オールドローズエリア

「敷島公園バラ園」の正門は第1駐車場なのですが、第2駐車場からは“北入口”から入園することになります。
この敷島公園バラ園は昭和46(1971)年に開園しました。開園した当時のバラ園には200種2000株のバラが、約2000平方メートルの敷地に植栽されており、すでに県内外からの観光客で人気だったようです。
その後、平成20(2008)年の全国都市緑化フェア会場に指定されたのをきっかけとして、このバラ園も全面改装され、2008年3月にリニューアルが完了し、600種7000株の規模の開園当初の3倍のバラ園に生まれ変わったのです。
このように敷島公園バラ園は、一地方のバラ園から日本屈指のバラ園に変貌しつつあるのです。

オールドローズ

北門 第2駐車場から北入口へ向かうと、シックなレンガ塀の門があり、その隣のゲートにはオシャレなバラのレリーフがあります。

北門 北門 一般的には、公園には無機質なゲートが多いようですが、ここはなかなか洒落たゲートのようです。

北門 ゲートを入ると更に路上に“バラの紋”があしらわれているのもまた、ちょっとしたアクセントです。

園内に入るとまずはバラの小路があり、綺麗なバラの中をバラ園の中心部へと入って行きます。
庭園図 敷島公園のバラ園はこのような配置になっています。

図面上、北入口が上部で、まずは一番左側の突き出たエリアの「オールドローズ」を散策します。
先月訪れた【神代植物公園】では四季咲き性のバラの以前のバラを「オールドローズ」で以降のバラを「モダンローズ」であると知りました。
ここは比較的野生的な、現在のバラの原形を見ることができるエリアです。

「オールドローズ」エリアに向かう小道のフェンスには、幾つかの綺麗なモダンローズが植栽されています。
モダンタイムス その中でとりわけ目を引いたのが、この「モダンタイムス」です。

1956年オランダで作出されたバラで、全く私と同じ年齢のバラです。恐らく、1936年のチャーリー・チャップリンが監督・主演のアメリカ映画「モダンタイムス」をモチーフとしたバラなのでしょう。
一見、キッチュ感があり、“霜降り和牛”とも言えなくもない強烈な個性を持ったバラですが、この個性こそがチャップリンなのでしょう。
「モダンタイムス」で有名な“スマイル”より“ティティナ”の曲に近いイメージともいえるかもしれません。

最初に強烈なバラを見てモチベーションをあげてから「オールドローズ」を散策します。
オールドローズエリア 「オールドローズ」のエリアの中央には洒落たレストハウスもあり、落ち着いた中にも清楚で上品な華やかさを醸し出しています。

こういうのを「ガゼボ」というのだそうですね、一つ利口になれたようです。

ツル レディ ヒリンドン その中にあってまず目を引いたのが「ツル レディ ヒリンドン」です。

いわゆる“つるバラ”で、1917年アメリカ作出のバラです。色合いが実に気品のある綺麗な発色で、余り見かけない色につい注目してしまいました。

オールドローズエリア ここがちょうどオールドローズエリアの中間点です。

艶姿 その近くに香りの強烈なバラがあります。「艶姿」というバラでまさにメイドインジャパンです。

勿論、カラーも強烈ですが、香りも強烈で、まるで花魁(って、会った事無いですが…)といったイメージでしょうか・・・。

タウゼントシェーン その先にあるのが「タウゼントシェーン」と言うバラで1906年ドイツ作出です。

勿論、花自体も綺麗なのですが特筆すべきは花の数です。
タウゼントシェーン つるバラなのだそうですが、まさに一枝がバラの花束状態です。

このバラが一面にあったらすごいことになるでしょう、きっと。

マーメイド キュートなこのバラは「マーメイド」です。

イギリス作出の1918年ものです。色合いはシックでいながら、そこはかとない華麗さも持ち合わせているかのようです。
「マーメイド」なので、もう少し水のイメージかなと思いますが若干違うようです。まあ、“小麦色のマーメイド”って言うことにしておきましょう。

ジプシーボーイ ジプシーボーイ 「ジプシーボーイ」と言うハンガリーの1909年作出のバラです。

赤と言うよりは紫…、紅芋色…、何と表現すれば良いかわかりませんが、ビビットカラーが印象的なバラです。
特に珍しいわけではないのでしょうが、個人的にはハンガリー作出と言うのは初めて見ました。

ハンガリーの次も個人的には珍しいイタリアのバラ「バリエガータ ディ ボローニア」です。
バリエガータ ディ ボローニア 白地に濃いローズピンクのストライプが綺麗なバラで、これも1909年作出です。

ボローニャといえば、かつて中田英寿が一時所属したことのあるボローニャFCがあるのですが、このボローニャFCの創立年が1909年で、ホーム用のユニフォームは赤地に青のストライプで、アウェイでは白地に赤と青のラインというユニフォームとなるのですが、何か関連するところがあるのでしょうか。

