黒浜沼

蓮田市役所から黒浜沼に向かいましたが、この時点でPM1:30過ぎです。かなり空腹なので途中どこかのお店に入って食事でもと思いながら車を進めました。
東北自動車道を横断して行くと住宅もちらほらと、段々のどかな風景に変わっていきます。殆ど食事するのは不可能かなと思いながら(案の定その通りだったのだが)走らせていると、左、黒浜沼の道標がありその通りに進むと一本道で黒浜沼に到着しました。

ちょうど堤の上の道路ですが、左手にかすかに沼のようなものが見えます。あれが黒浜沼でしょう。
黒浜沼 【黒浜沼遠景】
堤上にはいくつかの案内板がありました。 一番手前の看板は環境美化に関してです。
黒浜沼 【黒浜沼地権者会案内板】


大切な自然を保存していこう!!
昨今、都市化が進展し、自然が失われつつある中で、緑の重要性が再認識されています。 緑は住民に安らぎや季節感を与えると共に美しい自然景観をつくる上でも中核的な役割を担っています。
黒浜沼周辺区域は、まとまった田園景観を残す地域であり、水田地帯と台地との境界に位置し、田園景観の要素を多く含む区域であります。 従って、この大切な自然を将来にわたって保存していきたいと考えております。
黒浜沼周辺地権者会・蓮田市

環境美化事業
地域の環境美化に努め、また自然環境の保全をしていくことを目的に平成9年度から景観が良く鑑賞できる「花しょうぶ」の栽培を実施しております。

残念ながら今は冬到来の季節で、沼周辺は殆どモノトーンの世界です。春にはさまざまな花や水田に彩がついてくるのでしょう。その様な四季毎の自然を護ると言うことでしょう。
黒浜沼 【勝手にレタッチしたモノトーンの世界】
また、少し先の道の両側にも案内板が立っています。
黒浜沼 黒浜沼 【左:上沼側案内板、右:下沼側案内板】


蓮田市上沼 県自然環境保全地域
昭和五十四年三月二十日指定
指定面積二、六三ヘクタール

この沼は、蓮田市の黒浜にあるところから下沼と共に、「黒浜沼」とも称されています。
宝蓮山真浄寺の「竜宮仏縁記」によると、寛永年間(一六二四~四三)に沼を分割、堤を築いて往還の大道とし、ここを境に上沼と下沼とに分かれたとあり、近江八景になぞられた黒浜八景の名勝の一つに数えられています。
水辺から沼の中心に向かっては、さまざまな水生植物群落が見られます。また、チョウ・トンボ類の生息密度も高く、谷地沼として典型的な特徴を維持しているすぐれた湖沼として、下沼と共に、埼玉県自然環境保全地域に指定されました。今後とも、この豊かな自然環境を保全していきましょう。

平成七年三月
埼玉県

蓮田市下沼 県自然環境保全地域
昭和五十四年三月二十日指定
指定面積二、五○ヘクタール

この沼は、谷地(低地に浅く水がたまり草が茂っている湿地)の開口部が元荒川の運んだ土砂の堆積によりせき止められてできたもので、慈恩寺台地の南西部、標高8メートルの地に位置しています。
岸辺には、ヨシ、マコモ等の挺水植物が繁茂し、水面には、ヒシ、トチカガミ等の浮葉植物が敷きつめ、一部には、オニバスも見られます。 また、鳥類、昆虫類の生息密度も高く、人為の影響の少ない地域であり、湖沼特有の生態系を維持しています。
このように、自然度が高く、学術的にも貴重なものであることから、本地域を上沼と共に県自然環境保全地域に指定し保全を図っています。
昭和六十一年三月
埼玉県

