神代植物公園・バラ園#2

一通りバラ園を散策し、しばしの休憩の後は、バラ園の向こう正面にある「大温室」を見学しようと移動します。
ちょうどこのバラ園の右側の外には別の散策路が並行していて、そちらにもバラが植栽されているようなので、それらのバラを見ながら「大温室」に向います。

野生種・オールドローズ園

最初に植栽されているのは「野生種・オールドローズ園」です。

野生種・オールドローズ園
バラの野生種は北半球に約200種あると言われています。一方、栽培バラは紀元前にさかのぼる長い改良の歴史を持っていますが、完全な四季咲性のバラが作出された1867年を境に、それ以前のバラをオールドローズ、それ以降に作出されたバラを現代バラと呼んでいます。
このバラ園は現代バラを作出する上で重要な役割を果たした野生種やオールドローズを展示しています。なお、ここに展示したバラは育種家の鈴木省三氏が収集したものです。
(現地案内板説明文より)

バラに関する記述は、紀元前2600年頃のシュメールの都市国家ウルクに実在されたとする王ギルガメッシュを主人公とした「ギルガメシュ叙事詩」が紀元前2000年紀初頭に作成されたシュメール語版ギルガメシュ諸伝承の写本に“バラの棘”について触れられているのが最古であると考えられます。
後の古代ギリシャ時代においても「ヴィーナスの誕生」にも描かれているバラの“風”に表現されているように、愛の女神アプロディテもしくはウェヌス(ヴィーナス)と関係づけられたようです。

そして現在のバラの改良の機運を創出したのが、あのナポレオンの皇后ジョゼフィーヌです。
ジョゼフィーヌはバラを愛好し、夫が戦争をしている間も、敵国とバラに関する情報交換や原種の蒐集をし、ヨーロッパのみならず日本や中国など、世界中からバラを取り寄せマルメゾン城に植栽させ「バラ図譜」を描かせたそうです。
この当時、既にアンドレ・デュポンによる人為交配(人工授粉)による育種の技術が確立されており、ナポレオン失脚、ジョゼフィーヌ没後も彼女の造営したバラ園では原種の蒐集、品種改良が行われ、19世紀半ばにはバラの品種数は3,000を超えるようになったようです。
これが現在の観賞植物としてのバラの基礎となったのだそうです。

こうした歴史の中で1867年に生まれたのが「ラ・フランス」です。丁度、明治維新の1968年の前年と言えば理解しやすいでしょう。
「ラ・フランス」はフランスの“ジャン=バティスト・ギヨー”が、ハイブリッド・パーペチュアル系の「マダム・ビクトル・ベルディエ」を母に、ティ系の「マダム・ブラビー」を交配したもので、冬を除けば一年中花を咲かせる性質のある「四季咲き性」という、それまでに無い画期的な品種のバラなのです。
これに追随したのがイギリスのベネットで、ティ系「デボニエンシス」とハイブリッド・パーペチュアル系「ビクトール・ベルディエ」を交配し、「レディ・マリー・フィッツウィリアム」を1882年に作り出し、これを新しいバラの系統として“ハイブリッド・ティ”系と命名したのです。このベネットの新品種は整った花容から交配の親として広く利用されるようになり、この“ハイブリッド・ティ”系の元である「ラ・フランス」をモダンローズの第1号として、これ以前のオールドローズと区別するようになったのです。

オールドローズ オールドローズ モダンローズと比べてオールドローズは小振りで、中輪から小輪のものが多いようです。

色彩的になオレンジ・イエロー系の品種は殆どないそうです。
オールドローズ そして、特徴として、ロゼット咲き、もしくはカップ咲きとよばれる花形がオールドローズならではのものだそうです。

印象的には確かに“野性味のある”といったイメージでしょう。

ロサ・キネンシス その中でもこの「ロサ・キネンシス」は、中華人民共和国中部を原産地とするバラです。

花弁の色や数(1.5倍から2倍に)に多くの品種改良が加えられ、ハイブリッド・ティーローズを含む多くの園芸用モダンローズの品種改良のベースとなった重要な品種なのだそうです。

因みにこの説明にある「鈴木省三」とは、「京成バラ園芸」の研究所所長だった方で、世界的にも“ミスターローズ”として知られており、バラの研究に取り組んだ他、植物品種の知的財産権である育成者権保護のため法制整備に尽力し、昭和53年種苗法の制定に貢献されたのだそうです。

