日本一のグライダー滑空場

妻沼聖天堂を出て県道太田熊谷線を北上し、利根川手前で右折して利根川堤通りを進みます。
利根川堤通りはちょうど土手の中腹に造られたような道で左側は道路より高く土手が連なり、右側は道路より低く土手が連なっています。
ほぼ一直線の道の両側は菜の花が満開のようで一面黄色の絨毯と化しています。
利根川堤通りの菜の花
これが恐らく何キロか続いているのですから、見ごたえがあります。あまりの綺麗さに途中車をとめて写真を撮ったくらいですから。
しばらく走行していると、左側の高い土手側に上る小道があります。
特にグライダー滑空場の案内もないので、いくつか目の坂道を上がってみました。小さい坂道には僅かながら車の轍があったので当然車でのぼれるのだと思いましたが、土手の上は遊歩道で自動車は上がれませんでした。これは徒歩や自転車があがる坂道で、結局バックしながら坂道を降りる羽目となりました。恐らく同じような人がいたのでしょうね。
仕方なくそのまままっすぐ進むと、またいくつ目かの坂道がありました。
今度は舗装されている坂道で、今までより幅も広いのでここを上がってみました。
すると遊歩道を横断して河川敷に降りる坂があります。更にその先には小さくグライダーの姿も見え、小集団の人影も見えます。
グライダー滑空場の北端
ここだとばかりに車で河川敷に降りて、グライダーのある方向へ向かいました。河川敷の滑空場の両サイドに2機ずつ計4機のグライダーが置かれていました。
始めて実物のグライダーを見る
特に離着陸をする様子も無く、いたずらに時間が経過するだけなので、何枚かの写真を撮ってその場を後にしました。
それにしてもいくら学生用といっても設備も何も無く・・・殆ど河川敷そのものといってもよいような余り整備されていない風景に少し意気消沈でした。ただ比較的間際で始めてグライダーを目に出来たのが唯一の収穫でした。
仕方なく利根川堤通りに戻って先に進みます。次の目的地に向かうことにしましたので。

しばらく行くとまた、大き目の坂道がありそこには滑空場と案内がありました。
先ほどの場所から結構離れているのにと思いながら、とにかく登ってみると、広い駐車場(だと思いますが)と比較的整備された道が続いていました。
グライダー滑空場南端
左方面にはサッカー場があるので、地図によるとサーカー場の先には無いはずですが、実際には滑空場がありました。
ここでも何機かのグライダーとやはり小集団の人達がいます。
グライダーテイクオフ準備
駐車場に向かうとバスが1台止まっており、立正大学と書かれていましたので、そこの学生でしょうね。

この滑空場は本書の説明の通り、正式名称は「日本学生航空連盟妻沼グライダー滑空場」です。
そもそもこの日本学生航空連盟とは、飛行機ブームで大学生達も操縦を憶え始めるようになったことにより、朝日新聞社の呼びかけで昭和5年(1930)結成されました。当初は飛行機の訓練だけだったようですが、昭和10年からグライダーも加わったようです。
そして、昭和13年(1938)には文部省が各中学校(現在の中学~高校にあたる)に滑空部(グライダークラブ)を設けることを奨励し、1940年に”文部省1型初級滑空機”を発表したそうです。
それに呼応するように、日本学生航空連盟でも霧が峰高原でのグライダー訓練や、グライダーの量産を計り全国の学校へ配置するなどして愛好者を増やす努力を行ったそうです。その努力の結果、当時の中等野球(現在の全国高校野球)に匹敵する大学生の全国スポーツ組織として広がったようです。
このあたりは戦争の陰とともに広まっていったのではないかと想像します。
戦後は、昭和27年の再発足し、純粋なスポーツ団体としてグライダーを中心に心身鍛錬を図り、航空文化の発展を目的に、昭和34年(1959)に文部省(当時)所管の財団法人となったそうです。
現在の加盟校は、関東、東海、関西、西部の4支部に57大学、1専門学校、1高校が加盟、約20,000 名のOBがいます。
滑空場は妻沼(埼玉県熊谷市 利根川河川敷)、木曽川(岐阜県海津市 木曽川河川敷)、久住(大分県竹田市久住高原)、白川(熊本県熊本市 白川河川敷)の4つの専用滑空場と、福井空港(福井県坂井市)を利用しています。
年間約380合宿、約33,000回の飛行実績があり、これは国内グライダー飛行回数の約80%を占めていて、わが国最大のグライダー団体であるそうです。
朝日新聞社は現在でも実質的な運営・経済的援助を行っていて「大空に夢を描く人たち」をバックアップしているそうです。

参考:【財団法人 日本学生航空連盟】 http://www.sakitama.or.jp/jsal/index.html

このような経緯で妻沼の滑空場が学生グライダーのメッカと呼ばれるようになったわけです。
前述した3月7日の”フェスタ”も第49回全日本学生グライダー競技選手権大会”のイベントとして開催されたものです。 この大会は3月7日~15日まで行われた、文字通り学生の頂点を目指す大会だそうです。
ここで折角なのでグライダーや競技に関する基本的なことを調べてみました。

