いわきヘイリテージ《常磐炭田・湯本地区炭鉱遺産》 #1

いつもの様に翌日の朝、散歩代わりの散策です。
今回はいわきヘリテージがテーマですが、時間もそれ程ないので一番近い湯本周辺を散策します。
湯本といえば、その名の通り温泉街ですが、かつては炭田の町として繁栄した土地でもあり、現在もその遺産が残っているのです。

『「いわき市石炭、化石館」がある湯本地区は常磐炭田の中心地として、全面閉山になる昭和51年(1976)まで採炭が行われていました。
最盛期には湯本駅から各坑に5本の専用鉄道が施設されていました。湯本川と6号国道を横断する専用鉄道があり、河川改修で赤レンガの専用線橋台は姿を消してしまいましたが、昭和天皇が入坑された坑口などが保存されています。専用線の中でも一番古い(明治17年)常磐上湯長谷町の旧小野田線の沿線には石炭路頭が見られ、コールタールで防水加工した紙屋根(便利瓦)の最も古い形の炭鉱住宅もあります。同じ沿線の梅ヶ平には常磐炭鉱磐崎鉱の石炭積込場、選炭場跡、ずり山、そして坑口等があります。
常磐炭鉱各坑にあった安全を祈願する山神社は、閉山とともに集約され現在は湯本山神社に合祀されています。山神社の隣は炭鉱病院(現いわき湯本病院)があり、多くの坑夫の命を救いました。また自治会館は戦前から労働者の活動の拠点となっていましたが、老朽化が進み建物は平成19年(2007)1月に解体されました。』
(「いわきヘリテージ・ツーリズムマップ」より)

11月になって夜の明けるのが遅くなり、徐々に朝の散策時間も短くなってきているのですが、AM6:30頃に出発したのでした。

湯本山神社

いわきヘリテージ湯本地区のはじめは「いわき市石炭・化石館」ですが、当然こんな早朝に開館しているわけもなく、【いわき散策記 vol.1】で一度訪れたこともあるので、ここは省略します。
そして、この日、最初に訪れたのは、山神社が合祀された「湯本山神社」です。
特に駐車場もないので、元の炭鉱病院であるいわき湯本病院の駐車場に停めさせていただきます。
湯本山神社・一の鳥居 駐車場の一画が参道になっていて、直ぐ前に鳥居と社号標が立っています。

湯本山神社 しかしながら、その下には「立ち入り禁止」と書かれた柵が置かれています。

最初から企画倒れかと危惧したのですが、ここはあえて掟破りの行動に打って出ました。そう、強行突破(大げさ過ぎる帰来はありますが・・・)を図ります。
ということで、無理矢理の湯本山神社参拝です。(今回だけ許してください)

強行突破は良いのですが、一体何故の立入禁止かがわからないままなので、若干の不安が付きまといます。
鳥居を抜けて90度左側に綺麗に整備された参道が続いています。
湯本山神社参道 途中の階段に重機が上がるための簡易通路があるので、社殿の工事か何かだと推測できます。

湯本山神社・二の鳥居 参道の途中に木造の二の鳥居があります。
木造の地肌のままの鳥居というのは、実に渋くて味わいを感じるのですね、個人的には・・・

湯本山神社 社殿 さらに参道を上がると正面にグリーンのシートに覆われた社殿が現れました。
やはり社殿の改修工事ですね。

殆ど社殿の姿は拝めませんが、兎にも角にも参拝を済ませます。
まあ、それにしても工事用のシートで実にカラフルな社殿になっています。
湯本山神社 社殿工事 安全第一、危険・頭上注意、安全帯使用、関係者以外の立入禁止、保護帽・完全着用、安全帯を忘れるな、段差あり注意、と、あらゆる(といっていいくらい)の注意書きシートが貼られていて、まるでお祭りのようです。

全て作業者用向けの注意シートですが、よくよく考えれば、神社の工事で怪我人などがでたら、縁起が悪いですし、その縁起の悪さがこの神社の評判(祟りとか・・・)にでもなってしまえば一大事ですから、ここはより注意しなければならない工事かもしれません、って深読みすぎ・・・でしょうか!?

