武蔵の小京都

国道254号線で東松山を抜けると道路の両側は田園風景に変ってきます。 嵐山渓谷で有名な嵐山を抜けるといよいよ小川町で、木々に囲まれた風景が続いています。
とりあえずは小川町駅付近にある観光案内所に向かいますと、その手前で国道254号線とJR八高線の交差する立体交差があるのですが、そこを抜けるとそれまでの田園風景がうそのような近代的な市街地となります。その代表が白亜の「ダイアパレス」マンションでしょう。かなり大規模なマンションです。
更に駅方面に近づくにつれ、どこにでもありそうなベッドタウンの町並みになってきます。地元の方には失礼ですが、もっと鄙びた風情を予想していたので、かなりの近代化に驚かされました。実際、これが「武蔵の小京都」と呼べるのか、ちょっと不可思議な気持ちです。
兎にも角にも観光案内所に行ったのですが、残念ながらまだオープンしていませんでしたので、とりあえず小川町のシンボルという「仙元山見晴らしの丘公園」に行くことにしました。
町の中心街から15分位でしょうか、短いながら山道を登っていくのですが、初めてLギアを使うほどの急坂でした。

仙元山見晴らしの丘公園

仙元山見晴らしの丘公園急坂を登りきると「仙元山見晴らしの丘公園」と書かれたアーチが出迎えます。シンプルながらウッディなアーチが自然に溶け合っているようです。

この公園は平成5(1993)年、ふるさと創生事業で町民が出したアイディアをもとにして造られた公園です。標高299mの仙元山の中腹に小川町が一望できる自然の地形をそのまま生かした公園なのだそうです。

ローラー滑り台駐車場に車を止め周囲を見渡すと小高い丘の上に滑り台が連なっています。


これがこの公園の目玉で全長203mのローラー滑り台です。料金は1回大人200円ですが、摩擦熱がかなり高いようで尻に敷く段ボール用紙を買うのに更に100円かかるようです。
さすがに滑りませんでしたが、たしかに長い長い滑り台です。

全国にはこのような滑り台が多くあるようですが、日本で一番長いとされるローラー滑り台は、静岡県にある日本平動物園にあり(正確かどうかは定かではない)全長390mあるそうです。
この日本平動物園の滑り台ができるまでは山梨県の丹波山ローラー滑り台が全長247mで一番長かったそうです。この丹波山のローラー滑り台もふるさと創生事業で造られたもので、人間考えることは同じということでしょうか。
因みに滑り台にはここにあるローラー式をはじめとして幾つかのタイプがあるようですが、所謂ボブスレーのようなソリに乗る滑り台では茨城県の「奥日立きららの里」というところにある全長877mのスライダーがあるようです。1km弱ですがものすごい迫力なのでしょうかね…

展望台ローラー滑り台を横目で見ながら左手にある展望台に昇ってみます。木で作られた展望台で、比較的大きなつくりです。


螺旋階段を上がって最上段につくと小川町が一望できます。
小川町眺望

赤城山お馴染みの山々の案内板がありますが、晴天と言えどもいまひとつ景色がクリアでないのではっきりとは判りませんが、榛名山、赤城山、男体山などがうっすらと見えるようです。
ちょうどこの山が赤城山のようです。


手前に目を転じると、小川町が山に囲まれたベットタウンといった奇妙な風景で、台形の白いマンションが一際光彩を放っている風景がみられます。
これらの景色が「武蔵の小京都」といわれる所以なのでしょうか…。
日本全国で○○の小京都と呼ばれる場所は実に多いのですが、この”小京都”には明確な規定があり、正式に認定されないと「○○小京都」とは名乗れず、どこでも勝手に名乗れる「○○銀座」とは大違いのようです。

そもそも小京都は文字通り古い町並や風情が京都に似ていることから各地に名付けられた街の愛称ですが、これを正式な名称にしようと1985年当時に小京都と名乗っていた京都市を含む26市町により「全国京都会議」が結成されたことから始まりました。つまりこの「全国京都会議」に加盟することが正式に小京都として認められたというシステムなのです。
そして1988年の第4回「全国京都会議」総会で加盟基準が設けられました。
1. 京都との歴史的なつながり 2. 京都に似た自然と景観 3. 伝統的な産業と芸能があること、で、以上3つの要件の一つ以上に合致していれば常任幹事会で加盟を承認されるのだそうです。
そこで小川町をこの条件に当てはめた要件が小川町のオフィシャルサイトに記載されていました。

