草間彌生

さすがに美術館のある公園で、公園自体も実にアカデミックな造作となっています。
行ったことはないのですが、箱根彫刻の森美術館などもオープンエアで気持ちよいのでしょうね。

近代美術館 屋外彫刻

彫刻広場からは美術館の周辺を散策します。
美術館の周辺にもたくさんの彫刻が置かれていて、初めての私にとっては“Tバード秘密基地”のようです。

美術館横の通路側には幾つかの彫刻が集まっています。
この蟻のようなオブジェは《果実の中の木もれ陽》というタイトルで、上尾市在住の橋本真之の作品です。
《果実の中の木もれ陽》
タイトルにあるように、このオブジェ単体ではなく、周囲の木々とともにセットであることが重要なようです。
しかも面白いのは、この作品は1985年から制作が開始され、今なお成長を続けているというユニークな作品なのです。 つまり当初の彫刻が、その後の2度の増殖制作で大きさも最初の2倍になったのだそうで、それは金属をハンマーで叩き、延ばして形を整える鍛金という技法によって可能になったのだそうです。
これからも増殖作業が続けられると面白いですね。

そしてその隣の木立の中にあるのが《風景の外側》というタイトルで、植え込みの中で一体となっているので見逃しそうな作品です。
《風景の外側》
この作品はさいたま市の大宮第2公園近くに自宅兼美術館を構える作家、重村三雄の作品です。
樹木の中の樹木という、ある意味騙し的な作品とも言えるのかもしれません。

その左側の美術館の建物と庭園の隙間に何か“柱”のようなものが斜めに立っています。更にそのまま上を見ると、「おやっ」とする“梁”が出っ張っています。
《ドッキング(表面)No.86-1985》 《ドッキング(表面)No.86-1985》
黒川紀章の設計に唾する行為か、などと騒いではいけないようで、これはれっきとした作品なのだそうです。
タイトルは《ドッキング(表面)No.86-1985》で、田中米吉の作品で、第10回現代日本彫刻展 埼玉県立近代美術館賞を受賞しています。
《ドッキング(表面)No.86-1985》
要するに建造物にドッキングさせるというのがコンセプトのようです。解説では『この建築物に「水平垂直を切り裂く程の鋭角的あるいは危機的な構成で、環境に衝撃的なインパクトを与える異空間」が付加されたのです。』ということですが、インパクトはありますね、確かに。。。

再び地上に戻って、その先にあるのが《ゆっくりと起き上がる精神の集積》というタイトルの作品です。
《ゆっくりと起き上がる精神の集積》
高岡典男の作品ですが、これは特に解説がないので全く解釈不能です。
「勝手に解釈しなさい」という、これがアートというものなのでしょう、きっと。。。

その後に、コンクリート塀が立っている一角に2基のオブジェがあります。
旧制浦和高等学校同窓会
その塀にはプレートがはめ込まれています。

武蔵野の一角に、1922年から1950年にかけて旧制浦和高等学校のキャンパスがあった。憶い出の地に、しかも母校開校60周年記念祭と同じ月に誕生した埼玉県立近代美術館の前途を祝福し、彫刻「風の中の鴉」及び「道標 鳩」(柳原義達作)を贈る。
1982年11月7日
旧制浦和高等学校同窓会
(現地プレート文より

この旧制浦和高等学校とは、現在ある(6・3・3・4制による新制)浦和高等学校ではなく、新制に移行する際に現在の埼玉大学に包括された高等学校のことです。 旧制も新制も埼玉県を代表する名門校ですね。
さてオブジェですが、こちらが《鴉》で、こちらが《鳩》です。
「風の中の鴉」 「道標 鳩」
不吉な象徴である漆黒の「鴉」、そして平和のシンボルである純白の「鳩」、“白黒付けよう”という意味ではないでしょうが、この2基のオブジェの意図するところは何なのでしょう。 最も鴉が不吉であるということは、偏にそのカラーによるもので、本来は頭の良い鳥なのですが誤解が解けないところがつらいところです。
そういっても、この対となった鴉と鳩の意味がわかりませんね。それとも対では無く、それぞれ単体での表現なのでしょうか・・・。