ということで、上沼、下沼それぞれの案内でした。
悲しいことに私自身、生物に殆ど興味が無いのです、それも子供の頃から。本当にとても珍しい生物なら(世界で3匹しかいない海老とか・・・)いざ知れず、せいぜい「桜並木は美しい」とか、「チューリップ畑は圧巻」とか。あるいは「秋の秋刀魚はやはり旬」とか、「赤とんぼが飛んでいるからもう秋」とかの生物しか判らない。
ヨシ・ヒシ・オニバスなどといわれてもチンプンカンプン状態です。ですので自然度が高かろうが、学術的に貴重なであろうが、サッパリありがたみを感じないのです。
子供の頃、家にはイヌやネコのペットを飼っていましたが、あくまで家が飼っているペットで、私自身が欲したペットは生まれてこの方一つもありません。だからと言って嫌いなわけではないのです。寄って来れば撫でますし、可愛がることもするのですが、所謂、本来の愛情と言った感情はペットにはもち得ないのです。
ですから生活に関連した生き物しか知りませんし、特に知ろうともしないのです。 こんな私ですので、さぞ黒浜沼も迷惑な話でしょうね。

ですが、興味を持ったことも二つあります。一つは”県自然環境保全地域の指定”ということ、二つ目は”黒浜八景の名勝の一つ”であることです。
そこで、まずは”県自然環境保全地域”について調べてみました。それには”埼玉県自然環境保全条例”が基本となっているようです。第一章 総則の目的第一条はこのように規定されています。

この条例は、自然環境を保全することが特に必要な区域等の自然環境の適正な保全を総合的に推進することにより、広く県民が自然環境の恵沢を享受するとともに、将来の県民にこれを継承できるようにし、もつて現在及び将来の県民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

そこでこの環境を保全すべきエリアを決定するのが知事だそうです。

第一節 指定等
第十四条 知事は、次の各号のいずれかに該当する土地の区域のうち、自然的社会的諸条件からみてその区域における自然環境を保全することが特に必要なものを県自然環境保全地域として指定することができる。
1. 高山性植生又は亜高山性植生が相当部分を占める森林又は草原の区域(これと一体となつて自然環境を形成している土地の区域を含む。)でその面積が規則で定める面積以上のもの
2. すぐれた天然林が相当部分を占める森林の区域(これと一体となつて自然環境を形成している土地の区域を含む。)でその面積が規則で定める面積以上のもの
3. 地形若しくは地質が特異であり、又は特異な自然の現象が生じている土地の区域及びこれと一体となつて自然環境を形成している土地の区域でその面積が規則で定める面積以上のもの
4. その区域内に生存する動植物を含む自然環境がすぐれた状態を維持している湖沼、湿原又は河川の区域でその面積が規則で定める面積以上のもの
5. 植物の自生地、野生動物の生息地その他の規則で定める土地の区域でその区域における自然環境が前各号に掲げる区域における自然環境に相当する程度を維持しているもののうち、その面積が規則で定める面積以上のもの
(以下省略)

これ以上に細かい規定はあるのですが、まあ、単純にこのような経緯で県自然環境保全地域に指定されたのです。
当時指定された内容が以下の通りです。

『埼玉県自然環境保全条例に基づく県自然環境保全地域の指定
昭和五十四年三月二十日  告示第四百三号

埼玉県自然環境保全条例(昭和四十九年埼玉県条例第四号)第十四条第一項の規定により、県自然環境保全地域として次のとおり指定する。
県自然環境保全地域の名称
保全地域に含まれる土地の区域

蓮田市上沼県自然環境保全地域
蓮田市大字黒浜字上沼四六三七番の一

蓮田市下沼県自然環境保全地域
蓮田市大字黒浜字十九町五四七三の一
(以下省略)』

このように県から指定は受けたものの実際に保全・管理していくためには、現実問題として資金が必要になるのは必然でしょう。実際に埼玉県自然環境保全条例によると”土地の買い入れ”という条項もあるのです。

第二十四条 県は、自然環境の保全のために特に必要があると認めるときは、県自然環境保全地域内の土地を買い入れるように努めるものとする。

ですが、現在でも黒浜沼周辺は先の環境美化案内板に”黒浜沼周辺地権者会・蓮田市”ともあるように、現在は民有地となっているのです。この地権者会は平成7年に発足し、定期的な草刈り作業やハンショウブの栽培・管理などを行い、黒浜沼周辺の環境美化と保全に努めているのは、先の通りで、地権者の理解と協力によって少しずつ環境整備をしていこうと言う地道な努力が見られます。
そうは言っても、ある程度予算も無ければならないし、公有地としての確保も必要なのは明白です。
そこで現れた救世主(・・・かどうかは判りませんが)が、《さいたま緑のトラスト運動》です。

