千葉県市川市、味覚と歴史散策 §2

大町梨街道

外環を下りてから三郷市、松戸市を抜けると市川市となります。
外環三郷南ICを下りて、そのまま国道298号線を真っ直ぐ進み、葛飾大橋を渡った袂を左折して国道6号線、そして国道464号線を進むのですが、この日は6号線が渋滞のため松戸ニ中前を右折し直接464号線に迂回したのです。
すると途中「二十世紀が丘」なる交差点を通ったのですが、妙な地名だなあと後になって調べてみると、実はこの“二十世紀”はあの「二十世紀梨」に由来していることがわかりました。
二十世紀が丘
そこで鳥取県の名産である「二十世紀梨」が何故千葉県松戸市の地名となったのか調べてみました。
二十世紀梨は現在でも和なし生産量の13%を占める第3位の品種で、鳥取県産なしの8割を占めているそうです。 そもそもこの品種は、1888年に千葉県大橋村(現在の松戸市)で、当時13歳の少年・松戸覚之助が親類宅のゴミ捨て場に生えていたものを発見し、父が経営する梨園「錦果園」に移植し、10年目の1898年に結実したものだそうです。
松戸覚之助 《松戸覚之助》
この梨は、豊円で形が良く、今までに無い甘くて多什な梨だったそうです。
当初、覚之助はこの梨を「新太白」と名付けたのですが、当時後の関東学院初代院長であった渡瀬寅次郎により、“来る新世紀(20世紀)における代表的な品種になるであろう”という観測と願望を込めて「二十世紀」とい命名されたのだそうです。
そして1904年に鳥取県桂見で果樹園を経営していた北脇永治と言う人が二十世紀梨の苗木を10本購入したことに始まり、その後、急斜面でも栽培できると言うことから急速に鳥取県での二十世紀梨の栽培面積が増え、後には鳥取県の特産品となったのです。 ということで、あの有名な「二十世紀梨」も元はといえば千葉県から生れたものだったのです。
残念ながら千葉県の原木は1948年に枯れてしまいましたが、全国ではじめて植えられた直系の子である親木は鳥取県桂見の「とっとり出合いの森」に3本残されているそうです。
何れにせよ現在の千葉県は名実ともに全国に誇る梨の名産地といえるわけなのです。

こうして国道464号線を走り、10分ほどで梨の直売所(梨園)の林立する「大町梨街道」に到着しました。
大町梨街道
市川市には150ヶ所近い梨直売所(梨園)があるようですが、そのうちの57の直売所があるのが、この「大町梨街道」なのです。 それはこちらの地図を見れば、国道464号線が何故に「大町梨街道」と呼ばれるかが理解できるのです。
大町梨街道 《(C)JAいちかわ》
この梨街道と言う名称は2003年4月に公募によって決定されたものだそうです。

(吉)伊藤園

早速梨園に寄ってみますが、最初に訪れたのが(吉)伊藤園という直売所です。
(吉)伊藤園
(吉)とは(株)のように新しい会社組織の略ではなく、近くに同じ伊藤園があるので、生産者の伊藤吉一の“吉”をとってこう呼んでいるのです。ま、本来は○の中に吉なのですが。
何故最初にここを訪れたかといえば、梨狩りで検索したらいの一番にこの(吉)伊藤園がヒットし、更に開園100年以上も歴史のある梨園と聞けば行かないわけには行かなかったからです。
こちらが(吉)伊藤園の直売所です。
(吉)伊藤園 (吉)伊藤園 直売所
壁にはサインなどがあるので、かなりメディアで取り上げられたのでしょう。
試食をさせていただきましたが、甘くて程よい酸味とシャリシャリの食感が実に美味しいです。梨はこうでないといけませんね。 こちらが梨園です。
梨もぎ取り園
先ほど大町梨街道には57の直売所があると言いましたが、そのうち梨狩りができるのは5ヶ所くらいで、こちらはそのうちの1ヶ所なのです。
たわたに実った梨が実に壮観で、約12000㎡の広さがあるのだそうです。

この(吉)伊藤園の特徴は、100有余年の歴史を持つ梨専業農家で、広い果樹園を持つ梨狩りのできる5種類の梨があることです。
そして更に特徴の一つとしては、平成18年に「エコファーマー」に認定されたことにあるようです。
エコファーマー
農林水産省ではこの様に定義しています。

エコファーマーとは、平成11年7月に制定された「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(持続農業法)」第4条に基づき、「持続性の高い農業生産方式の導入に関する計画」を都道府県知事に提出して、当該導入計画が適当である旨の認定を受けた農業者(認定農業者)の愛称名で、平成12年8月の「全国環境保全型農業推進会議(会長:熊沢喜久雄東京大学名誉教授)」に寄せられた応募の中から選ばれたものです。
エコファーマーになると、認定を受けた導入計画に基づき、農業改良資金(環境保全型農業導入資金)の特例措置が受けられます。