その手前にある“MTV”のロゴのようなオブジェが《流水の門》です。
《流水の門》
橋本省の作品で、これも第11回現代日本彫刻展 埼玉県立近代美術館賞を受賞した作品だそうですが、作品の意味は判りません。
タイトルのままと考えれば良いのでしょう。

そして近代美術館の正面に来ました。
埼玉県立近代美術館
流石に黒川紀章の設計だけあって奇抜なことだけは素人でも理解できます。
エントランスの横には大きな横になった女性の彫刻がありますが、文字通り《横たわる人物》というオブジェです。
《横たわる人物》
コロンビア出身の彫刻家、フェルナンド・ボテロの1984年の作品です。
ボテロの作品は、モチーフとなったものすべてをまるまると太らせてしまう独特の作風を持っているのだそうです。手に持ったリンゴからエデンの園のイヴの姿を風刺したものだそうですが、イヴを風刺する必要があるのでしょうかねえ。

その先にはアンテナのような彫刻があります。《Cycle-90°》という作品です。
《Cycle-90°》
これも第16回現代日本彫刻展の埼玉県立近代美術館賞を受賞した松本薫のオブジェです。
特に解説はないのですが、意外とこの手のオブジェは何らかしら見たことがあるような感じの物で、何となく素人にはなじみ易い彫刻です。
幾つかは、良く判らずしまいのものもありましたが、非常に多くの彫刻が展示されていて、素人の私でも少しは彫刻に興味を持てるようになりました。

永遠の永遠の永遠

いよいよここからが今回の目的である「草間彌生」展です。
早速、美術館に向いますが、エントランスには既にその作品が展示されています。
《新たなる空間への道標》
瓢箪のような形の赤字に白丸の水玉模様のオブジェがあり、今までの野外彫刻とは打って変わって非常にインパクトのある作品です。
これは今回の展示会を通じて、或いはすべての展示会のコンセプトなのかもしれませんが、《新たなる空間への道標》とあるので、今回の展示会の文字通りのイントロダクションと捉えられるものではないでしょうかね。
そして自動ドアのガラス面にも赤い水玉が、まさにこれが草間ワールドなのでしょう。
《新たなる空間への道標》
以前、ブログ“お父さんの旅”で見た写真もバスがこの水玉になっていましたから。

そして美術館に入ると、またまたこのオブジェですが、今度は床面にもシートが貼られています。
《新たなる空間への道標》 《新たなる空間への道標》 《新たなる空間への道標》
ここまで来ると何となくワクワクしてきます。
因みに、今回の展示会では彫刻関連だけは、フラッシュ、三脚無しで写真撮影が許可されています。

カウンターで1,000円のチケットを購入します。
チケット
チケット売場の後に別なオブジェが展示されています。これは《明日咲く花》というタイトルで、巨大オブジェのひとつなのです。
《明日咲く花》
今回の展示では幾つかの巨大オブジェがあり、それらは総称して「幸福の彫刻たち」と呼んでます。これらは1990年代に制作が始まったFRP(繊維強化プラスティック)とウレタン塗装によるものなのだそうです。
それにしても度肝を抜かれるかのようなオブジェに言葉も出ないほどです。
《明日咲く花》 《明日咲く花》
やはりベースが赤の水玉になっているのがコンセプトなのでしょうが、逆に赤の水玉によってホッとするという効果もあるようです、私には。。。

更に奥に進むと突如として人形のオブジェが現れます。
《ヤヨイちゃん》
これも今回の彫刻のひとつでタイトルはそのまんま《ヤヨイちゃん》です。
この部分は地階から3階までの吹き抜けとなっていて、そこに吊り下げられているのです。したがってここは1階のフロアなので、丁度正面から見た形になります。

