山田風太郎とシャーロック

今回はじめて知ったのですが、世の中にはシャーロック・ホームズのパスティーシュ(贋作)やパロディが大変多いようですね。
私自身も一通りホームズモノは読みましたが、決してシャーロッキアンではなく、ま、単なるミステリー好き・・・、或いは暇人、といったところですので、そのような世界はトンと知らずにいたのです。
そこでどのようなパスティーシュがあるのかを調べてみたところ、あるわ、あるわ!
その中でも最も正統派といわれているのが短編集『シャーロック・ホームズの功績』というものだそうです。
これを書いたのはアドリアン・コナン・ドイル&ジョン・ディクスン・カーで、アドリアンはドイルの息子で、カーはある意味でのドイルの弟子なのだそうですから、正統といわざるを得ない作品なのでしょう。
更にA・ダーレスの『ソーラー・ポンズの事件簿』というのも秀逸作品だそうで、本家のベーカー街遊撃隊になぞらえてプレイド街遊撃隊というファンクラブまであるのだそうですので、単なる贋作では済まされない名作のようです。

そして今回初めてホームズのパスティーシュと出会ったのが、山田風太郎ミステリー傑作選(1)「眼中の悪魔 -本格篇-」での『黄色い下宿人』なのです。
眼中の悪魔
初出は探偵小説『宝石』昭和28年12月号「贋作集」だったので、結構古い作品なのです。
宝石
それゆえ日本での一番古いホームズのパスティーシュだと言われています。

話はホームズがワトソンを伴って知人のクレイグ教授の家を訪ねるところから始まります。
クレイグ教授の金持ちの隣人の老人が失踪したという依頼なのですが、訪ねた先には1人の挙動不審な黄色い日本人がいたのです。
その後、いつものようなホームズの謎解きがあり一件落着かと思われた事件を、謎の黄色い日本人が覆してしまうという奇想天外なホームズモノなのです。
当初の見慣れない黄色い人種がいるところに違和感というか、かえって親近感を起こさせるような作品ですが、それ以外は最後のどんでん返しまで、まるでコナン・ドイルの作品かと思ってしまうほど見事なパスティーシュでした。
そしてこの黄色い下宿人は、明治期の大変著名な作家というオチがついているのです。
まあ、ネットで調べればこの黄色い日本人が誰であるかは直ぐわかってしまうのですが、一応ここではヒントだけ記述しておきます。
黄色い下宿人
それは当時の挿絵と本文中にあるホームズとクレイグ教授の会話の中にあります。

「いや、よくきて下さった。これは日本人の留学生で、ジューブジューブ氏――」
「え?」
「ジューブジューブ――棗さ、まだ未熟で黄色いが」

ということで“在り得ない”ことをさも“在り得る”ような錯覚を起こさせる風太郎ワールドは、以前読んだ「ラスプーチンが来た」と同様で、改めて風太郎ワールドの面白さを痛感したのです。
ラスプーチンが来た
山田風太郎ミステリー傑作選は短編を集めたものですが、現在『眼中の悪魔 -本格篇-』『十三角関係 -名探偵篇-』『夜よりほかに聴くものもなし -サスペンス篇-』の3巻を読み終わりましたが、どれもこれも実に面白い内容でした。
十三角関係 夜よりほかに聴くものなし
風太郎の「忍法帖」モノはあまり好まないのですが、先ほどの「ラスプーチン・・・」を初めとした“明治小説全集”やこのミステリーにはすっかり嵌ってしまっている昨今なのです。
明治小説全集

折角なのでもう一つホームズのパスティーシュの話題を。。。
これはパスティーシュというのかどうかわかりませんが、先日CS放送で放映していた「SHERLOCK シャーロック」と言う番組です。
シャーロック
以前NHKでもオンエアされていたそうなので見た方は多い事でしょうが、英国BBC制作の番組で現代に甦ったシャーロック・ホームズをテーマにしたTVドラマです。
舞台を21世紀のイギリスに置き換え、自称「コンサルタント探偵」であるシャーロック・ホームズが、スマートフォンやインターネットといった最新機器を駆使して事件を解決する様を描いており、各エピソードはドイルの原作を下敷きとしているものです。