国際ばら新品種コンクール花壇

オールドローズの庭園を抜け、先に進むと「国際ばら新品種コンクール花壇」なる一画があります。
国際ばら新品種コンクール花壇 文字通りコンクール用のバラが植えられているようです。

なぜ花名でなく番号で表示? 番号は審査番号です。
このコンクール花壇のバラは、フランス・アメリカ・ドイツ・イギリス・日本など世界の作出家がつくりだした未発表の新品種です。花色、花形、成長性、香り、新奇性等を東京都・(財)日本バラ会の審査員が2年かけ審査し、各賞が決まります。
上位入賞作品は、花名がつけられ、市販されるものもあります。この花壇から、後世に残る名花が生まれるかもしれません。
Japan Rose Concour 国際ばら新品種コンクール花壇
(現地案内板説明文より)

1105 1105 1105 いくつかの新品種を見ましたが、やはり個人的に注目するのはこちらの「No.1105」のバラです。

やはりどうしてもブルー系に魅かれるのですが、どちらかといえばシンプルなこの形状が結構好みなのです。

ここでバラの形状について少し調べて見ます。
先にバラの由来からからの2つの分類をオールドローズとモダンローズを知りましたが、形状に関しては大分類では「樹型」「花弁の形」「花びらの枚数」「咲き方」の4大分類があるようです。

■樹型
ブッシュ(木立ち性):直立性のもののほか、横に向かって枝が伸びるものとがあります。いずれも、支柱を必要としない自立できるタイプのもの。
シュラブ(木立ち性、半つる性):つる性と木立性の中間的なもので、修景用バラなど。
クライミング(横張り性、つる性):枝がつる状に伸びるタイプ。上に向かって伸びるほか、横や水平方向に枝を伸ばすものがある。

■花弁の形
剣弁:花びらの先がカールし、剣のように尖った形のもの。モダンローズに多い。
半剣弁:剣弁よりもカールがゆるいもの。剣弁と同じく、モダンローズに多い。
丸弁:花びらに丸みがある形のもの。(花びらの先はカールしない。)
波状弁:花びらの先が、波状にウェーブしているもの。

■花びらの枚数
一重咲き:花びらの枚数が5枚のもの。
半八重咲き:花びらが6から19枚のもの。
八重咲き:20枚以上のもの。

■咲き方
高芯咲き:花の中心が高くなっているもので、半八重(10?19枚)、八重(20枚以上)咲きのもの。
盃状咲き:花芯は比較的低く、花全体の形が盃状をしている。
抱え咲き:外側の花弁が下に降りずに中心を抱え込むようにして開いているもの。
カップ咲き:花を横から見るとカップ状にみえるもの。
ロゼット咲き:花弁が重なり合って平らに並ぶような咲き方のもの。
ポンポン咲き:花びらがとても細かく、球形か、またはそれに近い半球形に咲くもの。
クォーター咲き:花が開くと中心が1点にならず、4つぐらいに分かれたもの 。
平咲き:原種に多く、花が開ききると花びらが平らになる

以上の分類を知っておくと、今後バラを見る上での見方が変わって来るかもしれません。
バラの場合、現在は野生よりも交配・人工的に作出されたものが多いわけですから、このように分類方法が多くなるのも当然でしょう。
そして、ここからまた我々の目を楽しませてくれるバラが生まれるのです。

大温室

ぼたん園 コンクール花壇を抜けると、その先には「ぼたん園」があります。

シャクヤク シャクヤク 綺麗に咲いていますが、これはシャクヤクだそうです。

シャクヤクとボタンはよく似ているのですが、その違いとは一体どこにあるのでしょう。

シャクヤク(芍薬)はボタン科の多年草で、牡丹が「花王」と呼ばれるのに対し、芍薬は花の宰相「花相」と呼ばれているそうです。
ボタンが樹木であるのに対して、シャクヤクは草なので、冬には地上部が枯れてしまい休眠するのだそうです。
昔から“立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花”という美人の喩えがあるくらいですから、シャクヤクやボタンの花は花の中でも大変美しい花として考えられていたのでしょう。

