橋本弥喜智商店

㈱橋本弥喜智商店時間はPM12:30過ぎです。会の川親水公園からホンの5,6分歩くと今回の主目的の”加須の手書き鯉のぼり”のある「はしもと」の店舗に到着です。
会社名が「㈱橋本弥喜智商店」で、屋号は「はしもと」のようです。


店舗には製品名が書かれていますが、右上には「伝統工芸品」「天皇陛下」「献上鯉のぼり」とあるのですが、第一印象でみると「天皇陛下」って一体何? と思ってしまうほどインパクト強すぎです。よく見れば「天皇陛下献上鯉のぼり」だということは一目瞭然なんですがね。

その下には大きく「ここは伝統工芸士の店です」というコピーが掲示されています。
この「伝統工芸士」とは、経済産業大臣指定の伝統的工芸品の製造に従事されている技術者のなかから、(財)伝統的工芸品産業振興協会が高度の技術・技法を保持する方を「伝統工芸士」として認定しているそうです。
では遡って「伝統的工芸品」とは一体なんなんでしょうか。

これは伝統的工芸品産業の振興に関する法律に基づいて経済産業大臣により指定された伝統工芸を、行政的に「伝統的工芸品」と呼んでいるそうです。
そしてこの「伝統的工芸品」に指定される要件は以下の通りです。

1.工芸品であること。
2.主として日常生活の用に供されているもの。
3.製造過程の主要部分が手工業的であるもの。
4.伝統的技術又は技法によって製造されるもの。
5.伝統的に使用されてきた原材料を使用していること。
6.一定の地域で産地形成されていること。

以上の内容で、2007年3月現在、経済産業大臣が指定する伝統的工芸品は全国に210品あるそうです。
その内埼玉県では、①春日部桐箪笥(木工品、1979年) ②江戸木目込人形(人形、1978年)③岩槻人形(人形、2007年)の3件が指定されているそうです。

そして、先の財団の受験を合格した人だけが「伝統工芸士」と認められるのです。ただし受験資格として経済産業大臣指定伝統的工芸品の製造に現在も直接従事し、試験実施年度の4月1日現在12年以上の実務経験年数を有し、原則として産地内に居住していることが条件となっているそうです。そして平成21年2月25日現在、認定登録されている伝統工芸士は、4,580名登録されています。

しかしそうなると、”加須の手書鯉のぼり”自体が経済産業大臣が指定する伝統的工芸品に選定されていないことから、基本的に「伝統工芸士」に認定されることはないはずなのです。
そこでもう少し調べて見ると、上記の経済産業大臣指定のほかに、埼玉県が指定するものがあるそうです。
埼玉県で指定されているのは「埼玉県伝統的手工芸品」という名称で、これは県と(財)埼玉伝統工芸協会とが連携し、県内の伝統的手工芸品産業の振興を図るために指定されているものです。そして、これによって以下の各種事業を実施しているのです。
1.技術継承者育成事業 2.伝統工芸士認定事業 3.産地功労者表彰 4.伝統工芸モデル工場の指定 5.未来の伝統工芸士認定事業

以上の内容で、現在「埼玉県伝統的手工芸品」に指定されているのは、20産地の30品目です。

①-1.岩槻人形(江戸木目込人形) 2.岩槻人形(ひな人形) ②-3.日部桐箪笥 ③-4.春日部押絵羽子板 ④-5.春日部桐箱 ⑤-6.小川和紙(細川紙) ⑥-7.鴻巣雛人形 ⑦-8.手がき鯉のぼり ⑧-9.所沢人形(雛人形)、10.所沢人形(押絵羽子板) ⑨-11.秩父銘仙 ⑩-12.竹釣竿 ⑪-13.鬼瓦、14.武州磨き本瓦 ⑫-15.熊谷染(友禅)、16.熊谷染(小紋) ⑬-17.飯能大島紬 ⑭-18.越谷ひな人形、19.越谷甲冑 ⑮-20.越谷張子だるま ⑯-21.武州正藍染(武州唐棧)、22.武州正藍染(武州型染)、23.武州正藍染(武州紺織) ⑰-24.行田足袋 ⑱-25.秩父ほぐし捺染(着尺)、26.秩父ほぐし捺染(夜具地)、27.秩父ほぐし捺染(座布団地) ⑲-28.草加本染ゆかた(本染ゆかた) 、29.草加本染ゆかた(長板中型)  ⑳-30.本庄絣