湯本山神社 本殿 それはさて置き、こういった状況ですから残念ながら本殿を見ることもできませんでした。

現在でも炭鉱後継企業の常磐興産が手厚い手入れと新年の参詣・行事など行われているそうですが、由緒についても判りませんでした。
湯本山神社 記念碑 それでも境内にある大きな記念碑と刻まれた文字通りの「記念碑」石碑の裏に碑文が刻まれているので、これで多少は由緒もわかるかと期待したのですが、あまり読み取ることができませんでした。

それでもわかる範囲の文字を拾ってみます。

『大山神ハ鉱山ノ守護神タリ吾社夙ニ高・・・・・・山中腹ニ霊域ヲ相シ社殿ヲ営ミ以テ崇敬ノ誠ヲ論セリ
・・・(中略)・・・
起工:昭和8年12月、竣工:昭和9年4月、社殿建坪:13坪6合、神苑面積:12,000坪、奉仕者延人員:4,500人』
(石碑碑文より)

大山神を祀っている神社で、どうやら昭和9年に移築か改築された記念の碑ではないでしょうか。
いずれにしてもそれ程古い由緒があるわけではないようですが、それでも地元では大変崇敬されていた様子をうかがい知ることができました。

自治会館跡の階段

「湯本山神社」から歩いて1,2分のところに「自治会館跡の階段」があります、と大層に云った割には、何の変哲も無い12段の階段です。
自治会館跡の階段 13段だったら嫌ですね・・・

パンフレットの説明です。

自治会館跡の階段
昭和11年(1936)8月、入山採炭・労働自治会が建設。閉山後も利用されていましたが、老朽化により解体、現在は階段のみが残っています』
(「いわきヘリテージ・ツーリズムマップ」より)

自治会館跡 自治会館跡からの眺望 階段を上がってみてもだだっ広い空き地があるのみですが、 ただし、湯本の町並みが一望できる眺望はグッドです。
それだけのことですが・・・。

と言う事で、もう少し歴史を知りたくなったので調べてみました。

いわき市の炭鉱の歴史は、1855(安政2) 年片寄平蔵が弥勒沢で炭層を発見し、1868(明治元) 年、加納作平が大総督府小名浜石炭取締局の石炭御用達となったところから幕を開けました。
そして1884(明治17)年に浅野財閥によって磐城炭礦社が設立されたことが、いわき市の炭田開発への大資本化の始まりでした。
明治20年には、小野田・小名浜間の石炭輸送の軽便馬車鉄道開通し、炭鉱開発は飛躍的に発展し始めました。 そのようななかで、磐城炭砿社の取締役のひとりであった大倉喜八郎(大倉財閥)によって1895(明治28)年、入山採炭株式会社が設立されたのでした。 順調であった両社でしたが、1937(昭和2)年に一変します。
まず磐城炭砿では1月、従業員・山代吉宗を解雇したことにより磐城炭砿争議が発生するのです。いわゆる労働争議です。
また、入山採炭でも同月、職工共済会の不正を追及した日本坑夫組合員を解雇したことにより入山採炭争議(第1次争議) が発生します。さらに4月、入山採炭の第五坑で扇風機が故障し、作業計画の変更を要求して鉱夫組合が争議団を組織し、入坑を阻止した第2次争議が勃発したことで、磐炭争議といわれた労働問題が加熱し始めたのです。
入山採炭では、当時不況のために石炭の売れ行きは思わしくなく,さらにこの争議とガス爆発による損失が加わり、経営上の大きな痛手となったため、従業員の一致協力の必要があり、この対策のために以下の施策がとられたのです。
1.労働争議を防止するために,労働者の組織である自治会を正式に認め,当時の坑務所の建物を自治会館として提供。
2.昭和7年に全従業員の直接採用制度を確立。
3.個人の能率を査定する係員をおき,近代的炭砿としての賃金支払形態をとる職制を確立。
4.炭砿住宅を整備し管理。
以上の経緯で、この自治会館が設立されたのですから労働者の拠点となったのも頷けます。ある意味常磐炭田坑夫たちのシンボルといってもよいのでしょう。
ちなみに後の1944(昭和19)年3月、磐城炭鉱と入山炭鉱が合併し、常磐炭礦株式会社が設立され、この流れが後の常磐ハワイアンセンター(現・スパリゾートハワイアンズ)に繋がっていくのです。
やはりディープな歴史を背負っていたのですね。

