波立海岸

国道6号線沿いの四ツ倉漁港のすぐ先にある「いわき蟹洗温泉」から、そのまま国道6号線を北上すると江之網トンネル、そして波立トンネルの二つのトンネルを抜けると道路の右側に「波立海岸」の海岸線が、そして左側に「波立寺」が見えます。
かつて3.4年前まで家内の実家はここから約15分位のところにありましたので、寺院の前はよく通ったのですが、寄ったことが無かったので今回が始めての参詣となりました。

波立寺

寺号標寺の駐車場の目の前が境内で、寺号標と由緒書きがあります。


波立薬師(はったちやくし)
臨済宗妙心寺派医王山 波立寺(はりゅうじ)
薬師如来を本尊とする当山は大同元年、徳一大師の開基にて海中より出現の霊像なりと伝う、十方の信仰篤く、安産、厄除、無病息災はもとより特に海に縁因あるところから海上鎮めの守護として海上安全大漁祈願の信仰が多い。
仁王門、庫裏、その他の建造物は文明年間、磐城平城主親隆公の寄進によって造営せられ、其の後全城主代々の祈願所と定められ、内藤公に至って大修理を行い、陰暦6月14,15日の縁日には家老を差遣して法要を営弁せしめたのである。
如之慶安2年には三代将軍家光公御朱印を下し国土安泰、万民豊楽の鎮護道場とせる霊刹なり。』(現地由来書より)

地名や「波立薬師」など通常「波立」はこのあたりでは”はったち”と読むのですが、「波立寺」という場合だけ”はりゅう”になるのです。なんとなく”はったち”の方が響きがいいからでしょうかね?
さて、この「波立寺」は「波立薬師」として閼伽井嶽薬師、八茎薬師とともに、いわき三大薬師として古くから信仰を集めているそうで、 この「薬師信仰」についても説明があります。

薬師信仰
薬師如来は東方の浄瑠璃世界に住む医王仏で、正しくは薬師瑠璃光如来という。無病長寿を与え霊力ありとして広く信仰され、諸縁吉祥にして生活全般に利益をもたらす仏という性格を持っている。
「オンコロコロ センダリ マトウギソワカ」
というのが御薬師さんの真言であり称えると、身も心も安らかに生活を豊かに願い事を叶えてくれる身近な仏として古来より人々から親しまれており、ここには霊験あらたかな薬師如来が祀られている。』(現地案内板より)

「東方の浄瑠璃世界」といわれても関東の浄瑠璃人形の盛んな処?…のようにばかげた連想しか出来ない私が情けないのですが、簡単に言ってしまえば所謂”浄土”で阿弥陀如来が西方の極楽浄土なら、薬師如来は東方の…というようにパブロフの犬的に覚えておけばよろしいでしょう。
そしてこの薬師如来は文字通り医薬を司る仏で、菩薩の頃(って、これもわかりにくいが…)に立てた大願の一つに「病のものも私の名前を聞けば患いが除かれる」という無病息災が薬師信仰の根拠となっているようです。
そしてその真言(真実の言葉の意味らしい)を称えればたちどころに…といったとことでしょう。
そういった信仰の篤さもあって、時の城主にも庇護されて古くから栄華を誇った寺院といえるのでしょうね。

由緒書きの反対側にも案内板があります。

『県指定天然記念物 波立海岸の樹叢
指定 昭和31年9月4日 所有者 波立寺
この一帯の海岸丘陵は波立山といわれ、波立薬師堂はその北麓にある。
この薬師堂境内及び丘陵の樹叢は、本県の太平洋沿岸では最も自然な状態で保護されている。
生育している草木は暖地性のものが多く、クロマツ、シイ、タブ、モチノキ、ヤブツバキなどを主とし、その下にヤツデ、トベラ、ヒサカキなどの常緑樹をもち、林床にはツワブキが多い。ことにシイ、ヤツデ、ツワブキなどは、日本のほぼ北限の産地である。
典型的な海岸樹叢として、価値が高い。いわき市教育委員会』(現地案内板より)

波立海岸の樹叢まるで、防風林のようにずっとつながっており、かなり壮観です。


「無事カエル」像案内板の隣には石のかえる像があります。交通安全を祈願する「無事カエル」像だそうです。
国道6号線の来る時に抜けてきた波立トンネルは、内部や出入り口に見通しの悪いカーブが多く正面衝突がかつて多発していたそうです。
そんなこともあってこの「波立寺」に交通安全祈願があるのでしょう。


仁王門そしてその隣に文明年間といいますから、1469年~1486年にかけてまさに室町時代に寄進された仁王門があります。
現在の仁王門が当時のままのものだとは思えませんが、由緒ある仁王門ということです。


仁王像・吽仁王像・阿門の脚部分には迫力ある仁王像が…
これだけユニークな仁王像もはじめてみました。一応「阿・吽」ではあります。


両津勘吉タイプの仁王像なら【名栗湖と鳥居観音】の子の権現でも見ましたが、これだけキャラ入っている仁王像は初めてです。
しかもスリムですし、何はともあれ必見です。

本堂仁王門を抜けると本堂です。
大きさは控えめながら赤色が存在を主張しているかの建物です。


庫裏参詣を済ませてから本堂の裏手のほうに行ってみますと、こちらにも文明年間の庫裏があります。
門構えなどに歴史的な雰囲気があります。


波立海岸の樹叢左手が件の「波立海岸の樹叢」です。中に入れる階段があるので行ってみます。


波立海岸の樹叢山神樹叢の中は鬱蒼としていて、まるでジャングルのようです。
一部分小川が流れていて、そこに「山神」と書かれた賽銭箱と豚のような置物が置かれています。
何か意味するところがあるのでしょうか?


