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埼玉県立近代美術館

メインイベントの展覧会を見てからは、再び美術館の展示を見て廻ります。
先ほどまでは野外彫刻でしたが、ここからは常設展と館内彫刻を見学します。

MOMASコレクション

常設展は通常入館料200円なのですが、企画展の入場料を支払った人はそのまま見学できるそうです。
この美術館では、常設展のことを埼玉県立近代美術館(The Museum of Modern Art, Saitama)の頭文字をとって「MOMAS」コレクションと呼んでいます。これは常設展でありながら企画性の高い展示を行うからで、現実に以下の内容の展示は7月までと期限が切られているのです。
MOMASコレクション MOMASコレクション
ここでは現在4つのテーマで展示されています。

1.草間彌生-works 1951-1975
この近代美術館では今回の展覧会とは別に、草間彌生の作品を12点所蔵しているのだそうです。
タイトルにあるとおり1950年代のドローイングから、1960年代の油彩画・彫刻、そして1970年代のコラージュまでを所蔵しています。 脚立やスーツケース、更に意外なことに携帯電話までデザインされているようです。
《スーツケース:(C)埼玉県立近代美術館》 《スーツケース:(C)埼玉県立近代美術館》
これは60年代の作品で、絵画で確立した網目の様式を立体物に展開した作品で、ミラノの個展のために作成した2点のうちの1点で、ヨーロッパで作り出された貴重なものなのだそうです。
今回の展示は7月までですが、所蔵しているのでまた見られる機会もあるということです。それにしても今回初めて作家自体を知ったので無理も無いことですが、実に身近なところに作品があったのですね。
プチ余韻のようでしたが、結構感動的な気分でした。

2.アーティスト・プロジェクト:ゴトウ・シュウ コズミックな織物-磁場・波動そして生命の色彩
よくわからないのですが、解説によると『グラフィック・デザインから絵画に転身し、周密な画面にスプラッシュによる偶然性を取り入れて独自の重層的な表現を展開してきたゴトウ・シュウの絵画世界を紹介します。』ということです。
それでも意外と嫌いではない、というより好きな作風です。
抽象画っぽいのですが、整然として規則性のある展開が、何となく感性にあうような気がしました。

3.モダン・タイムス―近代の絵画
これはフランスの近代絵画と明治以降の日本の油彩作品を融合させた絵画展示だそうです。
意外と違和感無いかもしれません。
出品作家:ドラクロワ、モネ、ルノワール、ドニ、和田英作、斎藤豊作、ピカソ、森田恒友、ユトリロ、パスキン、フジタ、キスリング、林 倭衛

4.版の表現―その多様な世界
版画家による様々な技法の紹介といったところでしょう。

日常自堕落な生活を送っている私には、こう言ったアカデミックな雰囲気もたまには刺激になって良いものです。
さて、ここで知ったのですが、館内にも彫刻が展示されているようです。
確かに、あの吹き抜けの空間にも「ヤヨイちゃん」に気を取られてはっきり気がつかなかったのですが、彫刻があったのだそうです。
ということで、ここからは館内の彫刻を見学してみます。

近代美術館 屋内彫刻

MOMASコレクションの展示室の横から、屋外展示室に出られるとのことなので行ってみることにしました。確かに屋外なのですが、美術館のテラスといった所で、外からは入れないようです。
最初の作品は《静の旋律No.31》で、鹿間厚次郎の作品で特に解説はありませんが、1986年、10回神戸須磨離宮公園現代彫刻展 埼玉県立近代美術館賞受賞を受賞した作品なのです。
《静の旋律No.31》
マンボNo.5やシャネルNo.5と同じような意味・・・、なわけないですよね。

隣にあるのが《NEGATIVE BALL》という作品で、志水晴児の作品です。
《NEGATIVE BALL》
これについても解説不詳です。
ハート、あるいはリンゴ、いずれにしてもポジティブでは無いっていうことでしょうか。

更にその左手にあるのが《Cante del sole 太陽の歌》という明るいイメージの作品です。
《Cante del sole 太陽の歌》
解説がありませんが、文字通りいくつかの輪が歌を表しているではないでしょうか。
堀越陽子の作品で、1987年、第12回現代日本彫刻展 埼玉県立近代美術館賞を受賞したものです。

そしてその後に、というより申し訳ないことに最初は作品とは気が付かなかった彫刻がこれ《空の柱》です。
《空の柱》
ただの“棒”にしか見えない作品なのですが、さいたま市(旧大宮市)出身の関根伸夫の作品で、関根伸夫は1968年の第1回須磨離宮公園現代彫刻展での「位相ー大地」という作品が、戦後日本美術の記念碑的作品として海外でも広く知られている著名なアーティストで、1970年のベニスビエンナーレの日本代表アーティストとして発表した「空相」でセンセーションを巻き起こし、現在、デンマーク・ルイジアナ美術館の永久所蔵作品「関根伸夫コーナー」があるくらい著名なアーティストのようです。
権威に弱い私としては、“棒”等と言ったことに深く反省をしているしだいで・・・。