第五坑人道

「自治会館跡の階段」の後は、「湯本第六坑人車坑」ですが、ここも【いわき散策記 vol.1】で訪れていますので、「第五坑人道」に向います。

第五坑人道 常磐開発社屋脇
石炭採掘が発展すると、石炭を運ぶ坑口と人員を運ぶ坑口は別々となり、人道として専用に作られました』
(「いわきヘリテージ・ツーリズムマップ」より)

車でものの5分で常磐開発に到着です。
常磐開発ビル なかなかオシャレなロゴマークの付いたシャープな建物が常磐開発のビルです。

常磐開発は先の常磐炭礦(現在の常磐興産)から1960年に独立した建設業社で、不動産の売買やコンサルティングなども行っているいわばグループ会社です。
日曜日で早朝とあって、人一人居りませんので、勝手ながらずけずけと入らせていただきました。
常磐開発ビル内の第五坑人道 ビルのエントランスの先にそれらしき坑口跡があるので、近寄ってみます。

第五坑人道 第五坑人道 まさしくこれが「第五坑人道」でしょう。現在入口はふさがれていますが、間違いなく道人坑五第と反対から記載されています。かつては大勢の坑夫が出入りしたことでしょう。

五坑の左下に一回り小さい円形の穴のような跡があります。
第五坑人道下の坑口 殆どがふさがれているのですが、極々上部がかすかに開いているので水の音が聞こえます。入口がふさがれていることから水琴窟のような綺麗な音色を聞くことができます。

何の跡かは判りませんが、日曜日の早朝で車なども殆ど走っていない静かな周囲ですので、余計綺麗に聞こえます
。意外と癒されたりしますね、これは。
第五坑人道 「第五坑人道」と仮称「水琴窟」は、なかなか良い取り合わせです。

折角なので(というより勝手に入り込んでいるのをすっかり忘れている状況)、「第五坑人道」沿いに現在のビルの裏手にまわってみます。
遺構! すると現在は廃墟のような建物跡が残っていました。

コンクリートと煉瓦で作られた建物跡ですが、現在はこの上の部分が使われているようです。
遺構! こんな崩れかけた階段跡も残っています。

何の建物だったのでしょうか、やはり炭鉱関係には違いないと思いますが。
まさに常磐開発のシンボルといっても良い坑口跡でした。
通りに出ると、ちょうどここから「いわき市石炭・化石館」が見渡せます。
いわき市石炭・化石館 おなじみのエレベーター坑が見えますね。

湯本川調整池

次なるは「常磐炭鉱のずり山」ですが、「第五坑人道」の少し先の国道6号線の手前に大きな溜池のようなものがあるので立ち寄ってみました。
湯本川調整池

案内板がありました。

湯本川調整池(さはこの水辺)
◆調整池ってなあに?
調整池とは、大雨のときに増えた川の水をいったん溜め込む人工的な池です。こうして、調整池より下流に流れる川の水を減らし、浸水被害を防止・軽減します。
◆大雨が降ったら!