この運動の原点は「ナショナル・トラスト運動」で100年以上前にイギリスで誕生し世界各地に広まった運動ですが、自然環境や歴史的環境を守るため、市民や企業などから寄付を募って自然地などを買い取り、保全していこうと云う運動です。
埼玉県でも県内の優れた自然や貴重な歴史的環境を県民共有の財産として末永く保全し、次世代に残すという目的で、埼玉県と(財)さいたま緑のトラスト協会の協力によって展開されているそうです。
つまり、この運動は県民・企業・団体から寄付(さいたま緑のトラスト基金)を主な資金とし、対象地を「緑のトラスト保全地」として取得し、公開・保全を図るもので、現在では平成2年度から19年度までに県内で9ヶ所(1号地~9号地)が取得されています。

第1号地 《見沼田圃周辺斜面林》(さいたま市緑区南部領辻) 1.1ha -平成2・3年度取得
第2号地 《狭山丘陵・雑魚入樹林地》(所沢市上山口)3.4ha -平成6・7年度取得
第3号地 《武蔵嵐山渓谷周辺樹林地》 (嵐山町鎌形ほか) 13.5ha -平成9年度取得
第4号地 《飯能河原周辺河岸緑地 》(飯能市矢颪(やおろし)ほか) 2.3ha -平成10・11年度取得
第5号地 《山崎山の雑木林》 (宮代町山崎) 1.3ha -平成13年度取得
第6号地 《加治丘陵・唐沢流域樹林地 》(入間市寺竹) 11.2ha -平成14・15年度取得
第7号地 《小川原家屋敷林 》(さいたま市岩槻区馬込) 0.7ha -平成12・13年度(寄贈)取得
第8号地 《高尾宮岡の景観地》 (北本市高尾) 3.6ha -平成18年度取得
第9号地 《堀兼・上赤坂の森》 (狭山市堀兼) 6.0ha -平成19年度取得

参考:【(財)さいたま緑のトラスト協会】 http://saitama-greenerytrust.com/index.html

そしてある程度の成果を残したこの《さいたま緑のトラスト運動》は10号地以降の候補地選定にあたり県民の意識を高めるために公募制となりました。
そして2007年9月~11月に《緑のMYトラスト》として、県内から128ケ所の候補地応募があったそうです。その結果、2008年2月蓮田市の黒浜沼(上沼)が緑のトラスト保全第11号地に決定したのです。因みに第10号地は”あの”加須市の浮野の里"だそうです。何かの因縁でしょうか。
現実的には平成21年度取得予定だそうで、これからは県と市が一体となって黒浜沼の保全を図っていくようです。

もう一つの興味を調べる前に黒浜沼を散策します。
看板にもある一直線にのびる排水路です。だからどうということは無いのですが、風情としてはよろしいのではないかと思いますが。
黒浜沼 【一直線に伸びる黒浜沼排水路】
沼岸辺です。ちょうど沼の南側(下側)から見ています。思ったより小さい印象です。2人の親子が釣をしていましたが、寒いのでしょうかすぐ引き上げていきました。
黒浜沼 【南側から北側を望む黒浜沼】
岸辺に沿って北側(上側)に移動します。殆ど人が居ませんので私の歩いている音(枯れ枝をこする音)で鳥が数羽飛び立ち、一瞬びっくりさせられました。沈んだ船などがあり、決して綺麗とは思えませんが、今後綺麗になっていくのでしょう。
黒浜沼 【北側から南側を望む黒浜沼】
北側に着くと沼の中央に鳥が休んでいます。この辺がバードウォッチャーにとってはたまらないのかも知れませんが、何の鳥かは私には判りません。
黒浜沼 【バードウォッチング?】
ちょうどここにも案内板があります。