ここを抜けると再び本堂の真裏となり、これにて「波立寺」を出ることにしました。
次はすぐ近くの「弁天島」に向かいます。

波立海岸弁天島

「弁天島」は国道6号線をはさんで「波立寺」の反対側の波立海岸にある小島です。
海に突き出た弁天島と朱塗りの橋がシンボルで、毎年初日の出には大勢の人が詰め掛ける観光スポットです。

波立トンネルと歩道橋前述したように「波立トンネル」の前は非常に交通事故の多いところなので、ループ状の歩道橋がかけられています。
歩道橋をあがる階段の踊り場に「告」の立て札があります。



古来よりここの海岸の玉砂利を持ちかえると薬師如来の御威光にふれ眼病を患うと言伝えられている。波立薬師』(立て札より)

これ以上、眼病が悪化するということは失明の危機とも考えられるので、努々持ち帰ろうなどと考えることはありません、誓って。

歩道用トンネル江之網の海岸ちょうど歩道橋をわたり切ったところに「波立トンネル」の歩行者用のトンネルがあります。
吸い寄せられるように歩行者用のトンネルを歩くと、昼なお薄暗い、的な雰囲気を味わいながら先に抜けると、更に「江之網トンネル」の歩行者用トンネルがあり、それを抜けると又綺麗な海岸を見ることが出来ました。
で、あくまで生活用トンネルで特別な意味は無いようです。


波立海岸戻ってくると波立海岸が綺麗に見えます。


殿上山遠く突き出た島が「殿上山」というそうで、室町時代には新妻式部太輔という武士が館を構えていたのですが、岩城氏に攻められ陥落した処です。
その陥落間際に「殿上山」から海に身を投げたという伝説上の姫の心情を詠んだ句碑が建てられているそうです。


弁天島一旦海岸に下りてから弁天島に向かいます。


オブジェ?朱塗りの橋の手前からコンクリートで整地された道がありますが、そこにあるわざとらしい石の数々はオブジェか何かなのでしょうか。


弁天橋朱塗りの橋は当然ながら「弁天橋」という名前で、結構この日は波があったので一部橋の上まで波があがって来ていました。


弁天島七福神「弁天橋」を渡り終えるといよいよ「弁天島」です。
ここにはちょう太平洋に向かった方角で、下のほうに七福神が立てられています。
上には稲荷、龍神、風神と雷神などが祀ってあり、初日の出を拝みながら一年の計を立てるにはうってつけの場所でしょうね。


鰐が渕島の北方向には鳥居とごつごつした岩礁が奇妙なアンバランスで一つの風景を形作っていますが、これが「鰐が渕」と呼ばれる所以の光景のようです。
そもそも「鰐が渕」と呼ばれるようになったのも、人食い鮫の伝説によるものらしいです。


当然のことながら、昔々、この波立海岸の近くに一人娘を持つお坊さんが住んでいたそうです。
ある日のこと、この娘が海岸で遊んでいると、強大なワニザメに込みこまれてしまいました。お坊さんは大変悲しんだのですが、その悲しみがいつしか憎しみへと変わり、娘の仇打ちと、そのワニザメを探し回りました。
そしてついに憎きワニザメを見つけ、毒矢をワニザメに突き刺したそうです。
そしてワニザメは苦しみにもだえ、海面は朱に染まり、大風が吹き荒れ波は荒れ狂って弁天島に打ち寄せた波は水しぶきとなって島全体を覆い、ワニザメは悶えながら海中に沈んでいったそうです。
その光景がこの奇岩にそっくりなので「鰐が渕」と呼ばれるようになったという伝説です。

確かに「鰐」の身体に見えないことも無い奇岩です。
近くで見ると実に荒々しい弁天島ですが、遠景は実に優雅な光景です。この辺りが魅力の一つかもしれません。 初日の出は拝むことはできませんが、今度は夕日くらい見ても良いかもしれません。
こうして最初の散策、「波立寺」と「弁天島」、そして「四ツ倉・波立海岸」をあとにしました。

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コメント

  1. 佐藤康人 | Zo4JuKdQ

    波立薬師 木造薬師如来懸仏 

    小生、リタイヤ後、ささやかなアート作品製作を楽しみにしています。
    シルバー人材のバイトで知り合ったST氏から波立薬師像を作ってくれ、と頼まれたのです。訳も分からず1体作ったものの、その後確かな情報を得ようと「いわき市」市役所に問い合わせました。
    波立薬師(木造薬師如来懸仏)の画像の入った資料をメールをもらい、写しを製作しました。オリジナルは傷みが進んでいるのでアレンジするしかありません。
    計4体のバリエーションになりました。
    上記HP「2.1D Art Work」のフィギュアのページです。
    ST氏の産まれはいわき市、カテーテル手術に際して波立薬師を想い出したようです。
    ST氏は波立薬師像の写しを縁者に渡したいそうでその手段を探っています。
    素朴な像なので製作は比較的容易です、また写真パネルだと簡単です。
    尚、言うまでもなく、金銭目的ではありません。

    ( 01:51 [Edit] )

  2. 薄荷脳70 | -

    佐藤康人さん、ありがとうございます。 

    佐藤様、書き込みありがとうございます。ご返事が遅くなって申し訳ありません。
    早速HP見させていただきました。カラフルでモダンでありながら、どことなくホッとするような趣が素敵です。
    4つちょっとずつお顔が違うのも、味わい深いところですね。とっても素敵なご趣味を持たれていて素晴らしいです。
    今後とも、宜しくお願い致します。

    ( 18:30 )

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