地階ではビデオ上映をしていますので行ってみます。
ビデオ上映
展示会関連の映像を放映していて、草間彌生と展示会の概要がわかります。
ここで少しプロフィールを確認してみます。何にしても私にとっては初めて知ったアーティストですから。

草間彌生 永遠の永遠の永遠
世界的にますます評価が高まる草間彌生の、最新の創作活動を紹介します。半世紀以上にわたって、水玉や網目の作品を作り続けてきた草間は、2009年から驚異的な創作意欲を傾け、新たな絵画シリーズ「わが永遠の魂」にとりくみ始めました。自由奔放なイメージと色彩があふれだし、無限の宇宙まで感じさせる、これまでに見たこともない作品群となりました。
この新作と対照的なのが、「愛はとこしえ」の連作です。草間が2004年から3年間で描き上げたモノクロ作品は、無限に湧き出る連鎖的なイメージを、魔法のような筆使いで描き出したものです。さらにこの展覧会で初公開となる《大いなる巨大な南瓜》や《明日咲く花》等の彫刻や、光と水と鏡による部屋《魂の灯》など、草間彌生の世界を体感していただけます。
いつまでも進化し続ける草間彌生と言う芸術家の最先端の挑戦をぜひ御堪能ください。

●草間彌生●
1929年、長野県松本市生まれ。
10歳の頃より水玉と網模様をモチーフに幻想的な絵画を制作。57年渡米、巨大な平面作品、ソフトスカルプチャー、鏡や電飾を使った環境彫刻を発表する。
美術作品の制作発表を続けながら、小説、詩集も多数発表。
2009年文化功労者に選定される。11年5月より大規模な海外巡回展を開催中。
(パンフレットより)

もう少し角度を変えると、創作活動の原点に触れられるようです。
ウィキによれば、草間彌生は長野県松本市松本駅近くで種苗業を営む裕福な家に生まれ、幼いころから草花やスケッチに親しんでいたのです。しかしその一方で少女時代から統合失調症(医学博士西丸四方が診断)を病み、繰り返し襲ってくる幻覚や幻聴から逃れるために、それらの幻覚や幻聴を描きとめる絵を描き始め、それが水玉(ドット)をモチーフにすることになった理由なのだそうです。
つまり、これは耳なし芳一が幽霊から身を守るために全身を経で埋め尽くしたように、彼女が恐怖する幻覚や幻聴から身を守るために全身をドットで埋め尽くすことによって、その恐怖から逃れることができると考えたからなのです。
このような意味で、この“水玉”は草間彌生にとって非常に重要なコンセプトといえる訳なのです。
この地階からは先の《ヤヨイちゃん》がこのように見ることができます。
《ヤヨイちゃん》
これが本来、身を守るドットという意味なのかもしれません。

少し理解できたところで、展示室に向かいます。
展示室は2階になっているので、地階から階段で2階にあがりますが、途中の踊り場の窓ガラスもそのドット柄になっています。
ドット
2階に上がったエレベーターホールの前と壁面が《新たなる空間への道標》となっています。
《新たなる空間への道標》
そして2階からも《ヤヨイちゃん》を見ることがですます。
《ヤヨイちゃん》
これもまた随分と巨大なものです。

さてここからが企画展示室となります。
企画展示室
展示室に入ると、かなりの枚数の作品が展示されています。
最初のコーナーには先に説明のあった新作「わが永遠の魂」が展示されています。 このシリーズは現時点で140点を超えているそうで、現在も日々制作が続いていて、今回は47点展示されています。
こんなことを言っては何ですが、どのような視点で捉えればよいのか自体がわかりません。
抽象画に見えるのですが、何となくスピリチュアルなイメージもあるようで、それでいてペイズリーが一杯的な面もあるし・・・、とにかくこう言ったアートに触れられたことに意義を見出しましょう。