黒浜沼(上沼) 蓮田市大字黒浜
黒浜沼(上沼)は、大宮台地から分岐する白岡台地の南西部に位置する面積約二・六ヘクタールの天然湖沼である。 その成因は、台地の谷地を流れる小河川が元荒川の運んだ土砂の堆積によりせきとめられてできたものである。
昔は水面を渡船が往来していたが、寛永の頃(一六二四~一六四四)堤を築いて道を作ったため、現在は、上沼と下沼に分かれている。
池の周囲には、ヨシ、マコモ等の挺水植物が繁茂し、岸辺には、トチカガミ、ハス、オモダカ等の水草が見られる。 鳥類では、カイツブリ、カルガモ、バン、オオヨシキリ、セッカ等が繁殖しているほか、サギ類、シギ、チドリ類等多数の野鳥の生息が確認されている。 昆虫では、トンボ類が豊富で、中にはベニイトトンボ(北限分布)、オオモノサシトンボ(局所分布)等貴重な種類も見られる。 また、魚類は、ギンブナ、キンブナを主に、コイ、クチボソ、ライギョ、ドジョウ、メダカ等が生息している。
このように、都市近郊の平地沼としては、人為の影響の少ない地位であり、動植物の宝庫でもあるため、昭和五十四年に下沼とともに県自然環境保全地域に指定し、保全を図っている。
平成元年三月
埼玉県・蓮田市

堤上の案内板とほぼ同じ内容で、新たに岸辺に建てたということでしょう。取り立てて目新しいことは書いてありません。 全体的な印象としては何の変哲も無い沼・・・でしょう、正直。
ですが、その裏には色々な人たちの努力や協力で現在あるというストーリーを重ねてみると、以外に輝くような沼なのかも知れないなどと思います。
また、いつか再び訪ねたときに、どのように変わっているのか・・・否、変わっていないことが良いのかも知れませんが、ちょっと楽しみでもあります。

黒浜沼を半周して、北側から一旦舗装道路へ出て堤方面へ戻りました。戻る道すがら弁天社があるので立ち寄ってみました。ほんの小さな社ですが、ここに私の興味を解決する案内板がありました。
黒浜沼 【小さな弁天社】


黒沼八景
真浄寺九世慈雲禅師は、江戸時代に黒浜付近の名所、名勝を「黒浜八景」として称え今日に伝えている。
1.宝蓮山の晩鐘(真浄寺)
宝蓮山とは真浄寺のことであり、朝夕の鐘声は門外で桜の花をながめる里人の帰路を忘れさせた。
2.荒川の藻舟(現在の元荒川)
春には農夫が藻を刈る小船できにわった。(おそらく”にぎわった”の誤りだと思われます)
3.稲荷山の晴嵐(大字黒浜字宿浦付近)
稲荷山は高台にあり、眼下に田園が開け、遠くには富士山や浅間山がそびえる。
4.御林の暮雪(現在の東北自動車道蓮田サービスエリア付近)
御林には巨松が繁っていて、遠くからは暮雪が夕陽に映えて美しく、また、景色が朝夕に変化した。
5.雅楽谷の落雁(国立東埼玉病院付近)
水の入り江で、両岸は林が茂っていて、収穫がすむとやがて雁が群れをなしてやってきた。
6.薬師寺の秋月
かつて薬師寺は、現在の黒浜小学校の所にあり、前は水田、背は高松で明月が映えて美しい。
7.朝日島の夕照(現在地付近)
この島は湖水の岸につき出し、太陽が出ると光々たる光景から朝日島と称す。
8.溜堤の風蛍(黒浜沼上沼と下沼の間)
古の黒浜沼に堤を築き、上沼、下沼に分けた。その間は、風光明媚で納涼の場所でもある。
平成元年三月
埼玉県・蓮田市

案内板にあった”往還の大道”とは8の《溜堤の風蛍》のことだったようです。この八景の看板があるところが7の《朝日島の夕照》となるのですが、島らしいものが無いので当時は沼がもっと大きかったのではないかなと勝手な推測をしてしまいます。
黒浜沼 黒浜沼 【左:往還の大道?、右:朝日島の夕照地?】
現在の新八景と呼ばれるものは、観光地やあるテーマで決められたものが多いのですが、江戸時代からの所謂、近江八景を手本とした昔ながらの八景を見つけられるとは実に幸運です。いつか、この八景の地を訪ねてみたいものです。

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