グライダーとはそもそも空気より重いが動力無しで空を飛ぶための乗り物です。航空法の航空機としては「滑空機」と言うそうです。
離陸と地上移動、高度が下がってきたとき等必要なときだけ動力を使い、それ以外は普通のグライダーと同じになる”モーターグライダー”という派生種などもあり、ハングライダーやパラグライダーも略してグライダーと呼ばれることもあるそうです。
基本的に動力の無いグライダーが飛ぶ原理は一帯どうなっているのでしょうか。
これを説明すると、ヨットがどうして進むのかと同じような空気力学の理解力が必要となるので、あえて難しい説明はよしましょう(・・・というか出来ない)。
根本的には飛行機は何故と飛ぶのかと一緒です。プロペラなどの推進力によって推力が生まれ、飛行機が前に進むことによって、翼にあたる空気が持ち上げる、所謂揚力が発生するからです。
グライダーも原理は同じですが、飛行機のように推力を生み出すプロペラやジェットがありません。 そこで推力を生むのが下降する力となりのです。
このあたりは紙飛行機と同じで、紙飛行機を飛ばす最初の人の力が、グライダーのウィンチでの曳航で、飛んでからは紙飛行機は落ちながら飛ぶわけです。グライダーも基本は落ちながら飛ぶのですが、この場合は上昇気流などを使うことが出来るので、一概に落ちるだけではないのだそうです。紙飛行機より頭が良い分永く飛んでいられるのでしょうね。
(根本的に間違っているならご指摘下さい、あくまで”素人の考え休むに似たり”ですから)

さてこのような原理でグライダーは飛ぶようですが、派生種などがあるとありますが、もともと所謂グライダーに種類というのはあるのでしょうか。
調べてみるとカテゴリーとしては3種類あるようですね。

1.プライマリグライダー(primary glider)
木材のトラス(骨組)胴体に布切れを付け、木製骨組の主翼をつけて上下を針金で固定させた簡単な構造のものです。
計器などはなく、操縦士は胴体先頭座席にむき出しのまま座ります。
発航(離陸)は太いゴムロープを20人位の人がV字型に引き十分な張力が出たときに発航する方法です。
この機体は空気抵抗が大きくて性能が良くないため現在は殆ど使われていないそうで、所沢の航空博物館などに展示されているそうです。
昭和初期のグライダー普及の際に各学校に配置された、”文部省1型初級滑空機”などもこれにあたるようです。
ぶっちゃけ”パチンコ”ですね、これ。
2.セカンダリーグライダー(secondary glider)
簡単な計器類が付いた復座型、そしてプライマリーの操縦席の周りを風除けで取り巻いて空気抵抗を改善した機体です。
自動車に300m程度のワイヤーをつけて自動車で引く方法と自動車用エンジンにドラム缶を付け、これにワイヤーを巻いて発航させるウインチ式があり200~300mの高度まで上昇させることができるそうですが、これも現在殆ど使用されていないそうです。
3.ソアラー(soarer)
現在使われている高性能グライダーで、演習用の復座型と短座型に分けられます。発航方法にはウインチ曳航と飛行機曳航があります。文字通り飛行機曳航は飛行機にロープをつけグライダーを曳航する方法ですが、高度を自由自在に選択することができ最も気流が良い所までグライダーを連れて行くことができるという長所があります。
以上のように3種類というよりは、歴史的に進化してきたといった方がわかりやすいでしょう。

そのように見ると今日はウインチ曳航されているようです。
そう機数も多くないのですがちらほらと発航していくのが見えます。発航場所まで人力で引いていく様は実に原始的ですが、のどかな雰囲気に見て取れます。 そして一気に上昇していく様は、やはり男のロマンでしょうか、何よりも美しく見えるのは私だけではないでしょう。
747の離着陸のような重厚さや迫力はありませんが、グライダーの離着陸は誠に優美で華麗です。しばし何も考えずにボーっと見ていても飽きませんね。

そうこうしていると、左側から着陸機がやってきました。
グライダー着陸滑空
まさに”音も無く”ですから偶然気づきました。
長い主翼で、まるで鳥のように舞い降りてきます。
グライダー着陸滑空降下
徐々に高度を下げ音も無く地上に近づく姿は、まるで白鳥のようです。
そしてちょうど私の目の前でランディング。
グライダーランディング
と同時に今まで静粛だったところにいきなり「ボコン」と安っぽい金属の音が聞こえます。ランディングの際の着陸音にちょっと現実に引き戻されかけましたが、雄姿をみてうっとりさせられました。
おそらくこの”無音”というところがグライダーの魅力ではないかなと思いました。まさに鳥になった気持ちなのではないでしょうか。 飛ぶ方も、見ている方もまさに大空を巡る鳥達を感じているのではないでしょうかね。実に人類のロマンをグライダーに見た!・・・的な気持ちです。
グライダー格納
日本一のグライダー滑空場は、日本一の男のロマンあふれる場所かも知れません。
暫し去りがたい気持ちを抑えつつ最後の目的地の「荻野吟子生誕地公園」へ向かいました。

参考:【熊谷市OS・飛べグライダー】 http://www.city.kumagaya.lg.jp/kanko/kumaspo/guraider/saiten/index.html

追記:この後、「荻野吟子生誕地公園」でもグライダーの発航が見えるのですが、意外や意外、結構音が聞こえるものですね。恐らく風を切る音でしょう。
ちょうど”エド・はるみ”の決めのポーズで発する・・・「コウォー」という音に似た。結構ロマンから目覚めてしまった気もしないことも無いのですが。聞かなきゃよかった…。

2009.3.26記

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