簡単に言えば、1.有機質肥料などの使用技術、2.化学肥料の低減技術、3.化学合成農薬低減技術、の3つの技術を“持続性の高い農業生産方式”としていて、これらの技術の導入に関する5ヵ年計画を策定・提出し認定を受けるのです。
そして認定されると、資金や交付金が受けられるメリットがあるのです。
それに伴ってこの伊藤園では、1.完熟たい肥の投入による「土づくり」、2.有機質肥料の使用による「減化学肥料栽培」、3.性フェロモン剤の使用による「殺虫剤の使用回数削減」を実践しているのだそうです。要するに地球にも人にも優しい農業ということになのです。
現在、平成23年度では全国でこのエコファーマーは216,287件認定されていて、その内、千葉県では3,476件が認定されているとのことです。
と言うことで本来なら“梨狩り”をしたいところですが、あまり1ヶ所で多く購入するのも芸がないので、ここは直売の梨を購入します。
品種は豊水で7ヶで¥1,800の梨です。
7ヶ¥1,800の梨
エコファーマーの梨、食べるのを楽しみにして移動します。

勘兵衛園

(吉)伊藤園を後にして梨街道を東上して大町駅周辺の梨街道終始点あたりの「勘兵衛園」に立ち寄ります。
こちらに立ち寄ったのも事前に知った歴史で、創業が1851(嘉永4)年で何と160年の歴史をほこる梨園なのです。嘉永4年はあのペリー来航の2年まえですから、時代的にも幕末の頃ということになるのです。
昨年“ちい散歩”のなかのコーナーでラッシャー板前が訪れたのだそうですが、それによれば現在の勘兵衛園の主人は4代目で、奥様はアメリカ人だそうです。
先の(吉)伊藤園同様、100年以上の歴史を持っている園もまだ他にもあるのでしょう。特に「角右ェ門」「勘左ェ門」「石井重兵衛門」といったような園名は初代の名前をつけているところが多く、調べたわけではありませんが、それなりの歴史があるのかも知れません。
これも市川市の梨栽培が200年以上の歴史をバックボーンとしていることからだと考えられますが、それにしてもこれだけの歴史を持ちながら未だに発展し続けているのですからすごいことです。

早速「勘兵衛園」を覗きます。
勘兵衛園 勘兵衛園
やはり予約の出荷などが多いのでしょう、出荷準備に追われている一時の空き時間といったところかもしれません。
先月の8月27日に行われた“「市川の梨」味自慢コンテスト&試食即売会”では、JAいちかわ管内の44の生産者が出品した幸水を審査し、見事にこの「勘兵衛園」が市川市長賞を受賞したのだそうです。勿論、僅差での受賞と言うことでしょうが、一つの味の保証といえないこともないと思われます。
園の一画に気になる梨と看板があります。
詰め放題¥400 詰め放題¥400
「フムフム、つめ放題で400円」と、これをやらない手は無いだろうと早速400円を支払ってチャレンジです。
品種は豊水ですが、比較的赤いものは熟成仕切っているので、すぐ食べればおいしいのですが、時間を置くとフカフカの梨になってしまうので、できるだけ青いものをチョイスするのが良いとのことでした。ただし、熟れきっている、或いは形が悪いと言うことから安売りしているのですから仕方ないこととは思います。
それでも無理矢理押し込んだ詰めた梨が12個となりました。
詰め放題¥400 12ヶ
12個で400円ですから、1個@¥33.333・・・となる計算です。これが美味しければ「安くて美味しい梨のゲット」という目標を達成することになるのですが果たしてどうでしょうかね。帰宅してからの楽しみがもう一つ増えました。

最後にこの「勘兵衛園」の特徴は収穫する品種が多いことのようで、「幸水」「豊水」は勿論のこと、「あかつき」「新高」「新興」「玉秋」、更に新品種である「愛甘水」といった様々な品種が楽しめるようです。
収穫時期がそれぞれ違うので一遍に食することはできませんが、産直で食べ比べるのも面白いかもしれませんね、梨好きなら。
期待と不安、半々といったところで「勘兵衛園」を後にしました。

角右ェ門梨園

勘兵衛園を後にして、再び“大町梨街道”を戻り、最後の目的地である「角右エ門梨園」に向かいます。
梨街道の交差点には「大町梨街道」という標識まで立っていて完全に市民権を得ているようです。
大町梨街道
梨街道の道すがら幾つかの直売所(梨園)を撮ってみました。
大町梨街道 大町梨街道 大町梨街道
これなどはホンの一握りです。先の地図を思い起こしていただければ、その規模の大きさを実感できるでしょう。
そもそもはこれらの梨園が共同出荷をしていたのだそうですが、手の空いたときに直売所をはじめた事から、我も我もと直売所の街道となったのだそうです。 それにしてもさすが全国第1位の出荷量を誇る梨王国千葉だけあって、ある意味では壮観な眺めともいえるかもしれませんね。
全国の中の梨王国なれど、それでは県内の市町村ではどうかといえば、実は白井市が栽培農家数・栽培面積・生産量ともに現在第1位なのだそうです。
こういうとやはり白井市を訪れるべきとの考えも過るのですが、そこはやはり“大人の事情”といった隠すべきことではないのですが、歴史的に考えると市川市にせざるを得ないところは追ってわかることになるのです。