このコーナーの奥には前述された《大いなる巨大な南瓜》が展示されています。
《大いなる巨大な南瓜》
カボチャは作者のシンボルとなっているそうですが、個人的にお好きなのでしょうか。
私、個人的にカボチャはダメなのです。あまり好き嫌いのあるほうでは無いのですが、ダメなのです、食べられません。。。
そんなことはどうでもよく、カボチャもまたドット柄というのがワールドです。

隣のコーナーにもまた「わが永遠の魂」が展示されていますが、一画に「愛はとこしえ」が展示されています。
この「愛はとこしえ」は2004年~2007年にかけて制作された50点からなる絵画シリーズです。
説明によれば、展示作品はカンヴァスにマーカーペンで描かれた原画を、シルクスクリーン技法で転写した版画バージョンなのだそうです。それまでの水玉と網目模様のイメージから変化し、幻想の世界から現れる様々な顔や生物を即興的な線だけで描いた画期的作品なのです。
このあたりも多少は統合失調症に関係するのでしょうか。
まあ、このように記述しても理解できないと思いますので、ホンのちょっとだけパンフレットの作品をスキャンしてみました。
「わが永遠の魂」 「愛はとこしえ」 《左:わが永遠の魂、右:愛はとこしえ》
※著作権に問題あるようでしたら削除いたします。
という事で、ホンのさわりだけですがイメージはお解りいただけたでしょうか。
最も草間彌生のオフィシャルサイト、及び展覧会のオフィシャルサイトを見られれば作品の一部が掲載されていますので、そちらを参考にされたほうが良いでしょう。

参考:
草間彌生オフィシャルサイト】http://www.yayoi-kusama.jp/
asahi.com】http://www.asahi.com/kusama/

そして「わが永遠の魂」と「愛はとこしえ」の間に3点だけ趣の違う作品が展示されています。 これは“新作ポートレート”で、この展示会に向けて制作した最新作です。
トレードマークの水玉模様で埋め尽くされた中に、三人の女性が描かれているのですが、当然自画像です。
その中でも《神をみつめていたわたし》は、文字通りその目に宿る“何か”を感じましたといったらわざとらしいでしょうか。でも何か他の2点にはない“すごみ”的なものを感じたのでしたが、自分のことながら、それが最後まで何なのかはわからずじまいでした。

そしてこのコーナーの終わりに大きなボックス、部屋・・・? があります。
これは《魂の灯》という作品で、これも幸福の彫刻たちの一つですが撮影は禁止です。
これもまた見なければ判りませんが、何故かYouTubeにアップされていますので参考にされると良いですが、なぜこのようなものがアップできるのでしょうね。

そしてここから最後のコーナーとなりますが、それがこちらの《チューリップに愛をこめて、永遠に祈る》で、幸福の彫刻たちの最後の作品です。
《チューリップに愛をこめて、永遠に祈る》
まさに愛だらけのチューリップで、3つのチューリップがなかなか個性的です。
《チューリップに愛をこめて、永遠に祈る》 《チューリップに愛をこめて、永遠に祈る》 《チューリップに愛をこめて、永遠に祈る》
個性的といえばこの中で思い思いに写真を撮っている方を見ていると千差万別、なにか非常にユーモラスです。
《チューリップに愛をこめて、永遠に祈る》
最後の水玉をじっくり堪能して展示会を後にしましたが、兎にも角にもはじめて見た“草間ワールド”は哲学や心理学、そして宗教観などを混ぜ合わせて社会に投げかけられた人生観のような、非常にインパクトあるものでした。
《新たなる空間への道標》

この展覧会は、先に1月~4月まで大阪で開催され、現在埼玉の展覧会が終了しました。
この後は7月~11月までが地元長野県松本市で、11月~12月まで新潟市を巡回するそうですから、近くの方には良い機会でしょう。
たまには非日常的なアートに触れるのも良い経験です。

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