そして、上記の「埼玉県伝統的手工芸品」の製造に従事している技術者のうち、高度の技術・技法を保持する者を「伝統工芸士」として認定しており、手書き鯉のぼりも2名指定されています。
認定番号5:橋本 隆(ハシモト タカシ) 手がき鯉のぼり 認定年月日 H.6. 2.18
認定番号25:橋本 勝(ハシモト マサル) 手がき鯉のぼり 認定年月日 H.6.11.22
ということで、正真正銘の「伝統工芸士」なんですね。
更に埼玉県では県内の「伝統的手工芸品」を製造している14産地24工場を「埼玉県伝統工芸モデル工場」にしていしていて、”加須の手書き鯉のぼり”も(株)橋本弥喜智商店として指定されています。

通商産業大臣指定の伝統的工芸品埼玉県知事指定の伝統的手工芸品これ等の「伝統的工芸品」や「伝統的手工芸品」はいわば国指定か県指定かということですね。
ちなみに通商産業大臣指定の伝統的工芸品の場合と埼玉県知事指定の伝統的手工芸品の場合はそれぞれマークの使用が許可されているそうです。
【左:通商産業大臣指定の伝統的工芸品マーク、右:埼玉県知事指定の伝統的手工芸品マーク】


参考:【財団法人 伝統的工芸品産業振興協会】 http://www.kougei.or.jp/
参考:【埼玉伝統工芸会館】http://www.saitamacraft.com/

更に入口には「選挙ビラ、承ります」なるポスターがずらりと貼られています。
これはよく選挙事務所で見かける「祈・必勝」とか書かれたポスターで”選挙ビラ”って言うんですね。ネットで調べると1枚5.000円くらいで販売しているところもあるようです。

いつからこのポスターが掲示されていたのかは知りませんが、加須市オフィシャルサイトを調べると選挙日程がわかります。
2009.6.14 加須市長選挙
2009.6.14 加須市議会議員補欠選挙
が先週行われたばかりで、更に2009.9.10任期満了の衆議院選挙を見据えた対応でしょうか、こんなところにも衆院解散時期の余波が来ているということでしょうかね。

そして左上にある屋号の書かれた看板は蔵風の造りと相まって、まるで「うだつ」のようにも見え、商売繁盛なのかもしれません。こういったところも伝統工芸品の歴史を醸し出す演出なのでしょうね。

さて店舗内に入ります。
所狭しと商品が置かれていると共に、テレビ、雑誌などのマスコミ取材などのパネルがたくさん掲出されています。
お店の女性の方(奥様とか?)がいらっしゃったので「見に来ただけ」の旨を話すと快く応対していただきました。しばらく店内を見ていると丁度、正面に古い写真が2枚額に入って掲示されていますが、ちょうど天皇家(昭和天皇の時代)に鯉のぼりを治める記念の写真だそうです。

天皇献上記念写真右の写真は収めた鯉のぼりを中心に当時の関係者の記念写真ですね。左の写真は「初代、橋本弥喜智」(43才)昭和9年撮影と書かれています。更に写真には初代と鯉のぼりに「皇太子殿下奉祝 献上鯉幟謹製記念」と書かれています。
【ちなみに下の写真は黄門様一行の写真だそうです】


”謹製”とは「心を込めて、謹んで作りました」という意味の謙譲語ですが、現代ではこれを敢えて製造業者の宣伝やPRの一貫として使われる場合が多いのですが、この鯉のぼりに関してはまさに正真正銘の”謹製”なんでしょうね。
皇太子殿下奉祝とあるので、現在の今上天皇の誕生を祝って「手書き鯉のぼり」が献上されたのでしょうが、当時としては大変な名誉だったのでしょう。