到着した「角右エ門梨園」の建物の中は梨出荷用の段ボールで一杯になっています。
角右ェ門梨園 角右ェ門梨園
ある意味1年の総決算みたいな時期ですから色々と大変なことでしょう。
その建物の前に幟があるのですが、これには妙なキャラクターが描かれています。
大町梨業組合オフィシャルキャラクター「大町りこ」 大町梨業組合オフィシャルキャラクター「大町りこ」
このキャラは大町梨街道・大町梨業組合のオフィシャルキャラクター「大町りこ」というキャラクターだそうです。
ネーミングは一般公募で命名されたそうで、プロフィールは以下の通りです。

千葉県市川大町の座敷わらしのような女の子
2003年に一帯が大町梨街道と名づけられましたので、その時より辺り一帯を見守り、育んでいます。
トレードマークは梨色の髪の毛とツインテールで、季節や気分により服装が変化し、町の人々を楽しませてくれています。
好きな食べ物はもちろん梨ですが、近隣の農家さん達から色々なものをもらっては喜んで食べています。
いつも農家さん達と一緒にいる為、土壌や農業に関する知識はかなり高く、その知識で大町の土壌を守っています。また、時々勝手に農家さんの家に上がりこみ、一緒にテレビを見ては、はしゃいでいます。
(大町梨街道オフィシャルサイトより)

プロフィールを読むと一般的なゆるキャラと違い、怪しげな雰囲気が漂ってきます。それでもまあカワユイので良しとしておきましょう。
さて一方の「角右エ門梨園」ですが、ここはの梨園は土壌に特徴があるそうなのです。

当園の特徴としては、徹底的な土壌調査と経験により千葉の土壌性質に合う栽培法を採用していることです。
厳選された栄養豊かな有機質を原料として、梨を美味しくする働きを持っている微生物の力を最大限活用します。その為に園主自ら作り上げた肥料を梨樹に与えることから始めます。厳選された天然の有機物を肥料とし、栄養豊かな有機物質と日本が生んだ昆布、椎茸、鰹節の三大旨みの研究から、甘くみずみずしい美味しい梨作りに成功いたしました。生物にとって一番大切な物質「核酸」、「アミノ酸」、この「核酸アミノ酸利用技術」ともいえる新しい栽培法が応用されています。
その実った梨からは、重量感と張りの有る堅さの中に柔らかな触感が味わえ、色、香り、旨味、甘さが優れております。また、 お客様からは「食べ終わったあとに口の中にさわやかな甘みが残る梨だと」ご好評いただいております。
(角右エ門梨園オフィシャルサイトより)

そしてここで収穫される梨は“バイオ梨”と呼ばれ、自ら「BIO-AMON」と命名しているそうで、BIOはBIOLOGY(生物)、AMONはKAKUAMON(宇佐美角右ェ門)をもじったものだそうです。
角右エ門梨園 角右エ門梨園
勿論、バイオといっても遺伝子組み換えといったものではなく、微生物を応用したバイオテクノロジーということで、所謂、日本のスローフードの応用技術なのです。要するに昔ながらの製法で安全に美味しい梨が収穫できるということでしょう。
まあ、これ以上の難しいことはおいといて、この大町梨街道での最後の梨・バイオ梨を購入して、今回の梨購入大遠征は終了です。
バイオ梨

結局、今回の購入内容は、
1.(吉)伊藤園:豊水直売品7ヶ=¥1,800
2.勘兵衛園:豊水つめ放題12ヶ=¥400
3.角右ェ門梨園:豊水バイオ6ヶ=¥1,000
ということで、締めて25ヶ=¥3,200の購入でした。
基本的に(吉)伊藤園では試食をしているので間違いないでしょうが、そのほかが吉と出るか凶とでるかは帰ってからのお楽しみということになりますね。

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コメント

  1. 地元民のくせに今年はあまり食べなかったです。

    こんにちはー!
    大町梨街道に行かれたのですね!自分はお隣の船橋市民なのですが、実はこの通りはしょっちゅう通っていたりします。
    ホント千葉でもこの辺りはどの自治体でも梨園だらけなんですよ。 …で。どこの町も「うちの梨が一番だ!」って競っているというw
    まぁ「市川と松戸と船橋あたりじゃ味の違いなんぞ無さそう」ってのが地元民の本音ですが^^;
    …でも実感としては、やっぱりここ市川・大町が一番気合入ってますね。

    しかし、このブログで『大町りこ』が扱われるとは…。自分もやはりサブカルな人間のせいか、この謎キャラだけは前々から微妙に気になってました。

    ではでは、引き続き3話以降も楽しく読ませて頂きます☆

    ( 03:45 )

  2. ばっきぃさん、ありがとうございます。

    ばっきさんは船橋ですか。
    流山の知り合いも梨園が多いといってましたので、やはり千葉は梨王国なんでしょうね。
    それにしても座敷わらしをモチーフにしたキャラクターって、聞いたことないですよね(汗)
    恐るべし「大町りこ」ですw

    ( 06:20 )

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