1.文化と歴史的要件。
国の重要文化財に指定されている、日本最古の石造法華経供養塔と板碑が 大聖寺にあるほか、万葉集の研究者として名高い仙覚は、1269年4月、本格的な万葉集注釈として学問的価値の高い「萬葉集注釈」全10巻をこの小川町で完成させる等、の古くからの歴史と文化のある町である。
また、1300年の歴史ある手漉き和紙、特に「細川紙」の技術は、国の重要無形文化財に指定されている。
2.地理 ・ 風土的要件。
小川町は、周囲を緑豊かな外秩父の山々に囲まれ、市街地の中央に槻川 が流れ、歴史を秘めてたたずむ史跡や往時の面影をとどめる町並みなどの風情、伝統ある夏祭り(祇園祭=訛って、当地では〔おぎょん〕と呼ばれていた。) がある。
3.伝統的産業要件。
1300年の歴史ある手漉き和紙のほか、同じ歴史を持つ「小川絹」、森林資源を活用した「建具」、全国的に特異な物産「水嚢」、良質な水と盆地独特の気候と酒造りに適した自然環境に恵まれ、関東灘と異名をとった酒造は、今でも三軒の造り酒屋があり、鬼瓦などの地場産業を中心に栄えた伝統工芸の町である。』(小川町オフィシャルサイトより)

こうした条件の下、平成8(1996)年6月に51番目の会員として認められ「全国京都会議」に入会したのです。
小川町は当時51番目の入会でしたが、現在では脱退・失効した地域もあって京都市を含めて49市町が入会していいます。

●東北地方
青森県弘前市、岩手県盛岡市、岩手県遠野市、宮城県柴田郡村田町、宮城県大崎市岩出山地区、秋田県仙北市角館町、秋田県湯沢市、山形県山形市
●関東地方
栃木県栃木市、栃木県足利市、栃木県佐野市、茨城県古河市、埼玉県比企郡小川町、埼玉県比企郡嵐山町、神奈川県足柄下郡湯河原町
●中部・北陸地方
新潟県加茂市、長野県飯山市、長野県飯田市、愛知県西尾市、愛知県犬山市、富山県南砺市城端地区、福井県大野市、福井県小浜市、岐阜県高山市、岐阜県郡上市八幡町
●近畿地方
三重県伊賀市上野地区、兵庫県篠山市、兵庫県豊岡市出石町、兵庫県たつの市龍野町
●中国・四国地方
鳥取県倉吉市、島根県松江市、島根県鹿足郡津和野町、岡山県高梁市、広島県尾道市、広島県竹原市、山口県萩市、愛媛県大洲市、高知県四万十市中村地区
●九州地方
福岡県朝倉市秋月地区、佐賀県小城市小城町、佐賀県伊万里市、熊本県人吉市、大分県日田市、大分県杵築市、宮崎県日南市飫肥地区、鹿児島県南九州市知覧町

埼玉県では小川町とその隣接町の嵐山町の2ヶ所が入会しています。
嵐山町は県ゆかりの人で【本多静六】を菖蒲町を訪ねた際、この本多静六博士が京都の嵐山(あらしやま)に似ていることから嵐山(らんざん)と命名したという謂れがあるくらいなので、嵐山町が入会を認められるのも極々当然なのかなとも思えます。いずれにしても埼玉県では数少ない正真正銘の「小京都」ですから、その風情を楽しむのもまた一興でしょう。
この公園から見る限りは地理的に盆地である京都の感じが見て取れることは理解できますね。
因みに一般的に「小京都」と言われている福島県会津若松市、長野県長野市松代町、滋賀県近江八幡市などはあくまで自称・他称の「小京都」なのだそうです。
一概に「小京都」といえども奥深いものなのですね…。

ローラー滑り台出発点展望台から反対側をみると先ほどのローラー滑り台の出発点が見えます。結構高い位置に設置されています。


ローラー滑り台小高い丘の小屋からスタートし、終点はこの展望台をグルッと半周した小川町が見える方角にありました。やはり大層長い滑り台です。子供には十分楽しめる滑り台でしょう。


他にこの公園には子供用の遊具や四阿などがあり、自然と親しみながら楽しめるファミリー向きの公園でした。

カタクリとオオムラサキの林

「仙元山見晴らしの丘公園」はこの辺一体の遊歩道の一部となっているようで、遊歩道の説明によるとこの公園から「カタクリとオオムラサキの林」を通り「埼玉伝統工芸館」へとつながっているようなので、まずは「カタクリとオオムラサキの林」へ向かってみました。
小川和紙資料館途中「小川和紙資料館」があったのですが、特に案内も無く閉館しているようなのでそのまま通り過ぎました。果たして開館していたのでしょうか…。


カタクリとオオムラサキの林車で15分位進むとやはり小高い丘があり、「カタクリとオオムラサキの林」と書かれた立て看板があります。


カタクリとオオムラサキの林 展示館兼休憩所車を止めて林に入りしばらく歩くと「カタクリとオオムラサキの林 展示館兼休憩所」というロッジ風の建物を見つけます。


テラス部分が休憩所となっていて、奥が展示館のようです。展示館というよりは展示室といった広さですが、「オオムラサキ」が展示されているのでしょう。
しかし残念なことにカギがかかっていて入室できません。閉館日は年末年始と月曜日で、開館時間は10:00~となっているので本来は開館しているのでしょうが、この日は開いていませんでした。
今までにも様々なところで気まぐれ的な展示館などがいくつもありましたが、人件費の問題などにより一概に責めることもできません。
国蝶ですから一度くらいは見ておきたいもので、また、機会があれば訪れてみたいです。