大雨になると湯本川の水はすぐに増え、洪水となって調整池の中へ流れます。水の深さは30分で30cmほどになります。こうなると、逃げられなくなり非常に危険なので、すぐ避難してください。
(中略)
湯本川は、大雨が降るたびに氾濫し、市街地に浸水被害をもたらしていました。
平成5年11月14日には、湯本川の氾濫により住宅約400戸で床上浸水となる被害がありました。
このため、福島県では湯本川の氾濫による浸水被害を防止・軽減する目的で平成14年度から平成20年度に河川改修工事(床上浸水対策特別緊急事業)を行い調整池を作りました。』
(現地案内板説明文より)

湯本川調整池 排水樋門  中央にあるコンクリートの堤防が排水樋門と呼ばれる堤防で、排水するときにこの堤防の下にある樋から排水するのです。

湯本川調整池と湯本川 そして右側の細い流れが湯本川で、左側が調整池となります。
湯本川とは名ばかりで、下水溝といっても良いくらいですが、これが氾濫するのですから侮れません。

湯本川 そして湯本川は国道6号線の下から流れてきて、梅ヶ平方面に遡るのです。

ちょうどこの調整池の先の「いわき市石炭・化石館」あたりに常磐炭鉱の専用線橋台あったようです。
これは常磐炭鉱向田線という専用線で、湯本駅辺りから湯本川と国道6号線を越えて「石炭・化石館」前を通過し、第5坑、第6坑の石炭を運ぶために湯本川沿いを通っていたようです。しかし、この調整池と「石炭・化石館」の建設により、その専用線橋台はなくなってしまったということのようです。
向田線の枕木!? ただ、この排水樋門のあたりに枕木のようなものがいくつか置かれているのは、廃線の枕木だったのかもしれません。
在りし日の向田線を偲ぶ数少ない遺構となっているかのように…

まさに湯本川沿いを走っていたのですから、現在は調整池の中央付近でしょうか。
単なる調整池ではなく、功罪合わせて炭鉱に間接的でも関連しているところが興味深いところです。

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コメント

  1. 【リンク報告ならびに相互リンクのお願い】

    【リンク報告ならびに相互リンクのお願い】

     こんにちは。カミタクこと神山卓也
    http://homepage2.nifty.com/kamitaku/
    と申します。

     私が運営しております、以下のホームページのサブ・コンテンツ計2箇所から、貴ホームページにリンクを張りましたので、その旨、報告申し上げます。
    ○ 炭鉱マニア
    http://coal.shimazu-yoshihiro.net/
    炭鉱を紹介するホームページです。貴サイトへのリンクの掲載ページは、「炭鉱・石炭関係リンク集」の常磐炭田欄です。
    http://coal.shimazu-yoshihiro.net/coallink.htm#joban_coal
    ○ 温泉天国・鹿児島温泉紹介!
    http://homepage2.nifty.com/kamitaku/kagoonin.htm
    鹿児島温泉(鹿児島市内温泉)を中心にして、鹿児島県内外の温泉と観光スポットを紹介するホームページです。貴サイトへのリンクの掲載ページは、「いわき市石炭・化石館 ほるる訪問記」
    http://homepage2.nifty.com/kamitaku/FUKUSK01.HTM
    のHP欄です。

     つきましては、貴サイトからも、「炭鉱マニア」と「温泉天国・鹿児島温泉紹介!」の両方に、或いは、貴サイトの趣旨に鑑(かんが)みれば「炭鉱マニア」単独に、相互リンクして下さいますよう、お願い申し上げます。趣旨は、「相互リンクで拡げよう、常磐炭田紹介の輪!」です。

     なお、「炭鉱マニア」では最近、以下のとおり常磐炭田紹介ページ(画面)を増設しました。
    ○ 常磐炭礦(株)(湯本地域)
    ○ みろく沢炭鉱資料館(常磐炭田発祥の地)

     今後共、よろしくお願い申し上げます。

    ( 10:48 [Edit] )

  2. 薄荷脳70 | -

    神山卓也さん、ありがとうございます。

    リンクありがとうございました。
    私のサイトでよろしければ喜んでリンクさせていただきます。
    今後ともよろしくお願いいたします。
    なお、別ページのコメントはこちらと同内容のコメントですので、返信はこちらだけにさせていただきます。
    ご了承ください。

    ( 03:56 )

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