シリーズ1(全3回)
1話「ピンク色の研究」(ドイル作品「緋色の研究」)
2話「死を呼ぶ暗号」(ドイル作品「恐怖の谷・踊る人形」)
3話「大いなるゲーム」(ドイル作品「ブルースパーティントン設計書」)
といったタイトルです。

21世紀、陸軍の軍医としてアフガン戦争に従軍し、戦傷によりイギリス本国に送還されたのがジョン・ワトソンで、第1話ではこのワトソンのもっていたスマホから推理して、ホームズがワトソンの境遇を見事に推理してしまうといったところも原作を基調としていて、単なる奇想天外に終らない緻密な面白さがあります。また、かつてホームズの時代は概ね交通機関は馬車でしたが、現代のホームズも自家用車を使わずに、常にオースティンのロンドンタクシーで移動しているのも微笑ましいところです。
シリーズ2も昨年NHKでオンエアされたそうですから、またCSでも見られるのでしょう。
これは一見の価値ありでしょう。

シャーロッキアンにとっては聖典ともいえるコナン・ドイルの原作、そして映画やドラマ、漫画化、そして数々のパスティーシュなど、やはり何年経ってもホームズは永遠に生き続け、人気を誇っているのでしょうね。

2013.03.01記
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コメント

  1. 四季歩 | ipmCGEIo

    びっくりしました

    シャーロック・ホームズのパスティーシュ(贋作)の話、
    全然知らなかったので吃驚して面白かったです。
    しかも山田風太郎といえば忍者もの、と短略してた
    私は、恥ずかしいかぎりでした。
    とても面白いことを教えていただきました(笑)

    「黄色い下宿人」ももちろんですが、『十三角関係 -名探偵篇-』、
    『夜よりほかに聴くものもなし -サスペンス篇-』も
    読みたいですね。
    後の2冊は装丁がとても気に入りました(笑)

    ( 19:42 [Edit] )

  2. 薄荷脳70 | -

    四季歩さん、ありがとうございます。

    私も山田風太郎は忍者ものと思って避けていましたが、ホント面白いです。
    ミステリーも面白いですが、金瓶梅のモチーフなどのものもあるので、別の意味でも面白そうですよw

    ( 05:08 )

  3. 贋作

    シャーロック・ホームズを読んだのはいつの頃だったか・・・。
    誰でも知っているホームズものに贋作というものがあることを初めて知りました。
    推理モノや時代モノなど本は通勤の友として読みますが、
    それゆえ深くは読み込まず流しているような状態で、
    ましてや人の名前がカタカナ表記は覚えが悪く、いつのころからか読まなくなりました。

    ( 23:43 )

  4. 薄荷脳70 | -

    山ぼうしさん、ありがとうございます。

    同じです、同じ!
    横文字の名前は確かに年とともに覚えられなくなりました。私も海外ものを読まなくなりましたね(汗)
    専ら和ものだけですね、読んでいるのは^^

    ( 06:33 )

  5. こんばんは!

    只今ビジネスホテルで、まさにこれから、2009年にやった映画“シャーロック・ホームズ”(主演:ロバート・ダウニー・Jr)を観ようかというところでこちらを覗いたので、ちょっとびっくりしました(笑)

    次は山田風太郎を読みたいと思いました。

    ( 21:09 )

  6. 薄荷脳70 | -

    たびぱぱさん、ありがとうございます。

    お仕事ご苦労様です^^
    奇遇とはまさにこのことでしょうかねえ。
    機会があれば風太郎お読みください。
    流石に著名だけのことはあるなって感じです^^

    ( 11:51 )

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