=光を投げかける、という大日如来の姿から来ているそうです。間違っても大日如来が忍者の真似をしているのではなく、忍者が大日如来の真似をしているのですから間違いのない様に(って、間違える人もいないか・・・)。
ということから、胎蔵曼荼羅では真理を象徴し、金剛界曼荼羅では知恵を象徴しているのだそうです。少ーーーーーし判りやすくなりましたかね。

ここでは更にもう一つ良く聞いていながら正確な意味を知らなかった「七堂伽藍」について調べて見ました。

そもそも伽藍とは「僧伽藍」がもとの言葉で、同じ志の人が集まる場所を意味します。そして「七堂伽藍」の七は数ではなく諸設備が整っているということを表す漢字ですので、7つ無ければいけないとかという意味ではないそうです。一般的には「3以上、10以下」程度の意味合いです。
それでも一応「七堂伽藍」の基本があり、奈良時代の仏教では以下の7つの建物のことをまとめて「七堂伽藍」と呼んでいたそうです。

1.金堂:寺院の中心となる本尊を祀るお堂。本堂、仏殿ともいいます。
2.講堂:僧を集めて講義や説法をするお堂。金堂の背後に位置します。
3.塔:塔はお釈迦様の骨である仏舎利を祀る多重塔。二重、三重、五重の塔以外にも七重、九重、十三重の塔も建てられています。
4.鐘楼:梵鐘をつるす建物です。
5.経蔵:お経を納める蔵。書庫的な役割を果たします。
6.僧房:僧の住居となる建物です。
7.食堂:大勢の僧が一緒に修行の一部として作法に従って食事をする場所です。

これらが本堂を中心として左右対称に配置されているのが「七堂伽藍」なのです。
しかし、平安時代になると宗派によって施設、建物の種類もかわり、また山寺などシンメトリーにでない寺院も多くあります。従って前述したように、最低限寺院としてして必要な施設、建造物があれば七堂伽藍と言って良いということのようです。

中御堂

中御堂 本堂でのお参りを済ませて、左隣の建造物に移ります。「中御堂」と呼ばれる不動堂です。

中御堂(不動堂)
寺伝では開基足利義兼公の創建とあるが、文禄元年(1592年)生実御所国朝の再修になる。
御本尊不動明王は往古千葉県成田山より勧請せるもので興教大師の作といわれ霊験あらたかな不動明王である。
本堂が明治41年国宝に指定される迄は不動堂と廊下でつながっていて四度加行の護摩法の道場として使用した堂宇である。
昭和44年信徒の浄財により半解体修理を実施した。
商売繁盛を祈念する堂であると同時に酉年守本尊なり。
堂の右側に古井戸の跡あり800年前足利氏が居住した時に使用したといわれる。
真言宗 大本山 鑁阿寺
(現地案内板説明文より)

確かにスモール本堂といっても良いような形状の似通った不動堂です。本尊が成田山の勧請とは奇遇で、本年最初の散策が【2011年、初春風情】での初詣でしたから。

古井戸 右側の古井戸がこれで、あくまで跡ですから造りは最近のものでしょう。
まあ、もう少しそれらしい造作でもよかったのではないかと思いますが、伽藍自体が本物の建造物ですから復元しても余り面白いものでもないでしょう。

しかしながら、この変哲も無い井戸跡が実におぞましい伝説を語っているのです。

足利義兼は源頼朝の挙兵以来、様々な功績によって高い地位につき、頼朝の正室・北条政子の妹・時子を妻としてその地位と勢力を拡大していったのでした。
そんなある時、義兼の留守中に時子の腹が妊娠したように脹らみ、鎌倉から帰った義兼がその姿を見ると時子が不義密通したと勘違いし嫌疑をかけたのでした。耐えられなくなった時子は「死後わが身体をあらためよ」と言い残して自害したのでした。
遺言どおり自害後、腹を割いてあらためると出てきたのは赤ん坊ではなく血を吸って太った無数の蛭で、これが腹を膨らましていた原因だったそうです。
真相を追究すると、時子の腹が膨らみ始めたのが春の花見の頃で、侍女の藤野が汲んできた古井戸の水を飲んでからということを知り、その井戸を調べると無数の小さな蛭が泳いでいたそうです。これは侍女の藤野が義兼の寵愛を受けていて、時子を亡きものにして義兼の愛を独占しようとした思いからの謀略によるものだったのです。
義兼はそれを知って藤野を惨殺し、1195年自らも東大寺で出家し「義弥」と称し隠棲すると同時に、時子の供養のため邸内に持仏堂を建て大日如来を安置したことが鑁阿寺の始まりとなったそうです。
そして、その翌年の1196年、義兼の長男・義純が時子(義純にとっては義母)の菩提を弔うために、法玄寺を創建し現在でも時子の墓碑である五輪塔が残っているそうです。

見た目は変哲も無い井戸ですが、中身は曰くありありの井戸でした。

経堂

経堂 その隣にある大きく綺麗なお堂が「経堂」です。
年代を経ている割には非常に綺麗に維持されています。

国指定重文 経堂
当山開基、足利義兼が妻の供養の為、一切経会を修する道場として鎌倉時代に創建したといわれるが、現在の建物は応永14年(1407年)関東管領足利満兼により再建された。
足利家は鎌倉・室町の両時代に盛んに一切経会を営んだ事が当山古文書(国重文)にみられる。
堂内に八角の輪蔵(経棚)があり一切経2000余巻を蔵するが、此の経棚は江戸時代宝永年間の大修繕のものなり。
昭和11、2年 文部省技師阪谷良之進の指導の下、解体修理を実施した。
昭和59年 国重要文化財に指定さる。
平成16、7年 屋根を主に文化庁指導の下、、大修繕を実施。
真言宗金剛山 鑁阿寺
(現地案内板説明文より)

多くの経堂にはこの八角の輪蔵があることは、幾つかの写真等で知ることはできます。仏教経典である一切経(大蔵蔵)を納める八面体の書棚で回転する仕組みのものです。文房具店にある印鑑が入っているケースが八角形だと思えばわかりやすいでしょう。
これを考案したのが中国南宋時代の傳大士という僧です。
これは実に収蔵し易く、また探すのも手間が少なく、更に場所をとらないというメリットがあるのですが、実はこの輪蔵を回転させるだけで経典を読破したのと同じ功徳があるという合理的な、ある意味手抜きとも思える実に論理的な(どこが・・・)根拠があったのです。意外な歴史を楽しめます。
日本でも四国88ヶ寺巡礼で、お砂踏みというシステムで手軽に巡礼できるというものがあり、これなども同じ発想なのでしょう。

いつの世の中でもコンビニエンスなことを考えるのが人間の良いところでしょうか、それとも怠惰なところなのでしょうか・・・。

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