そして屋外展示室の最後の作品が《階段》で、作者は重村三雄です。
《階段》
文字通り階段には3人の女性の彫刻があります。
結構リアルな造りなのですが、それもそのはずで、これは人体から直に型取りして強化プラスチックで成形する「カタメタージュ」(洒落ではありません、本気です)という技法なのだそうです。
実に制法も題材もユニークな作品といえるでしょうね。

さてここからは、もう一度見逃した館内の作品を見に行きます。
まずはその吹き抜けに向かうのですが、チケット売り場の隣のロッカールームにも何かあるようなので行ってみました。
ロッカールームですから、何があるわけでもと見ると、正面のロッカーの一つが光っています。
《Number of Time in Coin-Locker》
近くから見るとデジタル数字のLEDが光っているようです。
《Number of Time in Coin-Locker》
これはこれで立派な作品なのだそうで《Number of Time in Coin-Locker》というタイトルで、宮島達男の作品です。
作者は発光ダイオードによる作品で著名なようです。
この作品は公募した150人の埼玉県民が、デジタルカウンターをそれぞれ自分の好きな速度に設定したものだそうで、裏面には設定した人のサインが記載されているそうです。
何か閃くところがあるのでしょうね、作家の頭の中で。

吹き抜けに再び行くと三方に彫刻が展示されています。 人物なので、彫刻というより縁の人の像かと思っていました。
中央にあるのが《枢機卿》という作品で、ジャコモ・マンズという作家の彫刻です。
《枢機卿》
枢機卿とはカトリック教会の上級の聖職者のことで、彼等が互選によってローマ教皇を選出する務めを持っている人たちです。
その枢機卿をシンプルな三角錐で纏め上げたところが、枢機卿のもつ宗教的な厳粛さを強めているのだそうです。

左手にあるのは《ダミアン神父像》で、舟越保武の作品です。
《ダミアン神父像》
かなりインパクトの強い作品のように見えます。

舟越保武 1912(大正1)-2002(平成14)
東京美術学校彫刻科卒業。新制作派協会彫刻部の創立に参加。カトリック教の信者で、具象彫刻の優美で清楚な作風で知られる。また日本では数少ない大理石彫刻家として特異な存在でもある。代表作に《二十六聖人殉教者像》、《原の城》などがある。

■《ダミアン神父像》とハンセン病
彫刻家、舟越保武氏はクリスチャンでもあるが、この像はハンセン病患者救済に献身的な働きをして倒れたダミアン神父(1840-1889)の行為を顕彰する意味で制作された作品である。
ベルギー人、ダミアン神父はカトリック宣教団の一人として、1864年、ハワイ諸島に渡った。そこでモロカイ島の僻地に封じ込まれていた多くのハンセン病患者のことを知り、私財を投じて聖堂や病舎を建て、また、ハワイ政府に援助を働きかけるなど救済のため積極的に献身した。そしてついに自らもハンセン病に倒れて亡くなった。
その像は、神父の死の直前に撮られた写真を手がかりに制作されたといわれている。

■ハンセン病について(偏見と差別をなくすために)
ハンセン病は細菌による感染症の一つであるが、たとえ感染してもきわめて発病しにくい皮膚及び末梢神経などの疾患である。治療らしい治療がなかった時代には、このダミアン神父像に見られるような結節を、顔面や手足に多発することもあった。また、後遺症による様々な変形を残すこともあるために、いわれのない偏見を持たれてきた経緯があった。
しかし、化学療法の進歩した今日では、早期に発見され、早期に治療されれば、この像に見られるような姿になることはなく、わずか数日のうちに菌は感染力を失い、半年から2年以内に大多数は完全に治癒する。
1999年4月現在、わが国では約4,800人の方々がハンセン病療養所に入所しているが、その平均年齢は72.8歳と高齢化し、感染源となることはない。また、この数年に新たに発生した患者は数名以下である。
埼玉県立近代美術館
(現地案内板より)

実に強烈なメッセージを発しているかのような彫刻です。
かつて私も好きで見たハリウッド映画「ベン・ハー」では“ライ病”として描かれていましたが、現在は差別用語としてハンセン病というのだそうです。まあ、元々ハンセン病の原因となる細菌が“らい菌”であったからのようです。 既に50年以上前の映画ですから、そのような配慮がなかったことも仕方ないことですが、この映画などによってより差別的に見られるようになったのかもしれません。 私も中学生のときに始めてみたときには、隔離の必要な不治の病という印象を持ちましたから。
しかしながら、差別的な扱いも当然いけないことですが、以前、仕事の関係で難病の子供達と接してからは、治療できる病気はまだましなのかな、と思ったりしています。
せめて我々のできることは、偏見や差別の無い社会を作っていくことだと言えるのかもしれません。