ドゥシェス ドゥ モンテベロ ドゥシェス ドゥ モンテベロ 次のバラは「ドゥシェス ドゥ モンテベロ」というフランスのバラですが、1824年という今回目に付いた中では一番古い品種です。

バラ自体は特にオールドローズと言った野性味のある雰囲気ではなく、洗練されたモダンローズといった佇まいです。あくまで“一季咲き”か“四季咲き”かの違いですから、見た目はモダンローズと変わらなくても不思議は無いわけです。
もっとも野生的といわれるのは「ワイルドローズ」と区別する場合もあるそうなので、「オールドローズ」と言っても配合された美しさを持っているのですね。

オールドローズ最後のバラは「ミセス ジョン レイン」で、1887年イギリス作出のバラです。
ミセス ジョン レイン 白ではなく濃いピンクと薄いピンクのグラデーションが美しいのですが、それよりもこのバラはネーミングに惹かれました。

どのような由来からのネーミングかは判りませんが、“ミセス ロビンソン”的に耽美なネーミングが実に印象的です(何処に注目しているのやら…)。

オールドローズエリア オールドローズエリア まだまだ、たくさんの「オールドローズ」があるのですが、あくまで目に付いたバラということでここまでにしておきます。

流石に100年以上の歴史をもったバラ達なので、より長く多くの人たちを魅了してきたことを窺えることができそうです。
これだけでも十分堪能できたのですが、この先の「モダンローズ」が更に楽しみになります。

前橋市蚕糸記念館

「オールドローズ」のエリアから「モダンローズ」のエリアに移る前に、「オールドローズ」エリアの西側に比較的大きな建物があります。
前橋市蚕糸記念館 「前橋市蚕糸記念館」という建物なので立ち寄ってみることにしました。

県指定重要文化財 旧蚕糸試験場事務棟
1912年に建てられた建造物。国立原蚕種製造所前橋支所として建設されました。当時、日本全国で6箇所に建設された内、現存する唯一のものです。
当時、日本の主な輸出産業であった絹糸に関わる、カイコの飼育方法や品種改良、病気対策などの研究をして大きな業績を上げました。
1981年に前橋市がこの地に移築し、「糸の町前橋」の象徴とし、蚕糸記念館として開館しました。
(案内パンフレットより)

国立原蚕種製造所は東京に本所を置き、1912年にはこの前橋支所のほか、京都府に綾部支所、福島県に福島支所の3箇所の支所がまず開所され、翌年に長野県松本支所、大正2年に愛知県一宮支所、及び熊本県熊本支所がそれぞれ設置され、合計1本所6支所となったのだそうです。
その後、国立原蚕種製造所は蚕業試験場、 蚕糸試験場養蚕部などと改称しながらも優れた研究を残し、日本の蚕糸業の振興に寄与し昭和55年の研究機関統合により、茨城県つくば市の農林水産省蚕糸試験場(現:独立行政法人農業生物資源研究所動物生命科学研究所)に移転したのです。
こうして不要となった本所及び各支所の内、この前橋支所だけは翌年の昭和56年国から払い下げを受け現在地に移築・保存することとなったのです。
このように「糸の町」のシンボルとしての記念館という貴重な資源であることは理解できたので、次は「糸の町」としての歴史を調べてみます。

前橋の製糸業の歩み
前橋は、江戸時代より繭・生糸の集散地であり、製糸の町として発展してきました。特に明治3年(1870)に前橋藩士深沢雄象、速水堅曹を中心として創設された前橋藩営器械製糸所(イタリア製、木製6人取、動力水車)は細ヶ沢(住吉町1丁目)の武蔵屋伴七宅で操業を開始しました。これが日本における器械製糸の始めであり、官営富岡製糸場(明治5年)に先立つこと2年6ヶ月前のことでした。その後、前橋の製糸業は大正期、昭和初期の隆盛を経て、第二次大戦まで日本の製糸の中心としての地位を保ち、今日の前橋市発展の礎となりました。』(パンフレットより)

以前、埼玉県越生町を【越生まつり】で「絹会館」を訪れたときに関東の絹について学びました。平成19年度での繭の生産量は全国で群馬県、福島県、栃木県がベスト3でしたから、前橋を含めた群馬県の基幹産業としての歴史をうかがい知ることができるところです。
勿論、基幹産業として推進したのは富岡製糸工場の存在が大きいのでしょうが、明治、大正、昭和前半にかけて群馬県のみならず、日本の養蚕、製糸産業を牽引した一端といっても過言ではないでしょう。
関東の絹産業についての歴史は下記のサイトに詳しく説明されているので必見です。