展示館窓越しに中を撮影してみました。雰囲気だけですが。


西光寺そこから周辺を歩いてみますが「カタクリ」とやらが見つかりません。通りすがりの人に聞いてみるとどうやら「西光寺」の裏側に「カタクリ」が群生しているとのことなので、その「西光寺」に向かってみました。
かなり広い境内の真ん中に、それなりに歴史のありそうな重厚感ある鐘楼のある寺院です。


西光寺
所在地 比企郡小川町大字小川
西光寺は、曹洞宗に属し本尊は釈迦如来である。
開山は宗室真超、開基は端龍浄喜であり、室町時代の後期に、開創されたといわれている。
慶安2年(1649)に十石の御朱印を受けているが、寺にその申請書の控えが残されており、檀家の寄進した土地が朱印地として公認される経過が知られる。
本堂内に祀ってある閻魔様の前にある奪衣婆の像は、「しょうずかのお婆さん」と呼ばれ真綿を一かせ納めて子育ての祈願をする風習があった。
本堂東側の庭園は、裏山から湧き出す水を利用した庭で、応安元年(1368)に作られたといわれる弥陀三尊の二連板碑がある。なおこの板碑は、龍谷薬師堂の墓地にあったものを移したものである。
昭和59年3月  埼玉県 小川町』(現地案内板説明文より)

由緒ある寺院です。建物自体はどっしりしていながら古ぼけた感じはないので立て替えられたものでしょう。
西光寺本堂本堂で参拝です。本堂もまた凝ったつくりではありませんが、重厚感ある比較的大きな本堂です。

奪衣婆の像中に入ってみると、左側の壁の上に閻魔様が祀られています。その前に像が何体か置かれていますので、それらが、或いはそのうちの一つが奪衣婆の像なのでしょう。


そもそも奪衣婆とは「三途の川も金次第」の通り三途の川の渡し賃である六文銭をもたずにやってきた亡者の衣服を剥ぎ取るという老婆のことだそうで、この剥ぎ取った衣類の重さによって死後の処遇を決めるといった、亡者にとっては弱り目に祟り目にあわせるトンでもな方です。一説には閻魔大王の妻ともいわれていますが、そういった意味では良妻!、ってことになりますかね。
この奪衣婆を祀った著名な寺院として新宿区の正受院があるのですが、ここでは咳が治ると綿が奉納され奪衣婆像に綿がかぶせられることから「綿のおばば」と呼ばれているようです。
そんな奪衣婆を眺めて本堂を後にしました。残念ながら二連板碑は見忘れました。

枝垂れ桜ちょうど本堂と鐘楼の間に枝垂れ桜があります。
西光寺の枝垂桜は結構有名なそうで、大分実も膨らんでいるようです。来週か再来週には綺麗な桜が見られることでしょう。


それはそうと「カタクリ」は一体何処にと見渡すと本堂からずっと左手の駐車場の裏手が「カタクリ」の群生地らしいので行ってみます。
途中に添付されていたパンフレットには来週の日曜日(3月28日)がカタクリ祭りで、この駐車場に屋台などが出るそうです。大層賑わうのでしょうが、してみると今日はまだ見頃ではないということでしょうかね。

カタクリ群生?裏山に上がると確かに小さな可憐な、という言葉が似合いそうな紫色の「カタクリ」が咲いています。

とは言ったものの実は「カタクリ」を見るのは初めてなのです。しかもどのような花なのかも全く知りません。もしかしてこの「カタクリ」から「片栗粉」を作っていた…、なんていう浅はかなイメージしか浮かばない始末なので、「カタクリ」を調べてみました。

「カタクリ」は”スプリング・エフェメラル”=”春植物”と呼ばれている草花の一つです。他にヤマブキソウやフクジュソウなどがあるそうです。
春植物とはいかにも綺麗な総称ですが、カゲロウなどのように現れてすぐ消える短命な生き物を”エフェメラル”といい、”スプリング・エフェメラル”は春の日の夢ともいうべき生物を指す言葉でもあるようです。
「カタクリ」を例に取ると、周りの木々が葉を開く前の早春に茎や葉を地上に出して花を開いて光合成を行い、木の葉で陰になる初夏には地上部は枯れ、地下の根茎や種子で残りの季節をひっそりと暮らす花なのだそうです。
したがって他の「春に咲く花」でも花が終っても年中葉をつけている草花とは違うということで、そのはかなさと春を告げる意味合いから好まれているのかも知れませんね。

カタクリカタクリ花は下を向きながら開花し、花びらを上に持ち上げるように反らしています。実にユニークな咲き方です。
近くで見る分には非常に綺麗な、そしてキュートな花ですが、遠くから見ると確かに群生しているのでしょうが、周りの枯れ葉に囲まれているので美しさも半減といった感じです。


因みに昔はこの「カタクリ」の球根から抽出したデンプンを片栗粉として調理に用いたということなので、片栗粉の語源はやはりこの「カタクリ」のようでした。
しばしはじめての「カタクリ」を見ながら「カタクリとオオムラサキの林」を後にしました。

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