最後の一つが《マグダラのマリア》です。
《マグダラのマリア》
ヴェナンツォ・クロチェッティというイタリアの作家です。
罪を悔い改めるマグダラのマリアは、顔をおおい、風に髪をなびかせてはげしく泣いているのだそうです。
現在ではマグダラのマリアについては諸説あるようですが、やはりキリスト教美術では懺悔のシンボルとなるようです。
非常に高貴な香りのする吹き抜けの彫刻でした。

最後に3階に上がって外から見た《ドッキング(表面)No.86-1985》を見ておきます。
《ドッキング(表面)No.86-1985》
ガラスを突き抜けた印象的なつくりです。
まあ、よくここまで創造するのもだと、改めて感心してしまいました。

以上で、この近代美術館の彫刻を見てきたのですが、気が付いたことは基本的に「現代日本彫刻展」の“埼玉県立近代美術館賞”を受賞した作品が主力となっているようです。
そこで現代日本彫刻展について調べてみたところ、この“現代日本彫刻展”は1965(昭和40)年に宇部市野外彫刻美術館で始まったもののようです。

現代日本彫刻展は、現代彫刻の可能性を切り開くこと、都市空間と彫刻との関係を追求することを目的に、山口県宇部市で開催されている展覧会で、野外彫刻に「まちづくり」の視点を導入した企画としては国内初のものだとされています。
 歴史を遡ると、この彫刻事業は、戦後の荒廃した生活空間を住みよいものへと変えていくための緑化事業や花いっぱい運動から派生し「自然と人間の接点として芸術を」という市民提言を基に、1961年に「宇部市野外彫刻展」を開催。1963年の「全国彫刻コンクール応募展」を経て、1965年からは「現代日本彫刻展」と名を変えて、二年に一度、ビエンナーレ形式で開催しています。野外彫刻は、美術分野の中でも、特に社会の動きと密接に結びついているため、この彫刻展の展開には、日本の社会・経済の歴史が反映されています。
(「ときわミュージアム」オフィシャルサイトより)

現在では、第24回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)が2011年9月~11月まで開催されたのが最新です。
そしてその中の賞のひとつとして“埼玉県立近代美術館賞”が設定されていたのですが、設定されていたのは1983年の第10回から1997年の第17回までのようです。
受賞作品を一覧にしてみます。

第10回現代日本彫刻展(1983):田中米吉「ドッキング(表面)No.85」
第11回現代日本彫刻展(1985):橋本省 「流水の門」
第12回現代日本彫刻展(1987):堀越陽子「Cante del sole 太陽の歌」
第13回現代日本彫刻展(1989):松本薫「Cycle-90°」
第14回現代日本彫刻展(1991):湯村光「天空へのメッセージ」
第15回現代日本彫刻展(1993):サトル・タカダ「DRAWING SCULPTURE 子午線-1993」
第16回現代日本彫刻展(1995):橋本真之「時の木もれ陽」
第17回現代日本彫刻展(1997):深井隆「月の庭」

こうして改めて並べてみると、17回の作品だけは展示されていないようです。
あくまで推測ですが、この第17回受賞の「月の庭」は、同時に“宇部市野外彫刻美術館賞”も受賞したことから、現在はホームグラウンドである前述した宇部市野外彫刻美術館に展示されているのです。
《月の庭:(C)宇部市デジタルアーカイブ》 《月の庭:(C)宇部市デジタルアーカイブ》
そしてもう一つ同じような“神戸須磨離宮公園現代彫刻展”という名称ですが、神戸市の資料によると1968(昭和43)年に「神戸須磨離宮公園現代彫刻展」が開催され、以降1998(平成10)年まで2年ごとに開催されたという記述があることから、宇部とは別に開催された彫刻展で、《風の中で》の第12回や《這うものたちの午後の眠り》の第13回という作品は、こちらの彫刻展で受賞したということでしょう。

最後に“ビエンナーレ”とは2年に1回開かれる美術展覧会のことで、原意はイタリア語で「2年に一度」「2年周期」です。
因みに日本人の大好きな三大話となると、ヴェネツィア(イタリア)、サンパウロ(ブラジル)、ドクメンタ(ドイツ)が世界三大ビエンナーレだそうです。
こうしてアカデミックな世界にどっぷり浸かったあとは、再び公園で少し頭を休めることにしましょう。

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