バラ園 モニュメント 「ボタン園」の左手に「大温室」がありますが、温室とバラ園の間にモニュメントと案内板が置かれています。

神代植物公園は、2009年6月に開かれた第15回世界バラ会議バンクーバー大会で「世界バラ会連合優秀庭園賞(WFRS Award of Garden Excellence)」を受賞し、このプレートを授与されました。
世界バラ会議は、ロンドンに本部を置き世界41カ国のバラ会が加盟する「世界バラ会連合(World Federation of Rose Societies 略称:WFRS)」が、3年に一度世界各国のバラの専門家を集めて開かれています。
今回、神代植物公園のバラ園は、質の高い維持管理を行ってバラを美しく魅力的に展示し来園者に楽しんでいただいていること、原種バラの保存を行っていること、国際的な規模でバラの新品種コンクールを行っていることなどが評価され受賞しました。
(現地案内板説明文より)

世界バラ会連合優秀庭園賞 そのプレートがこちらです。

特に開園当時から栽培している海外でも例を見ないほどのバラの老大株、中央部に噴水を配置した左右対称の整形式沈床庭園、ロサ・キネンシス・ミニマなど79種類の原種バラコレクション等が評価されたのだそうで、これだけ整備の行き届いた庭園ですから、受賞も当然なのかもしれません。

大温室 大温室 バラ園を離れて「大温室」に入ります。

大温室 最初のコーナーは熱帯系の珍しい植物が植えられています。

ダチュラ・コルニゲラ これは「ダチュラ・コルニゲラ」というナス科の植物だそうです。

メキシコ産の木だそうですが、まるでこのままナスのように実がなるような奇妙は咲き方の花です。
メディニラ・マグニフィカ もう一つは「メディニラ・マグニフィカ」です。

フィリピン原産だそうですが、形といい色といい何となくキッチュです。そこが熱帯的でもある由縁でしょうか。

熱帯植物コーナーからラウンジを抜けると、スイレンの池があります。スイレンといえばモネの絵を思い浮かべる人が多いでしょう。

パラグアイオニバス 先ず目に付くのが熱帯地方で良く見る「パラグアイオニバス」です。

よく人が乗っている写真などで目に触れる機会がありますが、実際に見るのは始めてです。

他にもスイレンの花がちょうど咲いています。幾つかピックアップしてみます。

エルドラド エルドラド

レモンイエローの花色からスペイン語で黄金郷の意味を持つ「エルドラド」と名付けられたようです。
別名は「シティ・オブ・ゴールド」だそうですから、あくまで色がポイントのスイレンなのでしょう。

アメリカンビューティ アメリカンビューティ

“コロラータ”と“ブルースター”を交配したものだそうです。
スイレンも交配された品種があるものなのですね、知りませんでした。

ローラフレイス ローラフレイス

スイレンではブルーの花はあるのですね。これも“ブルービューティ”と“パナマパシフィック”を交配したものだそうです。

よくよく知れば現在ではスイレンは観賞用の園芸種がかなりあるのだそうです。スイレンも侮れないものです。

夜来香 スイレン池の脇に何の変哲もない“つる”の植物があるのですが、“夜来香”と書いて「イエライシャン」と読む植物です。

リアルタイムでありませんが(ここはあえて強調しておかないと・・・)、“夜来香”という曲が昔ヒットしたことは知っていたのですが、“夜来香”が植物だったことは始めて知りました。

多年草のつる植物で、花は8月?10月くらいに開花するようですが、このように5弁の星のような形の花なのだそうです。そして夜から早朝にかけて香りを発するところから“夜来香”と名付けられたようです。
ジャスミンのような芳しい香りを発する一方、花はスープやサラダに入れて食べるのも東南アジアや中国では一般的なようです。
夜来香 現在は咲いていないようで、花の写真がおかれていました。

香りと食用に一石二鳥の“夜来香”は、自宅に栽培してみたいものの1つです。

ベコニア ベコニア スイレンの池を抜けると「ベゴニア」のコーナーがあります。

一見するとバラのような花ですが、かなりカラフルな色合いなのは熱帯地方特有の色合いでしょう。
ベコニア こんな使い方もオシャレですね。

立ち木のほかに「つる」もあるようで、結構色々と楽しめるようです。

らん らん 「ベゴニア」の先は「らん」のコーナーです。

日本で自生している「らん」は温帯産で「東洋らん」と呼ばれているもので、熱帯産で欧米で改良が行われたものを「洋らん」と言いいます。
贈答用で有名は「コチョウラン」は洋らんなのだそうで、てっきり日本産なのかと思っていました。

結構初めて見た、知った植物が多かったので、非常に見聞を広められた素敵な温室でした。
まだまだ園内は広いのですが、今日のところは「大温室」を最後に植物公園を後にしました。

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