お店の方の説明によると、5月5日が終わるとすでに来年分の制作が始まるとのことで、かなり忙しいそうです。本書の説明にもあるように1色塗ると乾燥させ、また1色塗ると乾燥の繰り返しの為に、長いものでは3ヶ月かかるものもあるのだそうです。
顔料も最大12色使う鯉のぼりもあるとかで、確かに時間がかかるのもうなずけます。
そもそも顔料は着色に用いる粉末で水や油に溶けないものを総称したもので、大別すると、土や鉱物、或いは合成の金属化合物から作られる「無機顔料」と主に石油化学合成から作られる「有機顔料」があります。そして古代から使われてきた鉱物質の顔料を含む「無機顔料」は、隠蔽力と耐久性に優れ絵具の中心的材料と考えられていますが、特に天然の鉱物から作られる顔料比較的高価です。
ちなみに着色に用いる粉末で水や油に溶けるものは染料と呼ばれています。
この顔料で有名なのが、鉱石「ラピスラズリ」から生まれた天然ウルトラマリンの青色でしょう。フェルメールが使用したことで有名で、「真珠の耳飾りの少女」のターバンの色といえば理解できるでしょう。

店舗内お店の左手には先の5月のGWに行われた「加須のジャンボ鯉のぼり」のパネルがあります。
話によると現在の3代目の方がジャンボ鯉のぼりのデザイン・設計をされたそうです。それはやはり現在こちらの店の鯉のぼりには17種類のデザインがあるそうななのです。2代目までは3種類しかなかったそうですが、一気に5倍以上増えています。これもある意味時代の流れで、戦後モノのない時代は「10人一色」で、飽食の時代といわれる頃には「10人十色」、そして今や「1人十色」といわれているように、消費者の好みはより多様化しているのです。
そうした時代に沿ったデザインの多様化が認められたことにより、加須のジャンボ鯉のぼりのデザインに携わるのも最もな話だと思います。


店舗内のこいのぼり天井や入口付近にはその鯉のぼりが飾ってあります。


店舗内のこいのぼりのアップ近くでよく見ると丸い円が丸くなかったり、線の太さがまちまちだったり、擦れていたりと顔料での手書き故の不揃いが多く見上けられます。言い方は悪いのですが、余り綺麗ではないのです。意外とこんなものかなと思っていたのですが、実は離れた場所から全体を見ると、鮮やかな色と立体感で迫力と華麗さが出てきます。丁度、油絵を間近で見ると訳がわからないが、離れて見ると何とも美しい描写が見えるのと同じことかな、と思います。 当然、鯉のぼりも近くからより圧倒的に遠くから見るのですから、遠くから見たときにメリハリのきいた、鮮やかな、それでいてイキイキした鯉のぼりになるのかもしれません。
そのような技術があるからこそ「伝統工芸士」たる所以なのかもしれませんね。


残念ながら土曜日は職人の方たちがお休みとのことで、実際の手書きを見ることは出来ませんでしたが、材料・デザイン・技術、それらが融合しなければ良い作品は作れないのでしょう。そんな光景が見えるような気がしました。

店舗内の羽子板など店舗内の羽子板など店内には鯉のぼりのほかに、雛人形や五月人形などの様々な行事用品も販売されていました。


鯉のぼりや五月人形のミニチュア中には鯉のぼりや五月人形のミニチュアがあり、これ等も時代を反映してマンションサイズなのかも知れませんね。
かつて私の実家でも鯉のぼりをあげていた頃がありましたが、随分と遠い昔の話です。それ以来現在の我が家は女系なので、結局、鯉のぼりや五月人形には随分とご無沙汰しています。仮に男がいてもマンションでは鯉のぼり(昔のような)をあげることは不可能でしょう。様々な伝統やしきたりが風化したり環境によって左右されるような時代だからこそ、敢えてこのような「手書き鯉のぼり」を求める人が増えているのかもしれません。


参考:【橋本弥喜智商店オフィシャルサイト】 http://www.koinobori.co.jp/

プリントのお手軽な鯉のぼりも勿論結構なことですけれど、敢えてこういった「手書き鯉のぼり」が残っていくことで、日本の伝統・文化が残っているのではないでしょうかね。
「じゃんぼ鯉のぼり」共々加須のシンボルとして5月5日の節供がある限り、行き続けるのでしょうね。

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