参考:【関東絹の道】http://www.manabi.pref.gunma.jp/kinu/

実際に内部を見学します。館内は第1展示室から第4展示室までの4つに別れています。

第1展示室には、産業としての資料や、蚕の解説、歴史など養蚕・製糸産業のあらましが展示されています。
第1展示室のカイコ 第1展示室のカイコ このようにカイコそのものも展示されています。

そもそもカイコは昆虫なのですが、家蚕とも呼ばれ家畜化された昆虫で野生に生息していないと言う実に珍しい昆虫です。そして野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物で、人間による管理無しでは生きられない生物なのです。
このように珍しい昆虫でありながら、その起源ははっきりとは判っておらず、養蚕自体の歴史が少なくとも5000年の歴史をもつことから、かなり古くから存在していたことだけははっきりしているようです。

第2展示室は主に養蚕に関する用具が展示されています。

この展示室は、蚕を育てる養蚕に関係した資料や道具が展示してあります。
桑の葉を採る爪や桑コき、蚕が大きくなると、枝ごと与えたので、小型の「鎌」を用いるようになりました。蚕はとても病気に弱い昆虫なので、育てるのに神経を使います。温度や湿度に気を配り、また消毒を行なって予防につとめました。 /> 蚕が繭を作り上げ蛹に変わると、まぶしから繭をはずします。そして、まわりについている余分な「けば」と呼ばれる糸を取り除き、仕上げをして、袋に詰めて出荷するのです。
(館内案内パネルより)

第2展示室の用具 第2展示室の用具 このように様々な道具が展示されています。

第3展示室は主に製糸に関する道具・機械が展示されています。

この展示室は、製糸に関係した資料や道具が展示してあります。
糸を取る道具としては、古くから円筒形の枠に直接巻く「胴とり」でしたが、はずすのに便利なように角枠の牛首が用いられるようになり、さらに江戸時代の終わりの頃から、歯車を利用して回転させる座繰器が発明されました。信州方面に伝わったいわゆる上州座繰は、糸を均一に巻くために振り子を取り付け改善したものです。
また、足踏式繰糸器は、繭を煮るのと糸を取るのを組み合わせた器械です。糸枠を回すのに足を使うなど大変工夫されたものです。さらに、明治末期になると、機械繰糸器機を導入し、一貫した生糸の生産が行われるようになりました。
幕末に生糸の輸出が始まってから、しばらくは生糸の検査は重さだけでした。やがて、品質の低下を防ぐために、手触り、光沢などから張力や水分量など細かく検査を行うようになりました。
そのほかに、揚返し器などが展示されています。
(館内案内パネルより)

第3展示室の器機 第3展示室の器機 様々な経験のなかでこれらの器機が産み出されていったのでしょう。

最後の第4展示室は機織や養蚕信仰の資料が展示されています。

この展示室は、機織りや養蚕信仰に関係した資料や道具が展示してあります。
明治の中頃までは、絹織物を作るのに「いざり機」という織機が使われていました。これは縦糸を上下二段に分けて置いた間に、45センチくらいある大きな「梭」を使って横糸を通していくもので、足に縄をつけて縦糸を上下させ、手で左右に投げるなど、大変原始的なものでした。
明治中頃から、「高機」が普及しはじめ、大正時代以降は大部分を占めるようになりました。高機は足踏みにより縦糸が上下し、紐を引くだけで「梭」にある横糸が左右に動かせるという仕組みで、かなりの改良が重ねられ、いざり機にくらべ能率が上がるようになりました。
養蚕は古くから広まり、農家の重要な収入源でした。養蚕の成功は、農家の生活を左右し地域の経済を左右することさえありました。そのため、養蚕農家では蚕のことを「おかいこ様」と呼んで大切にし、蚕の成長を喜び、繭の増産を祈ったのです。
(館内案内パネルより)

第4展示室の高機 こちらが「高機」のようです。

生糸の生成 この展示室での特筆すべきことは生糸の生成が実演されていました。

生糸は蚕の繭からとるのですが、1個の繭から取り出される糸は髪の毛よりもずっと細いので、1本の糸にするために一般的に複数個の繭の糸を合わせて1本の生糸を作るのだそうで、その行程を実演しているのです。

ここでは20個くらいの繭を湯で煮てから1本の生糸に合わせる行程です。
生糸の生成 常に湯で煮ながら、その湯をかき混ぜていなければいけないそうです。

生糸の生成 余りにも細くて元の1本1本の繭糸は写真では撮りきれませんでしたが、まとめられた1本の生糸はかろうじて写真に取ることができました。

この1本にまとまった生糸を糸車で巻き上げていき、その後乾燥させてから出荷するのだそうです。
今まで繭1個で1本の生糸を取っていたものばかりと思っていましたが、意外な事実に驚かされました。
この生糸の実演を最後に記念館を後にしました。前橋市蚕糸記念館は、歴史的にも文化的にも貴重な文化財でした。

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